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世界の隣人 -Another World-  作者: タンス
第3章 守護者ソラリス
24/46

6

 しゃらん、と金属がこすれる音がする。

 陽光を反射して輝く白銀の鎧に身を固めた少女は、ゆっくりと歩を進めその目はランドタートルを見据えていた。


「ゲオルグ。下にいる者たちに退いてもらってください。まずはあれ以外の脅威を排除します」


 側にいた騎士がすぐに動き出す。散歩でもするかのように彼は城壁から飛び降りた。慌てて覗き込むと、他の騎士たちに合流し、そのまま冒険者も連れて城門まで後退させていた。


「ではマーリン。陣の用意を。恐らく数分でランドタートルの攻撃範囲に入るでしょうから迅速にお願いします」


 ローブに身を包んだ魔道師は返事をすることなく、ただ不気味に杖を動かしている。先端からは魔力の光が怪しく揺らめき、地面に触れている箇所は転移してきた時と同じような赤い文字が描かれていた。


「我が領地に攻め入ったこと、後悔するがいい。無力なる者共よ、守護者たるソラリスの名を冥府への土産に持っていけ」


 その呟きは俺の他、数名が聞いていただろう。いくつかの視線が少女に集中する。右腕を前へと伸ばした少女の体がほのかに輝き始めたかと思うと、足元から吹き上げる魔力の奔流が生まれた。その圧倒的な魔力に俺も含めた魔道師たちがじりじりと後ずさる。


「人の嘆き 永久の闇への誘いとなれ 契約者よ 我が祈りに応えよ 次元回廊!」


 詠唱が終わった瞬間、モンスターたちへ光が降り注いだ。全てを飲み込むような黒の光が大地と空を繋ぐ。見ていると自分もその中に飲み込まれてしまうような感じがする。数ヶ月前、テレビでやっていた国産無人探査船のドキュメンタリー。その最後に探査船から送られたブラックホールの映像が思い出された。

 城壁の前はしばらく黒一色となり、ふと少女の魔力を感じなくなると、次第に光は収束し元の景色に戻っていく。完全に光が消えるとそこにはモンスターたちの姿は無かった。

 俺が使う魔法とは威力の桁が違う。いや、魔法そのものから違うような気がする。足元からは騎士団のものらしき歓声が上がっているが、俺はこの少女にどこか恐怖を感じていた。


「……クラーラ様。完成しました。いつでも発動できます」


 後ろから聞こえた老人のしゃがれ声で我に返る。さきほどマーリンと呼ばれた魔道師の声のようだ。彼の前には赤い魔方陣が完成しており、そこから魔力が立ち上って陣そのものが明滅している。少し気持ちが悪い。


「ありがとう。こちらとあちらの射程はほぼ同じといったところです。攻撃される可能性を頭に入れておいてください」

「わかっております。住民の避難は完了済み、下に騎士団がいますがまぁ問題は無いでしょう」

「ええ。できるだけ被害は出したくないですが――」


 その時、ランドタートルが咆哮した。亀にも声帯があったのか、なんて場違いな感想が出てくる。

 地鳴りのようなそれが止まると、ぽっかり開いた口元が赤く光りだす。嫌な予感がバシバシしている。そして予感は的中。


 轟音と共に赤い閃光が放たれ、城壁へと一気に襲い掛かる。運良く俺がいる場所には当たらなかったが、進路上にいたプレイヤーたちは逃げる時間など与えられず、木の葉のように空中に舞っていた。城壁の一部が崩壊し、立っていられずに片膝をついてしまった。崩壊による土煙で下がどうなっているのかはよく見えないが、無事なプレイヤーは少ないだろう。あの2人は大丈夫だと信じたい……。


「くっ。さすがは『終末を告げる者』と言うだけありますね。そこらのモンスターとは桁違いです……」


 少女も驚いたようでその顔を歪めていた。側の騎士たちも動揺している。それを見た少女はさっと表情を凛としたものへと戻し、魔方陣の中央へと立つ。


「これ以上の攻撃は都市への影響が大きすぎます。こちらも反撃といきましょう。カール、用意をしてください」


 騎士が少女の横に立ち、剣を抜いて胸の前で構える。儀式かなにかをするのだろうか。距離があるので剣による攻撃はできないはずだし。ふっと少女が笑みを零し、左腕をゆったりとランドタートルへ向けて伸ばす。


「我 クラーラ・フォン・ブラウン=ソラリスなり 守護者よ 古の契約に従い姿を現せ 裁きの光を! 炎塵大帝!」


 魔方陣が一際明るく発光し、それに合わせるように騎士が剣を振りかぶる。そして振り下ろされる先は少女の腕。

 簡単に剣は少女から腕を切り離し、人形の腕のように腕がころりと陣へと落ちる。腕はゆっくりと溶けていき、魔方陣と同化していく。少女の顔には汗の玉が輝き、歯を食いしばって必死で痛みに耐えているよう。


 

 ばきばきと何かを割る音がする。音のした方向を見ると、空中にヒビが入り、そこから不気味な爪が現れるところだった。爬虫類の前足に似ているが、その大きさは手だけで1メートル以上はありそうな巨大なものだった。城壁にいたプレイヤーたちもその光景に釘付けになっている。ヒビはますます大きくなり、やがてもう1つ手が現れると思いきり空間を引き裂いた。そして――


「グォォォォォッ」


 びりびりと体が揺さぶられるような咆哮だった。引き裂いたそこから現れたのは、真紅のドラゴン。額から白い角が雄々しく前方に伸びており、赤茶けた音叉のような2本の角が後方に向かって伸びている。巨体が空間を砕きながら空中に現れる。翼は折り畳まれていたが、どうやって浮いているのだろう。二股に分かれた尾の先からは魔力と思われる光が絶え間なく輝き、尾が揺れる度に残像を作っていた。


『愚かな。またこの世界に呼び出された者たちがいるのか……。』 


 低い声が頭に響いた。感情が俺たちに向かっているような気がするが何故だろうか。ドラゴンはゆっくりとプレイヤーたちを見た後、ランドタートルへ向けてその顎を開く。恐ろしいほどの濃密な魔力が集まり、科学の授業で見たアルミニウムの燃焼のような眩しい光がランドタートルに向けて放たれていった。


『始まりを告げる咆哮。かの神とは似ても似つかぬ我が身の愚かさ。縛られし者よ』


 大穴が開き、向こう側の景色が見えるようになったランドタートルを残してドラゴンは光の粒子へと変わっていった。それから数秒後。

 地響きを立てながら横倒しになるランドタートルを見て、騎士団、プレイヤーたちは歓声を上げた。



「クエスト『都市襲撃』を達成しました。これより一部のクエストが開放されます」

探査船・・・DSEP-08「いざなぎ」

      JAXAが開発した太陽圏外への調査を目的とした無人探査船

      20年ほど前に宇宙ステーション「いざなみ」から出発

      電気推進・太陽帆システムのハイブリッド船

      光速に近いくらいの速度で飛んでます  

とゆー設定。 


他の推進方法もあったけど没

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