第67話 エルザの言い訳
1話完結型なので気楽に読んでください!
◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)
屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。
●エルザ
アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。
バームベルクに戻ってきた。
ご主人様に随行して聖都まで赴き、無事に帰還した。
任務は完了。結果としても問題はない。
私はエルザ。
バームベルク侯爵ハインリヒ様のメイドであり隠密。近頃は秘書のような役割も担っている。
元は刺客だったが、ご主人様に敗れ、そのまま雇用された。正社員として。
現在の待遇には満足している。
福利厚生は以前より格段に良く、不満はない。
ただ……雇用主であるご主人様が、普通の貴族とは違うという点を除けばだ。
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「お願いしたとおり、今日は予定を入れてないよね?」
「はい。来客も会議もありません」
なぜこの日だけ予定を空けさせたのだろうか。
疑問には思うが主人の指示に理由は必要ない。
「じゃあ、外出に付き合ってほしいんだけど……いいかな?」
今日は救世主の生誕を祝う祝日だ。
教会では礼拝が行われているが、それ以外は特別な日でもない。
「ご主人様の命令ですから」
「……命令じゃないんだけど。まあ、いいか」
ご主人様はどこか煮え切らない様子で、私たちは街へ出た。
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向かったのは服飾店だった。
貴族や富裕層が利用する、高級店。
「これはこれは領主様。お久しぶりですな」
「彼女に服を仕立ててほしい」
ご主人様は店主に耳打ちする。
「なるほど……承知しました。閣下も隅に置けませんな」
「じゃあ、エルザ。後で」
「……?」
私の理解が追いつかないまま、店の者に導かれ、採寸され、ドレスを着せられた。
晩餐会用の、動きにくい服装。
「どうですかな?」
「似合うよ。エルザ」
「……潜入には不向きです。行動制限が大きいと思いますが」
沈黙。
「いや、そういう話じゃなくて……アクセサリーも選ぼう」
宝飾品が並べられる。
装飾は好ましくない。
いざという時の妨げになる。
私は邪魔にならなそうなチョーカータイプの首飾りを選んだ。
「いいね。よく似合う」
ご主人様は、珍しく上機嫌だった。
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その後、街でも屈指の高級レストランに入った。
会話は途切れない。
主に、ご主人様が語る。前世の世界の話。魔法のない世界。科学という概念。日本という国。
そして、今日は特別な日なのだという話。
「前世では、ちょっとしたイベントでね」
赤と緑で飾られた箱が差し出された。
「開けてみて」
中にはブレスレットがあった。
「即死攻撃無効の加護が付いてる。エルザ、つけてみてよ」
「……ありがとうございます」
装備品の支給のために、この店を選んだのだろうか?
「お揃いで買ったんだ」
ご主人様は、自分の手首を示した。
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店を出て、夜の街を歩く。
「一曲どうだい?」
吟遊詩人が声をかけてくる。
「お願いするよ」
♪
夜の石畳に 影がふたつ
歩幅は違えど 行き先はひとつ
名も告げぬふたりよ
今宵は歌が証人になろう
♪
ご主人様は満足そうにチップを渡した。
しばらく、無言で歩く。
「……エルザ。
これからも、僕の隣にいてほしい」
意味は理解できた。
「もちろんです。
……ご主人様にお仕えします」
「……そうじゃなくて……」
私は視線を逸らす。
「ご主人様。雪が降ってきました。戻りましょう」
私は、天候を理由にした。
今の私にはこう言う以外の選択肢はなかった。
これでいい。
ご主人様の気持ちは、わかっている。
だが、それに応えることはできない。
ご主人様は大貴族だ。
私が隣に立つ理由は、最初から考えられない。
私は隠密。
影に立つ女だ。
もし、あの言葉に別の返答をしていたら……
そう考えてしまった時点で、
今夜はもう冷静ではなかった。
私はエルザ。ハインリヒ様を陰から支えることこそ私が存在する理由なのだ。
こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。
是非是非感想など聞かせてください♪
いろんな人に読んで欲しいので⭐️評価などいただけると嬉しいです!




