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世界の隣人 -Another World-  作者: タンス
第4章 兆候
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 腹部の鈍痛も引き、しっかりと地面を踏みしめて鬼面樹を見据える。


「いや、魔力を含んだ泉ってことで可能性としては考えてたんだよね……」

 

 小さな呟きはサラさんにだけ拾われたようで、くすりと笑みを零したのが伺えた。


「お、自力で回復できたようだね。感心感心。お姉さんの献身が欲しくて待ってたら尚良かったけど」

「そこまで過保護にしてもらわくても十分なんで。前情報を集めてなかったのは痛かったなぁ」

「3人なら苦戦はしないって言ってたからねぇ。私たちも油断してたってことさ」


 確かに出発前に職人が言っていたなと思い出す。3人だと余裕、1人でもできるヤツはできるとかなんとか。そういえばシンさんはさっきの魔法を食らっても大して動きは変わらなかった。恐らく、戦士職3人だと問題は無いということだったのだろう。食らった感じ、毒とか痺れるとかじゃなく、ただの物理系統だったし。金属防具なら脅威は無いな。俺は布だけど。


「さ、とりあえず2人はまた攻撃をお願いします。できるだけ泉から離れるように」

『了解!』


 すぐに鬼面樹の懐に飛び込み、サラさんはしなる枝を回避しながら切りつけていく。そこまで攻撃力は高い武器ではないが、鬼面樹からすればうっとしいことこの上ないだろう。敵愾心は完全にサラさんに絞られている。

 気づかれることなく後ろに回ったシンさんだったが、攻撃する様子は無い。大剣を上段に構え、静かに目を閉じているだけだ。

 そのまま10秒近く経ったか、実は居眠りでもしてたんじゃないかと思ったその時、カッと目を見開きシンさんは地面へと大剣を振り下ろした。轟音と共にこちらまで大地の揺れが伝わってくる。剣が光り、剣先からは可視化された衝撃波のような物が鬼面樹に襲い掛かる。直前、飛び退いたサラさんと目の前から獲物が消えて動きが一瞬止まっていた鬼面樹。その無防備な背中に直撃し、地面に倒れこむ。追撃とばかりに、大きく飛び上がったシンさんは剣先を眼下の鬼面樹へと向け、重力に任せて落ちてきた。刀身の中ほどまで突き刺さり、激痛に耐えるかのように鬼面樹から苦悶の唸り声が上がる。


 まだ息があるのか。だが、今回は泉に逃げて体力の回復は出来ないだろう。突き刺さった大剣がそのまま大地と鬼面樹を縫い合わせているからだ。必死に逃れようと枝を動かし、剣を抜こうとするがシンさんがそれを許す訳は無く。弱り、怯ませることさえ出来なくなった鬼面樹が何だか気の毒に思えてしまう。形勢逆転、絶体絶命の大ピンチというやつだ。視点はもちろん鬼面樹だけどね。


「5秒後にそっち行きます! ちゃんと捕まえててくださいよ!」


 俺の言葉に親指を突きたてた拳を見せてくる。お陰でゆっくりと詠唱が出来る。高速詠唱ってなんか苦手なんだよね。早口言葉を必死に言ってるみたいで。もちろんそんなこと贅沢なことは声に出せないけど。


 杖を持つ手に力を込めてしっかりと集中していく。ふふ、今度の俺は一味違うからな。灰にしてくれるわ!



「爆ぜよ 虚に包まれた罪深きものよ 断罪の光を浴びるがいい エクスプロージョン!」


 炎魔法Lv7で覚えた新スキル。調べてみると範囲攻撃魔法らしい。爆発、爆炎、まぁどうでもいいか。範囲攻撃のくせに威力も高いという、魔道師になって良かったと思わせてくれるスキルだ。爆発範囲は中心から3メートルくらい。なのでサラさんは既に俺の近くまで退避済み、シンさんも詠唱が始まったくらいで大剣を引き抜いて距離を取っていた。

 動きを制限していた物が無くなり、鬼面樹はようやく立ち上がることが出来たのだが、既にもう詠唱は終わり発動まで1秒あるか無いか。泉に向かおうとしたその瞬間、白い光に包まれて爆発、熱風とついでに軽い衝撃が伝わり、辺りが巻き起こった土煙で曇る。

 ……ちなみに俺の耳からはキィーンと不愉快な音がしている。設定でいじれないか調べてみよう。毎回これはさすがにしんどい。

 2人を見ると平然としているので確実にあるはずだ、うん。


 爆発によって巻き上げられた土煙が晴れてゆき、エクスプロージョンを食らった鬼面樹の惨状が確認できた。 

 真ん中からばっくりと折れた幹、炭になってしまった枝、歩くことはおろか、支えるのが精一杯といったようなひび割れた根っこ。


 これは確実に倒したな。もう押しただけで倒れるんじゃないか。とりあえずは近づいてみることにした。


「これはひどい。魔道師ってえげつねぇな」

「炎魔法はそんなものさ。他の魔法だったら違った結果が見れたかもよ」


 剣を伸ばしてつんつんと突っついているサラさんと腕を組んで仁王立ちしているシンさん。彼らは完全に戦闘終了しているみたいだ。俺の体からも緊張感が抜けていくのがわかり、さっさとドロップを確かめてみることにした。


「んじゃ、アイテムにしちゃいますんで。枝落としてくれればもう町に帰れますよね」

 

 だねー、早く帰って寝たい、などと適当な返事しか来なかったがまぁいい。ささっと手を伸ばして鬼面樹に触れると光の粒になって体が消えていく。後に残ったのはマナポーションと1メートルくらいある、何だか硬そうな枝が3本。たぶんこれが目的の『鬼面樹の枝』だろう。一応、手に持って情報ウィンドウを出してみると確かに鬼面樹の枝と書かれていた。


「目的たっせーい。さー帰りましょっか」

「今回はなかなか楽しかったね。これで杖が出来たらまた3人でどこか狩りに行こう」

「そういやスキルも少し成長した感じがするわ。良い勝負ができたな」


 3人でわいわい言いながら町に戻る。帰路はモンスターに会うことも無く、無事に戻ることができた。

 職人に渡すと3日後には完成させておくと言われた為、各々別れて期日を待つことにした。





プレイヤー名:ケイスケ

職業:魔道師

称号:扇動者


装備一覧

武器:使い古された杖

頭:

体:布の服

腕:一角獣のミトン

足:クロコ革のブーツ

他:染色された職人のローブ


スキル:炎魔法Lv7 水魔法Lv2 雷魔法Lv3 魔力上昇 高速詠唱 連続魔法 炎属性強化Lv3 空き

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