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Chaos〈カオス〉 〜バグった世界の暮らし方〜  作者: 身勝手な鶏
1章:平穏と人権は脆く、運命は無情に働く
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序章Ⅰ 平穏と崩壊

ど素人による不定期カオスファンタジー第一話です。初めの方はあらすじとだいたい同じ文なので読み飛ばしてもらって構いません。

時は20XX年、超新世時代。ある日を境に世界各地では突如として異世界、魔界、妖魔界、異星、異次元、平行世界、冥界などへと繋がる空間のねじれ、異界門ゲートが頻出するようになった。

そこからは魔物やモンスターなどが多数出現、毎回現世に多大な被害を出していた。


これは、そんなバグった世界でも必死に生きる、とある青年の物語


「ふぁぁぁ〜」


…な、訳はなかった。


まぁこんなバグった世界でも人々は慣れるもので、そんな世界のカオス化、世界革新が起こってから数年、現世はそれらに普通に適応していた。

なんなら、それらと共に流出した魔力などを使いこなし、文明発展に応用するくらいにはなっていた。


大体、今時小学校で能力(スキル)での護身術を教えているから華奢な少女でもクマくらいなら勝てるし、ウーヴァーはホウキに乗って飯を持ってくる。

ペットショップにはスライムが並んでたり、ファッションプロデューサーをしているトイレの花子さんがいたりもする。


つまり世界は、街中を適当にふらつきながらあくびをする程度には平和だった。


そして俺、小鳥遊麻義(たかなしあさぎ)は暇だった。


「えらく盛大なあくびだね。また徹夜でゲームでもしてたのかい?」

もうひとりの暇人、こんが言った。(こん)は学生時代の同級生で、俺の数少ない友人だ。

「いや、昨日はちゃんと5時には寝た。まだギリ夜だろ?」

「そっか。じゃあそんなあさに裏情報を教えてあげよう。午前5時ってガッツリ朝なんだよ?」

麻とはこいつだけが使う俺のあだ名だ。

「何が裏情報だ。俺は俺が寝る時間が夜で起きる時間が朝なんだよ」

「何その自己中すぎる定義」

うん、俺もそう思う。

「いやでも昨日はゲームは12時までしかやってねぇよ?ほら、液晶見た後に寝るとなんかダメだって言うじゃん?だからこれ読んでたんだよ」

俺は格納術式アイテムボックスから昨日読んでたラノベを取り出した。

「それで寝るのが遅くなってたら世話ないよ。それで?その本5時間もかけて読んでたのかい?」

「いや、これの1巻から読んでた」

「へ?それ10巻だよね?その分厚いやつその速度で読破するって、ほんと麻はバケモンだね」

「失敬な。人をバケモン扱いとかよくないだろ」

バケモンってのはもっとこう、建国して魔王にまで上り詰めたスライムとか、白髪碧眼の現代最強の呪術師とか、霊長類最強の女とかを形容する言葉だ。

ACG(アニメ コミック ゲーム)くらいしかやることがない一般人に使う言葉じゃない。

「…で?それで今日は9時集合だったのに昼に今起きたと連絡を入れたと?」

歩きながら(こん)が言った。(いま)は表情こそ変えていないものの、声は少し怒りを帯びている。

「あ、UFO」

俺は上に揺蕩(たゆた)っていたUFOを指差した。

「そうだねUFOだね。露骨に話を逸らさないでくれるかな?」

といいつつも、こんが諦めたようにため息を吐いた。


「しかし麻、ほぼ一日中その生活って暇人すぎないかい?今日も集まる予定無かったらその生活だったんだろう?」

そんなことはない、今日は何も無かったらアニメ漬け生活だっただろう。

「別にそこまで暇じゃねぇよ。大学院も卒業して、就職もしてなくてバイトも趣味も彼女もないくらいで…」

「うん、暇人…というかニート以外の何者かなそれ」

…まぁ、今ここにいるのも暇つぶしだが。

「でも最近この辺平和だし暇にもなるだろうね。前に異界門(ゲート)が出たのっていつだったっけ」

今が頭の後ろに手を組んで言った。

「先月?いや先々月末だったかな」


異界門ゲートはだいたいひとつの街に週一くらいのペースで各地に出現する。

出現してもだいたい2時間くらいで自然消滅するのだが、いくら皆慣れたといってもそれなりな被害が出て騒ぎになる。

よって、ここまで長いこと出現しないのは十分平和と言えた。


「平和ならいいじゃん別に」


そう、何も無く、平和なことに越したことはない。

俺はこんな世界でも、さして騒がしくもない平穏で自堕落な生活を送っていたい。


「ねぇ、あれって…」


(こん)が目の前を指した。


…早いなぁ、フラグ回収。


「うわぁぁ!げ、異界門(ゲート)だぁ!」

近くにいた男性が悲鳴をあげた。それと同時に騒ぎになり、人々が逃げ惑っている。

今が指した先は空間がめまいのように歪み出していた。異界門ゲート出現の予兆だ。

あぁ、どうしてこうも思い通りにいかないかなぁと強く思う。

平穏がいいと思った側から目の前に出るのはおかしくないだろうか。しばらく出てなかったんだからこのまま出なけりゃいいのに。

「おい、逃げるぞ!」

今に言った。異界門ゲートはいわば災害だ。それに立ち向かい戦う職業もあるが、一般人は逃げるに越したことはない。

だから早いとこ逃げようとしたのだが、しかし既に横に今はいなかつた。

「…こん?あの…こんさん?」

周りを見渡したが逃げ惑う人々の中にもいない。指を指した直後に速攻で逃げたのだろう。

「………………」

状況を飲み込めずに呆然としていたら空間の歪みが異界門(ゲート)を形成、魔物が出現しだした。

「…ふぅっ…スー………」

周囲の人々は既にあらかた逃げており、魔物のヘイトは当然俺に向く。

「はぁぁぁ?!フッザケンナあのクソ外道!音もなく一瞬で逃げやがって!」

しかしキレてる暇なんてなく、魔物共がこっちに向かって襲いかかってきた。もう普通に逃げても追いつかれる距離だ。

「くっそ、逃げるならあいつの能力に頼るのがいちばん楽だったのに!あの外道、今度あったら絞めてやる!」

今俺にここから逃げる手段なんてものは無い。

つまり、俺に残っているコマンドは

・狩られる前提で逃げる

・少ない希望をかけて助けを呼ぶ

・戦う

のみである。

しかし逃げても追いつかれるし、助けを呼ぼうにも周りには誰もいない。

つまりあと俺に残されているコマンドは戦うしかない。


「………っクソがぁぁぁぁ!!!」


あぁくっそ、面倒くせぇ!


戦えなくはないが、戦うのは非常に面倒くさい。

こんな俺が大して来ないとこで正義の味方みたいなことすんのは俺の省エネ主義に反する。

…しかし、そうは言ってもタダでやられる訳にはいかない。

「…っあーもう!戦闘術式展開、多目的機球(マルチオーブ)起動、加速スピーダー動作模倣トレースムーブ!…ん?」

嫌々ながら応戦しようと能力を発動していると、横から誰かが走ってきた。

「ワハハハハ!異界門(ゲート)も私がいるところに出たのが運の尽きね!害獣ども、この私が地獄に送り付けてやるわ!」

「ん?何だあれ」

走ってきたのは青髪の二十歳前後くらいの女性だった。女は両手に銃を持っており、完全に戦う人間の風貌だ。

ん?つまりこれこいつが戦うのか?

すると俺帰れんのか?


…………よし。


俺はこの人にこの魔物共を押し付け…任せて逃げることにした。


「えっと、討伐者の方ですか?んじゃこいつらの対処お願いしますー」

「任せなさい!この私が蹂躙じゅうりんしてやるわ!」

女性は銃を的確に撃ちまくり、言った通りに魔物共を駆逐している。銃以外にも電気系っぽい能力を使って、何の危なげもなく魔物を倒していた。


討伐者。それは世界革新後の世界において異界門(ゲート)などの超自然的な災害や能力犯罪に対し立ち向かい、武力や能力をもって対抗する国家公認の私営組織、討伐者連隊(SuRe)に所属する人々の職業名だ。彼らの多くは一般人を大きく上回る能力と実力を持ち、魔物にも引けを取らない強さがある。


よし、問題なさそうだな

俺はそんな討伐者の女性が魔物を蹂躙する様子を眺めながら小走りで逃げていた。

「ハハハ!弱い、弱すぎる!見ろ、魔物がゴミのようだ!」

女性討伐隊者はなんか聞き覚えのあるセリフを楽しそうに言いながら魔物を血祭りにあげている。中には翼竜みたいなそれなりに強そうなのもいたが、それらも難なく倒している。

……倒していた。

「ん?何であんた銃効かないの?待って電撃も効かないじゃん!何あんたゴムなの?ちょっと待ってタイム!」

数体出てきた弾力のありそうなでかいカエルみたいな魔物を相手にしてから女性討伐者が動揺し出した。どうやら相性がかなり悪いらしい。

(ちょっ!)

あろうことか女性討伐者が逃げ出した。しかも、よりにもよってこっち方向に。

「は?!待って、こっち来ないでください!あなた討伐者でしょう?!逃げずに立ち向かってくださいよ!」

俺は仕方なく全速力で逃げながら叫ぶ。

しかし彼女は止まらない。

「そんなこと言っても仕方ないでしょう?!私の攻撃方法基本的に銃と電撃しかないのよ?格闘も多少できるけど銃効かない相手に通じるわけないじゃない!ウルトラ不利相性よ!ゴムゴムにゴロゴロは相性悪いの常識でしょう?!あのゴム製カエルはいわば私の天敵よ天敵!私だって討伐者だけど死にたかないわよ!勝てない相手には即座に逃げるの!それが上手に生きるってことよ!」

この女はものすごい勢いでいいわけを始めた。仕事人としてそれでいいのだろうか。というかさっきまでの威勢はどこへいったのだろうか。

「おまっ、プロとしてそれでいいのか⁈てかさっきまでの威勢はどこいったんだよ!」

「あなた急にタメ口になるわね?!私たち初対面じゃないの?!私、初対面の、増して命の恩人にはもう少し敬意を持って接するべきだと思うんだけど!そんな思ったことをずけずけと言うのは敬意が足りてないんじゃない?!」

女は走りながら言った。

「何が命の恩人だ!現在進行形で自分を危険に晒してる上に開き直ってる相手にどう敬意払えってんだよ!」

「…っっ!…いやっ…まぁそれでもこれはいわば不慮の事故なんだし、少しは遠慮してくれてもいいんじゃない⁈

…あ、そういえばあなた私が来た時戦おうとしてたわよね?実はわりと戦えたりしないの?」

うっわ。こいつ、バカそうなのに覚えていやがったか。


まぁ、別に戦えなくはない。


そりゃあ大学では異能力スキルの研究をしていたし、幼少期は護身用として親に多少の戦闘も学んだ。少しは戦える。それにこんなご時世だ。たまに魔物の討伐をすることだってある。

「っつっ………………」

だが面倒くさい。ここで参戦したら絶対最後まで戦わされる。

だがこのまま逃げても追いつかれるし、こいつは頼りにならない。

だが面倒くさい。だが…

…………

「…っあぁ!まぁそれなりに戦えるよ!少し手伝うからさっさと片付けるぞ!」

俺は立ち止まって振り返り、スキルの詠唱を始めた…!

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