第69話 生足を調査せよ!?
1話完結型なので気楽に読んでください!
◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)
屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。
●エルザ
アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。
帝国では新年になると、皇帝が「勅令」を発布する。諸侯が封建契約を再確認するための儀式であり、内容はくだらないものばかりだ。まあ、諸侯が受け入れやすい内容にすれば、無用なトラブルは避けられるという暗黙のルールみたいなものだ。
去年は「使者が到着した日の天気を報告せよ」という命令で、仰々しい巻物が読み上げられる度に溜息が漏れた。
(早く終わらないかな〜)
誰もがそう思う儀式だ。今年もその日が来た。
「閣下。皇帝の使者がお見えになりました」と屋敷の使用人が報告する。謁見の間に現れた使者は真面目そうな男で、巻物を広げ一礼すると言った。
「コホン。それでは皇帝陛下の今年の第1号命令をお伝えします……『神聖にして神の恩寵を受けし偉大なる帝国の皇帝にして信仰の守護者たる我は諸侯に命ずる……』」
いつもの長い前置き。誰も真面目に聞いていない。前世の校長の話ってこんなかんじだったな。そんな感じで、ぼんやり聞き流していると、本題らしき言葉が耳に入ってきた。
「以上のことから、領民の生……足を調査する調査官を派遣するので、国民の状況を帝国皇帝たる我に報告せしめよ」
うん? 生足……調査官? 国民の生足を調査するの? 靴下とかストッキングを履いてない状態の足?
なにこれ、変態? 頭の中に「?」が並ぶ。
「以上が皇帝陛下の御命令です」
使者が締めくくり、僕に頭を下げた。
「はあ。生足調査官とは……使者殿のことでしょうか?」
僕が尋ねると、彼は顔を引きつらせて、答える。
「まあ、そうなるのですかな……いや、困ったなこれは……ははは」
苦笑している。真面目そうな使者殿も愛想笑いで誤魔化しちゃったよ。
「使者殿を疑っているわけではないのですが、念のため、命令書を確認させてください」
そう言って巻物を手に取る。丹念に飾られた文字を繰ると、確かに「領民の生…足を調査する」と書かれている。「使者殿が読み上げた通りですね」
「そうなんです。途中でページが変わっていますが、生足を調査するって書いてあるんです」
使者が答え、僕は頭を抱えた。
「ま、まあ形だけですよね……。それに、この報告が皇帝陛下にとっては重要な統治情報なのかもしれませんし」僕は自分に言い聞かせ、城下町へ向かうことにした。
使者と共に町へ出て、内政担当者がランダムに選んだ領民に協力を求める。最初の対象は派手な衣装の女占い師だった。
「え?あの皇帝陛下の命令なんですか?」
「あ、はい。そうなんです。国民の生足の状況を調べよと」と使者が答える。
「網タイツですか?」
「そう。その網タイツを脱いでください」
「え?そこまでするのですか?」
「皇帝陛下の命令ですので」
「恥ずかしいのですが……」
「皇帝陛下の御命令です」
彼女は渋々網タイツを脱ぎ、素足をさらした。
でも、僕はこの占い師は髭面男たちの赤ちゃんごっこに付き合っているという秘密をしっている。いまさら、生足くらいで恥ずかしがるんじゃないよ。
使者は真剣に観察し、「おお!血色良し!優良!」と評定を書く。なんだその判定基準は?
次の対象はギルド所属の女戦士。彼女は鎧の下にストッキングを履いていた。
「え?足見たいの?変態じゃね?」
眉をひそめる。
「拒否をすると、帝国の敵として命を狙われますぞ」
使者が脅す。こんな命令でそれはねーよ。
「なんだか……恥ずかしいな」
使者は彼女の足元を見て指摘する。「むっ!あなたはストッキングを履いてますね!脱いでください!」
「冬で生足は冷えるんだよ!」
「いいえ!帝国皇帝の命令です!ストッキングは脱いで、きちんと生足を調査させてください!」
なんだこのやりとり。結局彼女はぶつぶつ言いながらストッキングを脱ぎ、素足を差し出す。使者は律儀に評価を書き込んだ。こんな記録が数百年後も記録として残るんだったら最悪だな。
この茶番を数人で繰り返した後、さすがにアホくさくなった僕は使者に調査を任せて別室で家臣と待つことにした。
「あー、帝国から独立しようかな〜」
思わず独り言を口にすると、執事や家令、騎士団長がうんうんと頷く。誰か軽口をたしなめろよ。しかし……独立するとなると戦争も考えなければならないが、ちょっと本気で考えてしまう。
そこへ姿が見えなかったエルザが戻ってきた。
「ご主人様……」
エルザは珍しく慌ただしい。
「今日はどこに行ってたの?ところでそちらさんは?」
僕が尋ねる。
「こちらは本物の皇帝の使者です。命令書を1枚だけ抜いて持ち去られたそうです。そしてこれが抜かれた1ページです」
エルザが紙を1枚差し出す。
その1枚は例の生と足の間の1枚のようだった。繋げると……
『領民の”生“活を維持するためには冬季の食糧の確保が重要で…(中略)…よって、食糧の充“足”を調査する調査官……』
このように記されていた。偽物が持ってきた巻物と合わせると、「領民の『生』活のため、食糧の充『足』を調査する」となる。食糧の充足調査とか普通の内容じゃん。誰だよ。生足調査官とか言ったやつは?
僕とエルザは顔を見合わせる。
「ご主人様。あの男は最近、世間を騒がせる生足専門の痴漢かもしれません」
「え、そんな痴漢がいるの?」
「はい。神出鬼没。どこにでも現れて、生足を見つめては消えていくという高レベルの変態です。ただし、決して触ったりしないという」
「見つめるだけだったら、実害ないからいいんじゃないの?」
僕がそう言うと、エルザは深くため息をついた。
「ご主人様は、本当にわかってないですね。気持ち悪いんですよ。ジロジロ見られるのが。大体……」
あ、これ長いやつだ。僕は説教を後回しにし、偽物と対決することにした。
「とにかく、あそこにいる偽物を捕まえよう。話はそれからだ」
偽皇帝の使者が調査と称して生足を堪能している部屋へ入る。
「いやー、使者殿。なんかおかしな命令書だと思ったら、途中に1ページありましてね」
僕が告げると、男は明らかに動揺した。
「え、あ、そ、そうなんですか?」
単刀直入に切り出す。
「ところで、あなたは誰ですか?」
男はうつむき、低い笑い声を漏らした。
「ぐふふふ。バレてしまってはしかたながない。俺は生足怪盗!古今東西の生足を鑑賞するのだ!」
「なに?やはり貴様が噂の!こんなことなら騎士団のすね毛生足ばかり調査対象にしておくんだった!」
僕が叫ぶと、怪盗は反り返って笑った。
「わかってないな。すね毛生足も俺様の好物なのだ!」
「ご主人様。高度な変態です。これ以上関わると碌なことになりません!」
エルザが叫ぶ。
怪盗生足はお構いなしにエルザを舐めるように見た。
「くふふ。そこのメイドさんよ。お前の生足を想像してやる……ほう。今日もすね毛の処理をしているな。あ、こんなところにホクロが……」
「貴様!私の生足をこれ以上想像するな!」
エルザが投げた投げナイフをひらりとかわす怪盗生足。って怪盗って言っても盗んでいるわけじゃないよね? と内心突っ込みながら僕は唖然とする。
「ご主人様!早く捕縛命令を!」
「そうは言っても、エルザ。何の罪状で捕まえるのさ」
「その……何の罪なんでしょうか?」
残念ながら今のバームベルクに生足を想像して捕縛する法律の根拠はない。
「ですが!気持ち悪いんです!」
「エルザ。落ち着いて。気持ちはわかるけど、まだ見られているわけじゃないから」
怪盗は笑い声を上げた。「フハハハハ!また会おう諸君!生足あるところに、怪盗生足ありだ!」
謎の変態はそう言い残し、煙のように姿を消した。
なんというか、手強い敵だった。エルザは眉間に皺を寄せて言う。
「その……生理的に無理なので、あいつが再登場してきた時は私抜きでお願いします」
「あのさ。エルザ。刺客コスチュームの時はスリットが入っている衣装なのに、生足を見られるのは嫌なんだ……」
「そういう問題ではありません。だいたいご主人様は……」
あ、これ長い説教だ……。僕はまた遠くを見つめ、エルザ先生の説教が終わることをただただ待つのだった。
こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。
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いろんな人に読んで欲しいので⭐️評価などいただけると嬉しいです!




