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世界の隣人 -Another World-  作者: タンス
第3章 守護者ソラリス
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 一夜明け、俺は冒険者ギルドに足を運ぶことにした。

 ギルドクエストの報酬はアイテムの他に、現金も手に入るからだ。金は持っているに越したことはない。


 扉をくぐり、クエスト掲示板に近づく。冒険者をランク付けることでクエストの難易度をうんぬん、ってことは無かった。どれでも受けることはできるようだ。もちろん達成できなければ違約金が発生するらしいが、自分の力量も測れない冒険者には当然だという。冒険者は厳しい世界に生きているようだ。


 まだ外のモンスターを見たことがないし、討伐系のクエストは止めておいた方が無難だ。

 採集クエストに絞って探してみると、2件見つけることができた。1件は『ライフハーブ20本の納品』、もう1件が『鉄鉱石7個の納品』だった。鉄鉱石、鉄。つまりは金属素材。とうとう金属素材を拾うことができるのだ。きっとシンさんは喜んで集めてるんじゃないだろうか。


 鉄鉱石のクエストには備考欄があり、納品数以上を持ってきた場合、ギルドが買い取るとあった。現代の製鉄所のような技術も設備も無いだろうから、精錬には無駄が多いのだろう。できるだけ量を確保したいのも頷ける。


 鉄鉱石クエストを受けることにし、受付カウンターに持っていく。納品期限は3日後までとなっていた。ただの採取クエストで5日というなら距離はそれなりにあるかもしれない。


 受け取った職員は紙切れをちらりと確認すると、カウンターの奥から一抱えもある袋を持ってきた。 


「鉄鉱石の納品ですね。期限は3日後の日没までとなっております。それ以降に持ってきた場合、買い取りは致しますが違約金が発生しますのでご注意ください。それと、こちらが採掘に必要なアイテムです。お受け取りください」


 職員から渡された中身はツルハシと直径15センチ程度のレンズが付いている手持ちルーペだった。ルーペなんて渡されても専門家じゃないんだから鉄の判別なんてできないよ?

 そんな心の声が聞こえたのか、職員は説明を続ける。


「お渡ししたのは判別鏡というアイテムです。岩石にかざして一定以上の金属類が含まれていた場合、首元にあります魔法石の色が変わります。今回は鉄に反応するよう設定しておりますので安心して採掘お願いします」


 はぁ~。かざしただけで分かるとか超音波みたいなもんか。これ作った人がすげぇわ。何職人? 魔道具職人みたいな感じですか?

 

 妄想中の俺は後ろから軽く小突かれ、我に返る。ここは受付で、他の冒険者も並ぶということが頭から抜け落ちていたようだ。2メートルはありそうな巨体の冒険者から無言の圧力を受けた俺は軽く頭を下げ、近くにあった長椅子に座る。

 支給品はそのままインベントリに入れることができたので一安心だ。手持ちだったら途中で力尽きていたかもしれない。――そういえば鉄鉱石が採れる場所を聞いてなかった。

 

 仕方ない、もう一度並び直そう。



 ソラリス西部、ゴーン鉱山。


 ここで鉄鉱石を最低7個、できればその倍くらい手に入れるのが今回のミッションである。

 乗合馬車が出ていたのでそれに揺られること半日。アスファルトで固められているなんてことはないので『揺られる』というより『揺さぶられる』方が正しい気がする。

 

 鉱山には鉱員が足りないということはない。事情があって冒険者にならざるを得なかった人間で、しかも腕っ節が良くない者たちの救済策として、ギルドと領主が話し合い採集クエストができた。また、怪我をして戦闘のような激しい行動ができない冒険者でも都市と鉱山の往復なので受けることができる。素材は職人たちの腕を上げるためにも必要であり、戦闘を生業としているプロに頼んだ方が、万が一の損失も無いとのことで職人ギルドも賛成した。

 

 以上が車中で俺が聞かされた情報である。冒険者は命を切り売りして生活している感じだ。この話をした人物は領主に感謝するようにと最後に付け加えていた。


 さて、金属がぶつかる音が鳴り響いてはいるが、どこに行けばいいものか。鉱員たちが集まっている場所に着くと、大声で指示を出していた現場監督らしい人がいたので話を聞いてみる。すると冒険者はそこから30メートルほど離れた場所に行くように頼まれる。言われた採掘場は、現場監督たちがいた場所と比べるとあまり整えられていない。だがそれでも、鉱山から採れる鉱石は質が良い物が多く、ここでも十分だそうだ。さっそくインベントリからツルハシを取り出し、腰のベルトにルーペをひっかける。 

 ……安全ヘルメットもあれば立派な鉱員だな。


 

 作業開始より2時間くらい経っただろうか。

 へとへとになった俺は、休憩も兼ねてあたりに散らばった岩石を調べることにした。


「あ~、疲れた~。肉体労働はしんどいなぁ」


 愚痴をこぼしながら1つ1つ見ていく。判別鏡に鉄鉱石と認められるのは岩石4,5個に1個の割合くらい。

 ……2時間ツルハシと格闘して手に入ったのは鉄鉱石3個。堅い地層のためになかなか刺さらなかったのが原因だろう。ノルマの7個はなんとかなりそうだが目標の14個は厳しいかもしれない。価値の無い岩石をトロッコで石捨て場に運び、またツルハシを振る作業に戻ることにした。


 

 辺りが赤く染まっていき、ツルハシを持った影が倍以上に伸びた頃。

 こんな時間まで採掘作業を行って手に入ったのは6個だった。小さい破片は鉄が含まれていても鉄鉱石とは認められないようで、『鉄鉱石の欠片』というアイテムになっていた。鉄鉱石とは別物なので買い取ってもらえるかは怪しいが一応持ち帰ることにする。


「移動するぞ。もうノートの刻になる。鈴が使えんから危険だ」 


 現場監督はそう言って、作業員全てを建物へ移動させた。

 夜間作業はモンスターを呼び寄せる可能性があるため基本的には行われない。昼間も変わらないと思ったが、モンスター除けの魔法アイテムを使っていたそうだ。現場監督が見せてくれたのは金色の鈴。『ダグの祈り』と呼ばれるその鈴は昼間だと明るい輝きを放ち、夜はその効力を失う。モンスターが近くにいないのはそれが原因だった。

 

 ここに来る冒険者は戦えない者がほとんどで、鉱員も戦闘力に期待などできない。そのため夜間は『精霊石』が安置されている建物内で過ごす。これは精霊の加護により、一定の範囲内にモンスターが近づけないようにする効果があるそうだ。


「まぁゆっくり休め。朝一番で戻るといい」


 口数が多い人間ではないのか、現場監督はそれだけ言うと自室に帰っていった。簡単な夕食を取った後、数人の作業員とともに雑魚寝で今夜は休むことにする。


 

 朝。軽くストレッチを行い、昨日の現場に向かった。さっき見かけた現場監督に尋ねたところ、乗合馬車は明日の昼まで来ないそうなので、今日は1日中ツルハシと一緒に過ごすことになりそうだ。  

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