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第66話 エルザのマーケティング講座

1話完結型なので気楽に読んでください!


◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)

屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。


●エルザ

アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。


教皇が書いた神学書

その名も『神学大全』。


厚さは辞書並み。

内容は難解。

使われている言語は、今や聖職者と一部の貴族しか読めない古代帝国語。


そして、この本を一般民衆に売り切ることが、僕たちが破門を免れるための条件だった。


今、僕たちは教皇宮殿にいる。

名目上は「協力要請」だが、実質は軟禁である。


「……これ、売れると思う?」


分厚い本を前に、思わず本音が漏れた。


「思えません」


エルザは即答だった。

一切の迷いがなかった。


「だよねぇ……」


「ですが、売らなければなりません」


「それは分かってるけどさ。分かってるけど……これは無理だよ。誰が読むの?」


「その点について、分析してきました」


エルザは懐から一枚の紙を取り出した。


『神学大全・販売不振要因分析』


……タイトルからして怖い。


「隠密任務では、対象の構造を把握するのが基本ですから」


さらっと言う。

でも僕が困ってる時に真剣に一緒に考えてくれる。そんなところがスキ。


エルザのレポートに目を通す。


・使用言語:古代帝国語

・一般民衆の識字率:低

・実用性:ほぼ皆無

・よって庶民の購入動機ゼロ


「そもそも読めない、と」


「はい。読めない本は、理解されません」


「理解以前の問題だね」


「また、内容も生活と乖離しています。

『針の先で天使は踊れるか』など、神学理論の話は庶民にとっては意味不明です」


「まあ……こんな議論を聖職者の連中はずっとやってるのか……」


「結論として、この本は“そのままでは”売れません」


「だよね」


「従って、価値の再定義と、対象の再設計が必要です」


……完全にコンサルの言い回しだ。


「……要するに、売り方を全部変えるってことだよね?」


うなずくエルザ。


『もしも異世界にマーケティング理論を持ち込んだら?』

なんかこんなタイトルの本を作れそう


よし!中世的価値観が支配するこの世界に、

現代経営学をぶち込んでやるとしよう!


ーーーー


教皇庁・会議室


「やあ、侯爵。

どうですかな? 我が『神学大全』を民に広める妙案はありますか?」


教皇が穏やかな笑みを向けてくる。ていうか、これが本気で売れると思ってるのか?


「一つだけ確認させてください。

聖下の目的は“神の教えを民衆に理解してもらうこと”でよろしいですね?」


「ええ。形式が多少変わっても構いません」


「では、提案があります。エルザ、お願いします」


扉が開いた。


現れたのは、眼鏡をかけ、タイトなビジネススーツに身を包んだエルザだった。

手には、なぜか指し棒。


……なぜその格好?


「まず結論から申し上げます」


エルザは淡々と告げた。


「この本には、売れる要素がありません」


「失礼ではないか!」


ロドリコ首席枢機卿が声を荒げる。


「事実です。民衆は文字を読めず、読めたとしても内容が生活に結びつきません。内容が良くても買い手にとって、その価値が理解されなければ意味がありません」


「ぐ……」


反論が出ない。

聖職者たちは、皆うすうす分かっていたのだろう。気づけよ。


「そこで、司祭の皆さんに協力してもらい、庶民の告解内容でどんなものが多いかアンケートを集計しました」


合図とともに、ゴッツが大きなパネルを運び込んだ。


「……人生相談ばかりだな」


「はい。罪の告白というより、悩みです。

夫婦関係、家族問題、将来への不安。

生活に根差した悩みこそが、民衆の関心事です」


うん?告解内容って秘密じゃないの?そこはいいのか?


「ライト層へのアプローチですが、文字が読めない大衆には、絵を使います」


配られたのは、漫画版・神学大全。


夫婦喧嘩を仲裁する神。

嫁姑の争いに介入する神。

浮気した夫を叱る神。


家庭問題を解決する神……万能すぎない?


「神の教えを、生活に溶け込ませます」


「……いいですね!」


教皇の目が輝いた。


(これ、レディコミ専門のディアブロ堂書店だよね)

(はい。あそこが最適でした)


BLにならなくて本当に良かった。

神のBL本なんか作ったら破門ではなく即火炙りだよ。


ーーーー


「ミドル層へのアプローチとしては、本と体験を結びつけます」


「体験?」


「書籍に、読者限定ミサへの参加チケットを付けます」


「なるほど、抱き合わせですな」


「特別感が、価値になります」


なぜか全員が納得している。


ーーーー


「ヘビー層へのアプローチですが、試験制度を作ります」


「試験?」


「神学検定を実施します。理解度に応じてランクづけします」


会議室がざわついた。


「出題範囲は?」


「聖下の『神学大全』です」


一瞬の沈黙。


ロドリコが口元を歪めた。


「聖職者の昇格条件にも使えますな」


「試験対策の参考書なども出版すれば関連書籍も売れます」


……誰も止めないな。


ーーーー


「最後に、庶民にも手が届くようにするための価格戦略ですが、価格は下げません」


「では?」


「分冊にします。

一年かけて、毎週一冊ずつ販売します」


「継続的に収益が……!」


ロドリコの目が輝いた。


「ですが、この方法では途中離脱を防ぐ工夫も必要です。創刊号だけ買うという層も出ることが予想されます」


「定期購読を止めると地獄の業火に焼かれるという警告文は」


「よろしいかと」


いや、ダメでしょ。


ーーーー


こうして、教皇庁は出版事業に本格参入した。


神学書は売れ、

検定は流行り、

ミサの席には序列が生まれた。


ただ一人、

清貧を旨とする修道士が、

最前列を一瞥して静かに席を立った。


「……神は、定期購読ではない」


その呟きは、

誰にも届かなかった。


だがそれが宗教改革という騒乱の始まりだったのを、このときは誰も気づいていなかった。


こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。

是非是非感想など聞かせてください♪


いろんな人に読んで欲しいので⭐️評価などいただけると嬉しいです!

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