第66話後編 アイドルは破壊を願う
今回はシリアス回です
そして胸糞回です
私は教皇グレゴリオ。
地上における神の代理人にして、この教会で最も無力な男だ。
実権は、最初から私にはなかった。
教皇庁を動かしているのは、ロドリコ首席枢機卿。
人々は彼を「影の教皇」と呼ぶ。
ロドリコには信仰心などない。
信じているのは、神ではなく権力と、金。そして人の弱さだけだ。
ミサは商品になる。
謁見は希少価値を持つ。
それに気づいた彼は人々の信仰心を金銭や権力に変えている。
私は、その事実を知っている。
そして黙認してきた。
ーーーー
私は神学者だった。
今も、そうでありたいと思っている。
神の教えは本来、金銭でやりとりするものでも、地位で序列化されるものでもない。
だが、この教会はどうだ。
聖職は売られ、
信仰は値踏みされ、
神は教会という名の箱に閉じ込められている。
私は、その教会の頂点に立たされた。
ーアイドルー
アイドルには偶像という意味もある。
崇拝されるが、自分からは語らない存在。
それが今の私だ。
ーーーー
私は、自分の神学書を書いた。
『神学大全』。
破壊のためのくびきだ。
今、民衆は聖職者が語る神の言葉でしか信仰に触れられない。だが、民衆が神の言葉に直接触れられるなら?
聖職者という媒介は不要になる。
それは、教会という存在の否定だ。
私は分かっていた。
神学書を民衆が手にすれば教会は必ず壊れる。
だからこそ、
私は自らの手で神学大全を売り込みたいのだ。
ーーーー
「聖下の神学書を、広めたいと?」
ロドリコは困惑していた。
「ええ。私は神の教えを広めるために聖職者になったのですから……」
「……なるほど」
偶像が余計なことを言い出したとでも思っているのだろうか。
「聖下。本の出版の様な瑣末なことは、我々にお任せください」
違う。それでは意味がない。
運よく、出版業が盛んな帝国の侯爵と面会する機会を得た。
そして、私は告げる。
“破門を撤回したいのであれば、神学大全をひろめてほしい”と。
面会が終わり、枢機卿に小言を言われる。
「聖下。勝手なことをされては困りますな」
「ロドリコ枢機卿。私は神学大全が売れるならば退位しても構わない」
その言葉にロドリコの動きは止まった。
しばらく何やら考え込んだ後に言葉を繋ぐ。
「そこまでのお覚悟ですか。侯爵に販売する方法を考えさせましょう」
ロドリコは自分が教皇になるつもりなのだろう。急に協力的な態度になった。
こうして、バームベルク侯爵との販売会議を行うこととなった。
ーーーー
教皇庁会議室。
バームベルク侯爵の従者。エルザという女が、
淡々と計画を説明していた。
漫画化。
チケットとの抱き合わせ。
分冊販売。
神学検定。
完璧だ。
「検定試験は実に良い」
ロドリコが即座に口を開く。
「誰が“正しく理解しているか”を、我々が決められる」
私は黙っていた。
「検定試験問題作成委員会を設けましょう。
もちろん、私が委員長を務めます」
彼は分かっている。
この検定は、理解を測るものではない。
ロドリコへの従順さを測る装置だ。
敵対派閥は落ち、教会はロドリコの一派で要職が占められるだろう。
そして、必ずこう言われる。
教会は腐敗した、と。
それでいい。
腐敗が可視化された瞬間から、破壊は始まる。
民衆は本を手にする。
最初は、絵や漫画だろう。
だが、聖職者の言葉ではなく、直に神の教えに触れることが重要なのだ。
やがて、
「なぜ聖職者が必要なのか」
という疑問に行き着く。
それだけで十分だ。
私は改革者ではない。
救世主でもない。
私は神の教えに忠実な新しい神の家を、もう一度建てたい。
そのためには、今の腐った家は邪魔なのだ。
そう。腐った教会を更地にするのが私の役目だ。
ーーーー
夜。私は祈る。
神よ。
この腐敗した教会の今があなたの意志に沿うものなら、どうか生き延びさせてください。
もし違うのなら……どうか、一度完全に壊してください。
私は教皇グレゴリオ。
教会の破壊を神に願った最初の教皇だ。
こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。
是非是非感想など聞かせてください♪
いろんな人に読んで欲しいので⭐️評価などいただけると嬉しいです!




