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世界の隣人 -Another World-  作者: タンス
第2章 冒険者の町ソフィア
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 明朝。立ち上がってみたが話に聞く二日酔いで体が辛い、ということは無かった。飲んだのがグラス1杯だけだったためか、それともあくまで「疑似体験」だったのかはわからない。


 部屋から出て、階段を下りていくとカウンターでグラスを磨いているマスターを見つけた。目が合ったので一応会釈をしておく。


「おはようございます。冒険者さんはお早いお目覚めですね」


 マスターはグレーの髪をオールバックに固め、カイゼル髭が素敵な中年男性だ。見た目どおり、物腰も紳士然としていた。


「ども。おはようございます。今日は外を見て回ろうと思って」


 会話は信頼関係を築く重要な要素だと聞いたことがある。村でもそうだったし、ここでも住人との関係は大事にしたい。


「そうでしたか。町に来たばかりでしたら南門から出た草原が良いと思いますよ。取れた食材はここでも買い取っておりますので」


 商人が多く集まる北部には恐らく食材を扱う店もあるだろう。しかし、酒場でも食材を買い取ってくれるのなら、狩り終了後にここでドロップを売り、そのまま休むということができそうだ。しばらくはそのスタンスでいいかと考える。


「ならそうします。買い取ってくれるのは食材だけですか?」


「ええ。他の素材などはお手数ですが北部でお願いします」


 ついでに他も、と思ったができない相談だったらしい。まぁインベントリに保管しておいてもいいか。時間ができたら売りに行けばいいし。


「わかりました。いってきます」


「お気をつけて」


 マスターに送り出され、南門へと向かう。途中すれ違った魔道師たちは、白や黒、赤や青など色とりどりのローブを身に着けていた。茶色のローブがなんだか貧相に見えてきてしまう。武器はあることだし、ここでの生活に慣れたら新しいローブを新調したいな。



 しばらく歩くと門が見えてきた。門といっても外国の城のような立派なものではなく、村にあったような木製の柵が立ち並んだそこにレンガでしっかりと造られた門だった。規模も大きく違っていて、4、5メートルくらいはあるだろう。扉部分は木製で時代劇で見るような、かんぬきをはめる場所もある。この時間は開放されているので近くの柵にかんぬき自体は立てかけられていた。


 門番というヤツだろう、体格の良い2人の男が立っていた。小型の丸盾を持ち腰には剣を下げている。ただそれだけでも威圧感があった。そそくさと横をすり抜け草原に出る。門の近くにはさすがにモンスターの姿は無い。仕方が無いので少し歩くことにした。




「ん? いや……。でも動いてるし……」


 そんな言葉が出てしまったのは、少し遠めに枯れ木が見えたからだった。だが果たしてそれは枯れ木と言えるのか。なぜならソレは、根っこを足のように動かして歩いていたからだ。


「確実にモンスターだよね。植物が歩くわけがない。枯れ木ならなおさらだろうし」


 杖を構え、魔法の射程距離まで静かに移動する。魔法の射程は無限ではなく、一定の距離で消えてしまう。もっと厄介なのは、魔法が当たらずに消えても狙ったモンスターはなぜかこちらに気づき襲ってくることだ。村でしっかりと射程距離を頭に叩き込んでいるので、どれくらい近づけばいいかはわかっている。


 射程ギリギリまで寄った時には枯れ木は枝を揺らしながらその場に留まっていた。もちろん使うのは炎魔法。絶対に弱点は炎だ。見ただけでわかります。


「さていこうか。フレイムスピア!」


 最初に比べ、ほんの少し大きくなったような炎の槍は真っ直ぐ枯れ木に向かう。そして着弾。一気に燃え上がり、そのまま白煙を上げて倒れてしまった。肩透かしを食らってしまったがこれで戦闘は終了。さっさとドロップを回収する。

 

 手に入ったのはデッドツリーの小枝、というアイテムだった。説明文から木製の武器の材料になることがわかったが、たぶんこれを使ってできるのは粗悪品だろう。枯れ木で作った杖や弓が高い威力を持つなんて想像つかない。見たことはないけど黒檀や、高級なイメージの桐とかが材料なら納得するけど。


「まぁ、どんな物でも売れるなら大事な商品だからね。後で素材屋に売りさばこう」


 腰のインベントリに枝を入れ、次の獲物を探すことにする。だが獲物を探してうろついていた俺の前に現れたのは、2頭の羊と戦う一人の戦士だった。

 

 金属を打ち付ける音が離れた俺の耳にまで届く。切れ味が良くないのか力いっぱい叩きつけていた。そんな武器を使っているなら俺と似たような初心者に違いない。不利な状況だとは思ったが戦闘に勝手に参加して怒られたら困る。モンスターって攻撃しない限りは襲ってこないはず。ファングは違ったけどあれはイベントだったし。なんにしろ、まずは聞いてみようか。


 

 戦闘に集中していて、戦士はこちらに気づいた様子はない。


「大丈夫ですかー? もし助けがいるとかならお手伝いしますけどー?」


 5メートルほど離れた場所から呼びかける。この距離はもしモンスターの攻撃が逸れても避けられると思った距離だ。


「あ? あぁ? 誰かいんのか!? 助けてくれ! 2匹は無理だ!」


 うん、良かった。ちゃんと言質は取った。そういやドロップはどうなるんだろう。倒した人なのか、最初に攻撃した人なのか、どちらか気になるな。まぁ優先するのは人助けだよね。


「なら左の羊を! いきますよ! フレイムスピア!」


 ここで水魔法を使った場合、水溜まりができるし、狙っていない羊にまで水しぶきがかかる危険があった。ターゲットの変更されても困るし、足を取られて戦士が転んだら目も当てられない。なので、範囲の狭いフレイムスピアでターゲットを移して2頭を分けることにした。


「ブモォー!」


 ……羊? いやモコモコしてるしそうなんだろうけどね。いやーそれにしてもよく燃える。空気を含んだ毛は燃えやすいって聞くけどそのとおりだなぁ。

 怒り狂ったように鳴きながら突進してくる燃える羊。真っ直ぐこちらに向かってくるなんて、倒してくれと言わんばかりじゃないか。しっかりと希望を聞いてあげよう。


「フレイムスピア!」


 槍は頭を貫き、力が抜け体を支えることのできなくなった羊はそのまま地面に倒れこむ。頭に穴空いてるとかきっついなぁ。血は出ないけど触れない限り数分はその場に残っているから早めに消してしまいたい。そういやあの人はどうしてるのかな。


「はぁぁぁ!」


 視線を向けると戦士の右腕が光り、剣を叩き付けた瞬間だった。肌を刺すような音と同時に羊の体が爆発する。やだ……カッコいい……。

 しかし、衝撃がこちらに伝わるほどの爆発なのに音自体そこまで大きくなかった。その辺りも調整されてるのかな。


 衝撃でひるんだ羊に2回、3回と剣と叩き込み、最後にトドメとばかりにまた爆発を起こす。全身を焦げ付かせた羊が倒れると、戦闘終了の合図のように緊張していた体から力が抜ける。


 まぁとりあえずは声をかけるべきだよね。その時初めてその戦士を顔を正面から見た。そして……。


「あれ? もしかして……」

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