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世界の隣人 -Another World-  作者: タンス
第3章 守護者ソラリス
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 ポータルを使い、俺は新しい町に来ていた。


 ――城塞都市ソラリス。

 『大海嘯』と名付けられた数百年前に起きたモンスターの大発生。あらゆる生命を飲み込まんとしたそれを止めた冒険者たちが興した都市である。

 彼らはその命を懸けて人類を救った英雄として崇められ、彼らのクラン名から名称を取ったこの都市は、二重の城壁で固められ、才能あふれる冒険者が名声を求めて集う。最も繁栄している都市の1つである。



「っとまぁ壮大な設定ですこと」


 都市の中央に建てられている銅像、そして刻まれている碑文を読んだ感想である。

 

 実際、プレイヤー以外の冒険者と思しき人が闊歩し、商店も冒険者たちの消費を見込んだのか、かなりの量と質を誇っている。ざっと見ただけでもソフィアの町では見たことのない素材や武具が売られ、至る所で商談の声が聞こえてくるため、まるで都市そのものが熱気を帯びているように思える。

 中心地は小高い丘になっており、領主の住むシュネーブルク城が陽光を浴び、純白の輝きを放っていた。住人に話を聞いてみたが、不満は無いそうなので良い領主なのだろう。都市には水路が設置され、都市を走る道路も清掃が行き届いており、異臭にまみれていた現実の中世とは違って衛生面も良い。


「こんな所じゃ、下手な職人レベルだとすぐに廃業するんじゃないかな」


 価格はまちまちだが、一定の質の物がどこでも買えるのなら生産プレイヤーは死活問題だろう。都市の職人より上質な物を作るか、赤字ぎりぎり、もしくは赤字覚悟で生産レベルのためと割り切って作るしかない。仕入れを自分で出来るプレイヤーなら関係無いだろうが。


 ふらふらと歩いていると、胸部を覆う金属鎧、いわゆるブリガンダインというヤツを着た騎士に声をかけられた。 

 都市を守る彼らは厳しい試験をパスしたエリート集団である。ヴァイスリッターと呼ばれる彼らは都市と住民を守るため、日夜領主の下で鍛錬をしているらしい。子供が将来なりたい職業ナンバー1だそうだ。ちなみに2位は金属職人。


「貴方は見たところ、まだギルドで登録されていませんね。この都市では冒険者は全て冒険者ギルドでの登録が義務付けられております。申し訳ありませんが、登録するまでこちらを着けていただきます」


 左腕を取られ、有無を言わさずブレスレットをはめられた。ウィンドウが立ち上がり、ブレスレットの情報が表示される。


 ・鋼のブレスレット

 ・ギルドに登録していない冒険者を判別するために特別に作られたブレスレット

 ・アイテムの販売価格が30%上昇

 ・装備変更不可

 

 これはひどい。罪人扱いされた気分だ。住民も未登録だと冷たくなるのか。


「あちらにギルドがありますのでお早めに登録をお願いします。3日以内に登録されなかった場合、都市から排除させていただきますので」


 頭を下げ、騎士は立ち去って行った。

 しかし、ローブや服で隠せば問題無いんじゃないだろうか。そんなことを思っていると、怒鳴り声がどこからか聞こえてくる。野次馬根性でそちらを見に行ってみると、少々みずぼらしい格好をした大男が騎士団に取り押さえられている現場だった。


「くそっ! 離しやがれ!」


「警告はしたはずだ。3日以内に登録せよ、とな。大方、バレないとでも思ったのだろうが無駄なことだ。そのブレスレットが貴様の位置を教えてくれる。では出て行ってもらおう。ブレスレットを外さん限り二度とこの地に入ることはできんぞ」


 3人がかりで道路に押さえつけられた男は、まだ暴れていたが首元に剣を突きつけられると途端に大人しくなった。そしてそのまま連行されて行く。都市からたたき出されるのだろう。……よし。登録してこよう。ルールはきちんと守らないとな。


 踵を返し、冒険者ギルドに向かうことにした。途中から何故か早足になってしまった足が憎らしい。


 入り口に交差する剣を象った看板が掲げられている建物が見えてくる。2階建ての大きな建物が冒険者ギルドのようだ。剣を担いだ男たちが入って行く様子も見える。とりあえず登録するため入り口をくぐった。



 中に入ってみると、採光のためか大きな窓がいくつもあった。また、ソフィアで見かけた魔力灯の小型の物が設置されており、建物内部はかなり明るかった。現代日本のオフィスにもひけを取らない。そこでは職員が慌しく走りまわり、受付と思われる3つのカウンターには冒険者の列ができている。半分以上がプレイヤーのようだ。


「登録を希望される冒険者の方は列にお並びくださーい」


 整理係りの職員が大声を出している。言われたとおりに最後尾に着き、自分の番が来るまで大人しく待つことにした。



 10分程度待つと受付にたどり着くことができた。名前と職業を伝えると、薄い金属板に触れるよう言い渡される。指で触れてみると、触れた部分が薄く輝き名前と職業が浮かび上がった。


「はい。これで登録は済みました。ブレスレットはもう外せますよ。売るか捨てるかご自由にどうぞ。この金属板はギルドカードと言いまして、あなたの情報を記憶する特殊なアイテムです。無くすと大変なことになりますので大切に保管してくださいね」


 大変なことって何だろう。無表情で説明するこの職員もあってなにをされるのか想像もつかない。大事にインベントリにしまっておこう。

 登録を済ませ、ブレスレットを掴んでみると拍子抜けするほどあっさり外すことができた。ちょうどゴミ箱があったのでそこに投げ捨てておく。


 建物の壁には大きな掲示板が備え付けられ、メモ帳のような紙がいくつも貼り付けられている。1枚を剥がして内容を確認すると、モンスターの討伐依頼が書かれてあった。他の紙の内容も同じように討伐依頼や採集依頼などで、これがギルドクエストなのだろうと予想できる。


 掲示板にメモを戻し、都市を歩き回ることにした。一般の冒険者は城に行くことができないため、残念ながら城の見学は諦める。遠くから眺めるだけでも良しとしよう。

 

 5メートルはあるだろう城壁の上には数人の騎士が見張りをしていた。双眼鏡のようなものを手に持ち、時々それで町の外を覗き込んでいる。そういえば、この都市の人間はみなレベルが高そうだ。ここに進むための条件がスキルLv4というのも頷ける。まぁそれ以下のプレイヤーでもポータルが開放されたから来ることができるのだけれど。



 城がある内側の城壁内部を内円、その外側、外に連なる城壁がある地域を外円というらしい。内円も広かったが外円部分も合わせたら直径1キロくらいはありそうだ。

 外円には冒険者ギルド支部があり、クエスト報告用に使われるらしい。内円に比べて外円の物価は安く、多くの冒険者やプレイヤーがごったがえしていた。安全を買う意味で内円は少し高いのだろう。まぁ俺からすると外円でも十分安全に思えてしまう。


 外円と外とをつなぐ門番は全身鎧を装備し、手には2メートルほどか、斧と槍が一緒になったような武器を持っていた。武器屋に置いてあったハルバードという斧槍だ。質は門番の物の方が良さそうだが。内円の門番がショートソードだったのに比べれば明らかに戦闘を意識しているように感じられる。


 

 歩き回って疲れたので今日はもう戻って宿を取ることにした。シンさんはログアウトしているし、サラさんは尋ねるとまだソフィアに用事があるらしい。新しい素材があったら集めといて、とのこと。明日から外の様子も見ながら集めることにしようと思う。

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