表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/99

24.兄が見ている世界 —スマホチェック—

しばらくしてスマホの電源が入り、恐ろしい量のメッセージ通知が表示された。


兄はげんなりした顔で、

『メッセージ見るのめんどいから、そのまま電源落として、無かったことにしない?』

と言いだした。


すかさず、わたしが言う。

『ダメでしょ。誰が何のメッセージ送ってるのか知らないけど、あっくんに伝えたいことがあるから送ってくれてるんじゃん。ちゃんと見るよ』


兄は驚いたように、

『あいちゃんも、少しはいい事言えるんだ』

と言った。


『失礼な! わたし、あっくんより偏差値高い学校に通ってますから!』

そう言い返してから、ふと思い至る。

……そういえば、まり姉って中学生の頃、わたしより成績良かったよね?

今日の三者面談、最初はあっくんで、まり姉より前……って事は……

『あっくん、中学生の頃の成績は?』


『覚えてない……てか、今と同じじゃない?』

と兄は答えた。


『まり姉より成績は……?』


『まりちゃんに、テストの点数で負けた事はないよ。これくらいしか、まりちゃんに勝てる所ないし。そこでも負けてたら、嫌われるかもしれないじゃん』

兄はさらっと答える。


『あーーー!! うそだーーーーー!!

わたしの方が頭いいって思ってたのに!!!!』

わたしは狼狽え始めた。


兄が慌ててフォローする。

『落ち着いて。少なくとも、今はあいちゃんの方が勉強できると思うよ。だって五教科の勉強って、進学校と工業高校じゃ、割いてる時間も教わる内容も全然違うから』


『そうだよね……』

わたしはそう言いながら、自分に言い聞かせる。

時間も、質も、優れた知識を取り込んでいるのはわたしの方。

だから、わたしの方が頭がいい。


そう思い込むことで、なんとか気持ちを落ち着かせた。



さっそく見てみるか……

そもそもフレンドになってるの、お父さん、お母さん、わたし、まり姉、ありさだけじゃん。


『同性の友達いないって、なんかかわいそ』


わたしが言うと、兄はあっさり、

『俺には、まりちゃんが居てくれたらそれでいい』

と言った。


『はいはい。それ、まり姉を抱きしめながら囁いてみてください。反応はレポートにまとめて、わたしに提出するよーに』

もうどうでもいいや、という気持ちでわたしは言った。



それぞれ、最後のメッセージは――

お父さんからは……無し。


お母さんからは……

『返事がないようなので、直接話しましょう』


わたしからは……

『スマホくらい見ろ! バカ!!』


まり姉からは……

『明日は部活来れそう? メッセージ見てないかー』


そして、ありさからは……

……って、おい。毎日送ってきてるじゃないか!


もはや日記!!


昨日のあっくんとのデートの感想まで、きっちり書いてある。


ふむふむ……。


三者面談の結果、ありさは、あっくんの希望する会社の近くにあるパン工場の推薦枠を取ったみたいだ。


後は、フレンドじゃない人たち。


今日の後輩ちゃんから。

『先輩、私と一緒に夏祭り行ってください!』


後輩くんからは、

『この問題の解き方を教えてください』


……ほとんど、ありさだったね。



兄はふとスマホを手に取り、ありさへ電話をかけた。

『もしもし。篤志だけど、ありちゃんかな?』


『うん、そうだよ』


『遅い時間にごめんね』


『全然大丈夫だよ。まだ八時だし』


『今日は、俺のせいでごめん』


『えっ……そんなことないから!

むしろ、あっくんからならウェルカムだから!

何も気にしないで、今まで通りに接してほしいな』


『ありちゃん、ありがと。でも嫌な時は無理せず言ってほしいな。言ってもらえないと、俺、鈍感だから何も気づかないみたいだし』


『う、うん……わかった』


『就職先のことだけど、ありちゃんなら他にも色々あったんじゃないの?』


『そうだね。先生からも色々言われちゃった。

成績悪かったら、学校推薦でも落ちるから、そっち向けの就職先取りなーって。

もっと色々あったんだけど、あまり冒険せずに、確実に内定もらえそうな所にしちゃった。

近くの就職先だったら、またこれから先も会う機会あるかなって』


そこから、完全にありさのペースに入った。


『そしたら、うちの親ったら……』


『それでねー……』


『あー、聞いてよ……』


兄は部屋の明かりを消し、通話をスピーカーに切り替える。


スマホを枕元に置き、寝転がって目を閉じながら、ありさの話に相槌を返していた。


すると、スマホ越しに、ありさの母親らしき女性の声が聞こえてきた。


『何時だと思ってるの! 明日から新学期なんだから、さっさと寝なさい!』


『あっくん、ごめん。親が怒ってるから、そろそろ切るね』


『うん。ありちゃんの元気な声聞いたら、元気出たよ。これからも、元気なありちゃんの声を聞かせてね。また明日、会えるの楽しみにしてるね。

ありちゃん、おやすみなさい』


『ううん。わたしも、たくさんあっくんと話せて楽しかったー。おやすみなさい。また明日ね』


……


……さっさとどっちか電話切れよ。


そう思って兄を見ると、もういつ寝落ちしてもおかしくない……というか、既に寝てるんじゃないか? と思える状態だった。


『あっくん? 電話切らないの?』


『ありちゃんの声、ずっと聞いてたいなって思って。通話終了ボタン押せずにいる』


ほーう。

よくもまあ、いけしゃあしゃあと……


わたしには、腕伸ばしてスマホ操作するのがだるいだけにしか見えませんけど?


すると再び、ありさの母親らしき声が響く。


『ありさ! まだしゃべってたの!?』


『ごめんね! おやすみ! また明日ね!』


ありさがそう言って、ようやく電話を切った。


兄は……

寝てる。

わたしは、「これでいいのか?」と、ため息をついた

ご意見 ご感想 よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ