88.わたしの入院生活⑧
12月ももうすぐ終わる。
少しずつリハビリの量も増えてきた。
長期間関節を動かしていなかったせいか、皮膚が突っ張って上手く動かせない。
それでも、なんとか肩を上げるだけでなく、肘も動かせるようになってきた。
手を後ろに回せるようになれば、自分でシャンプーができるようになる。
毎日何かができるようになる。
少しずつでも頑張る。
それが今のわたしにできること。
勉強の動画を観ながら勉強もしているが、自分が周囲と比べてどのくらい遅れているのかはわからない。
わたしの高校二年生の二学期は、この病院生活で終わった。
きっとリハビリを続けて、日常生活がある程度できるようになれば退院だ。
今年度中には退院できると思う。
だけど、しばらくは通院して、皮膚の状態を診てもらったり、リハビリを続けたりすることになるだろう。
完全には元に戻らないだろうな。
皮膚がボコボコしているから着ている窮屈な服も、夏になれば暑いだろうし、やっぱり火傷をしていた部分は色が違う。
はあー。
わたしは深いため息をついた。
『随分と凄いため息だね。』
声のした方を見ると、兄がいた。
『あっくん! レディの部屋に入る時はノックでしょ!! 就職試験の時に練習してたでしょ。千本ノック!』
わたしは兄を注意した。
兄は呆れた顔で、
『それは面接の練習な。ドアを叩く練習じゃない。』
と言った。
『同じノックでしょ!』
『全然違う。』
兄は即答した。
そして、
『しかもレディって、お見舞いに来るのもほとんど家族だから、オナラだって人目を憚らなくなってるじゃん。』
と言う。
『うるさいなー!
レディなの。
女の子なの。
乙女なの!』
わたしは怒った。
兄は、
『はいはい』
と適当に聞き流し、
『そうだ。今日は近況報告に来ました。』
と言った。
『へぇー。じゃあお願いします。』
いつものように記憶を見せてくれるんだろうと思い、わたしは病室のベッドに横になった。
すると兄が、
『その前に、両親と話すことかもしれないけど、学校は休学して復学する予定でいいんだよね?
通信制高校へ転校するとか、高卒認定試験を受けるとか、そういう選択肢もあるみたいだけど。
ただ、復学しても学年は変わると思うよ。
仲の良かったゆりちゃんやみほちゃんとは、別の学年になる。』
と言った。
わたしはベッドから起き上がる。
『そのくらい、わかってるよ! バカ!!』
喉が潰れそうなくらいの大声で、兄を怒鳴りつけた。
兄は優しい声で、
『あいちゃんは十分頑張ってる。
当主になるんだから、無理せず、確実な回復を最優先にした方がいいと俺は思うよ。』
と言った。
わたしは、そうだったと思い出す。
『あっくん。
わたしに次期当主の役割を教えて。
当主になったら何をするのか。
どんなメリットとデメリットがあるのか。
全部知りたい。』
そうお願いした。
ご意見 ご感想 よろしくお願いします。




