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世界の隣人 -Another World-  作者: タンス
第2章 冒険者の町ソフィア
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「あー、昨日の鳥肉は美味しかったなぁ」


 宿から出た俺は昨日の夕食を思い出し、そんな言葉が口から零れていた。他にも大変なことがあったが過ぎたことは仕方ない。過去は過去と割り切らないと進めないからな。


 サラさんの情報によると、西門から10分程度歩いた所にある洞窟で魔法アイテムの調合素材が手に入るとのことだった。

 生命力回復アイテムはもちろん、疲労回復から魔力回復などなど、調合スキルは冒険に欠かせない重要なアイテムを作り出せるそうだ。素材持ち込みで少し値引きしてやると言われたので今日はそこで狩りをすることにした。


 西門をくぐり、まっすぐ草原を歩いて行く。途中、デッドツリーが数体うろうろしていたので灰にしておいた。


 そして歩くこと10分くらい、情報のとおり岩山にぽっかりと口を開けている洞窟が見えてきた。その周りには小柄な人間のような、だが緑色の肌をし手には棍棒を持ったモンスターがうろついている。


「人型モンスターは初めてみるな。サラさんが言うにはお金を落とすらしいし、ここは戦ってみるべきか」


 周囲の確認をしてみるが、入り口にいるモンスターは2匹だけだった。2匹と言っても攻撃しない限り襲っては来ないし問題は無さそうだ。そう考え、詠唱を開始する。


「生命の源 我が願いを聞き入れよ ウォーターボール!」


 水の塊が手前側にいたモンスターの頭にぶつかり、そのつぶてが襲い掛かる。ふらつくモンスターだったが、すぐに立ち直ると飛んできた方向へと顔を向け、俺の姿を確認した。


「ギギィ! ギーッ!」


 その声に反応したのは俺ではなく、もう1匹のモンスターだった。 

 だらりと手にぶら下げていた棍棒を構え、警戒するようにきょろきょろと頭を動かしている。そしてそいつも俺を見つけると、一気に走り寄ってきた。


「リンクモンスターか!」


 リンクモンスターとは2匹、あるいはそれ以上のグループで行動しているモンスターで、1匹でも攻撃されるとグループ全てのモンスターが攻撃者に襲い掛かるという厄介な習性を持つモンスターである。今まで倒してきたモンスターがそうではなかったために油断していた。


 立ち直ったものの、まだふらついている1匹は後回しにし、棍棒を振り回しながら近づくもう1匹の相手を優先する。


「フレイムスピア!」


 炎の槍を飛ばし、攻撃を試みる。しかしそいつはあろうことか、持った棍棒を炎の槍に叩きつけ相殺した。


「マジかよ!? もういっちょ! フレイムスピア!」


 また同じように槍を飛ばす。今回は上手く叩くことができず、少々軌道は逸れてしまったが肩口に命中、シューシューと肉の焼ける音が聞こえてくる。棍棒の持ち手側の肩を焼かれ、苦悶の表情を浮かべながら手から棍棒をずり落とす。追撃をしようとした俺だったが、ふと視界にもう1匹が近づいてくるのが見えた。


「さすがに同時は厳しいな。一度下がるか」


 一気に後方へと走り出し、5秒くらい経ったところで一度振り返る。もちろん2匹とも追いかけてきているが距離は取ることができた。


「生命の源 我が願いを聞き入れよ ウォーターボール」


 冷静に狙いを定めて魔法を撃つ。少し角度を下げて撃った水は狙いどおりにモンスターの足で弾け、上手く転がすことができた。これで時間は稼げるし、あいつの速度も落ちたことだろう。水と炎は相性が悪いため、一度撃ったものと同じ属性じゃないとダメージの入りが悪くなる。最初から炎のみを使うべきだったかもしれない。


「フレイムスピア! フレイムスピア!」


 連続で魔法を発動し、転んで蹲っていない方のモンスターへ集中攻撃をかける。腕を動かすことのできなかったのか、何の抵抗もせずにその胸へと槍を受け入れていた。2ヶ所から炎の槍を生やしたモンスターはゆっくりと崩れ落ちていく。これで残すは倒れている1匹のみ。俺は水の魔法を撃ち、その生命活動を終わらせた。


「ふう。距離を上手く取れれば2体相手でもなんとかなるな。これが戦士だったら死んでいたかも」


 ドロップを回収しながら独りごちる。情報どおり小銭も落ちていた。2匹で100パールだったがそんなものだろう。他には汚れた布着れ、というアイテムを2個手に入れることができた。どうやら布製の防具を作る素材のようだ。後でサラさんに買い取りしている人がいないか聞いてみよう。


 少し戻ってしまったが無傷でモンスターを倒したのは大きい。だが、魔力の消費が激しかったため、体の中に淀みのようなものがある。魔法による疲労を回復するアイテムなんて持ってないので大人しく休憩をとることにした。

 

 洞窟の入り口へとたどり着くと、中を恐る恐る確認してみる。入り口付近は光が入ってくるために明るいのはわかる。しかし、洞窟はその先まではっきりと見ることができた。


「不思議なこともあるもんだ。でもモンスターを見つけやすいし良いことだな。親切設計で助かるよ」


 中へ入ると体がひんやりとした空気に包まれ、どこからか風も吹いてくる。風が通るということはどこかに他の出口でもあるのだろうか。いつでも戦えるように杖を握り締めながら歩き進んでいく。


「……洞窟に草? ご丁寧に花まで咲いてらっしゃる」


 太陽の光が届かない洞窟で、不思議なことに草が生えている。それも1ヶ所や2ヶ所ではない。地面はもちろん、壁や天井にもぽつぽつと見つけることができた。咲いている花は青やオレンジなど洞窟には不釣合いなカラフルさである。


「洞窟が明るいから? うーん謎だねぇ」


 手を伸ばし、そのうち1つを抜いてみる。すると情報ウィンドウが立ち上がり、その草の名前が表示された。 


「ライフハーブか。えっと、調合により生命力を回復するポーションを作成可能……」


 おお。これがサラさんの欲しがっていた素材だったのか。花の色が違うのもあるけどそれはどうかな。今のは赤い花をつけた草。今度はオレンジの花を摘むことにした。


「これはスタミナハーブ。行動により失われたスタミナを回復するポーションの材料となる、か」


 花の色で効果が違ってくるようだ。注意深く観察したが、ここには赤、オレンジ、青の3種類の花が咲いている。とりあえずは残りの青の効果は魔力っぽいな。まぁ一応見るけど。


「やっぱりか。名前はマナハーブ、失われた魔力を回復するっと。調合が無いとただの草になるのはどれも同じみたいだな」


 目に付いたハーブを片っ端から摘んでいく。天井に生えているものはさすがに無理だったが、それ以外はどんどんインベントリの中へと放り込んでいく。


「あれ? ここどこだ?」


 つい夢中になってしまい、いつの間にか知らない広場に出てしまっていた。そこはまるで太陽の下にいるかのような優しく、明るい光が天井から降り注いでいる。また、地面には3種類のハーブが群生しており、地面を覆い隠していた。


「なんかすごい所に来たな。あれ? あそこにあるのは……石、か?」


 広場の中央、ハーブに囲まれた場所に大きめの石が見えた。側に生えているハーブの大きさからして恐らく俺の腰くらいまであるか。なんだか気になって、調べてみようと足を踏み出した瞬間。


『去れ』


 まるで腹の底から搾り出したような、男のような女のような不思議な声だった。はっとして辺りを見ると1頭の黒い馬が佇みこちらを見ていた。

 広場に射している光を飲み込んでしまうような漆黒の馬体。額には天を貫くように金色の角が存在を主張している。まるで物語に出てくる聖なる獣、ユニコーンだ。体の色は正反対だが。そして両の眼は炎を閉じ込めたような真紅のルビー。そこから流れる赤い筋……。


『去れ』


 その姿から目を離せないでいると、またさっきの声が響く。もしやあの馬が話しているのか、などと思った俺に3回目の声が聞こえた。


『去れ』


 だが、3度目は声だけではなかった。まるで元からそうであったように、俺の胸には氷柱が突き刺さっていた。その直径は恐らく50センチ近いのではないだろうか。俺の上半身ほぼ全てを貫いたそれは、役目を終えたと言わんばかりに砕け散る。ガラス細工が割れたような透明感のある音と共に俺の視界は闇に覆われた。





「うわっ!」

 

 次に気が付いた時には町の酒場の前だった。どうやら俺は死んで町に戻されたようだ。

 あれは一体なんだったのか。イベントモンスターだろうとは予測できたが、2つ目の町で出てくるようなものとは思えなかった。知覚できない攻撃なんて格が違いすぎる。ぼんやりとした何かが頭を掠めるがそれが何かはわからず、まずはサラさんに会うことにした。さっきの黒い馬のことも話そうと思いながら。

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