第65話 礼拝とパパ活と握手券
1話完結型なので気楽に読んでください!
◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)
屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。
●エルザ
アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。
前回から旅に同行することになったマチルダ女伯が統治する街にいた。
「なんか、領民の暮らしは質素ですが表情が明るいですね」
「はい。私の領民は新人深いので、喜んで教会に寄付をします。神への信仰に捧げているので生活に不満などありません」
正直、不気味だ。暮らしは他所よりも貧しい感じがするのに、領民が妙にイキイキしている。
「マチルダ様!聖都に行かれるんですか?」
「はい。その際には教皇様にも寄付を……」
「では、これを是非!」
「オラも!」
「私も!」
領民達がこぞってけ献金を申し出る。
どこからともなく現れた女伯の家来が群衆を整理する。
「献金額に応じて記念品を配りますよ。今日はイラストカードの他に、マチルダ様の肖像タペストリー、キーホルダー、そして何と高額献金者にはマチルダ様が汗を拭いたハンカチ、履いていた靴下もあります!さらに高額だとサインを入れてもらえます!」
「うおおおおお!」
「はーい。最後尾はこちらでーす」
運営……じゃなかった
家臣の案内に領民が興奮する。
なんだこれ?どっかの地下アイドルの物販か?
そしてあっという間に大金が集まった。
「みなさん。ありがとうございます。今日、寄付をしてくださった方は後日、お茶会にお呼びしますわ」
「うおおおお!」
お茶会という言葉に領民は大興奮しているが、お茶会とはライブチケットだろうか?
それにしても誰も疑問に思わないなんて。
僕は気になったので、マチルダ女伯のステータスを覗き見る。
職業:領主
スキル:カリスマ
なるほど。カリスマで統治しているのか。どう見ても貧しい暮らしなのに領民が幸せそうで不気味な感じはこのカリスマのおかげなんだな。
ついでに何人かの領民のステータスも見てみる。
特徴:狂信者(洗脳済み)
このマチルダ女伯。なんて恐ろしい女なんだ!
ーーーー
旅は順調だった。そして僕らは無事に聖都に到着した。
「大司教。これからどうすればいいのかな?」
「侯爵殿。教皇聖下のミサは明日の午後からです。それまでは聖都にある教会を回ると良いでしょう」
なるほど。一応巡礼だもんな。
メジャーな教会は混んでいたので、少しマイナーな教会に行ってみる。
「ここは……聖ピアロッピ教会。取りにくいチケットが抽選で取りやすくなる加護を与えてくれる守護聖人にちなむ。だって」
「……」
一同、言葉を失う。
「ピアロッピ……確かにチケット取れそうだけど、この世界で必要になる時あるか?まあお参りしようか……」
こんな感じで空いていそうな教会を何ヶ所か回ったが、どれも微妙なご利益のようだ。
ーーーー
その夜。宿で食事をとる時に旅のメンバーで話をする。
「マチルダ女伯は教皇様の熱烈な信奉者だと聞いたけど、会ったことは?」
教皇がどんな人物か知っておきたいと思い、僕はマチルダに聞いてみた。
「グレゴリオ教皇様は、素晴らしい方です。まさにこの世界に降誕した神の代理人。あの方が記した『神学大全』は神の教義の新解釈を開いたもの。この新しい教えの素晴らしさを世界に伝えなければ!そもそもバームベルクで出版したのにちっとも売れないのは……」
あ、これ長くなるやつだ。
「大司教は知ってる?」
「実はよく知らんのです。まだ若いらしいですが、大学では神学の理論を極めたとか。女伯が言ってた『神学大全』は私も読みましたが、確かに素晴らしいですな。だが内容は難解だから民衆には受け入れられないでしょう」
なるほど。学者肌の人物かな?
「助祭という聖職者としては低い地位ながら、なかなか決まらない教皇選挙で急遽名前が上がって満場一致で決まったらしいです。これもグレゴリオ教皇のエピソードですな」
「助祭って、聖職者としても見習いじゃん」
「はい。ですが相当なカリスマという評判です。教皇庁の悪化する財政も反対派を説き伏せて立て直したらしいですぞ」
ふーん。カリスマがあって中々の手腕ということか。
「ご主人様。それに関して気になる情報が」
エルザが追加情報を語る。
「なんでも、ミサでの祝福と引き換えに免罪符なるチケットを販売しています」
「えっ免罪符?」
嫌な予感しかしない。
「はい。そして教皇に拝謁するためにも免罪符を購入しないといけないそうです」
「なんか嫌だな。それ」
明日は免罪符を買うところから始まるのかな。免罪符ね。トラブルの予感しかしない。
「……ということです!バームベルク侯爵!聞いてましたか?」
しまった。すっかりマチルダ女伯のことを忘れてた。
ーーーー
次の日。教皇宮殿の礼拝堂前。
僕は朝から並んでいた。
マチルダ女伯は別行動するといい、どっかに行ってしまった。
「ミサ用の免罪符はこちらでーす」
教皇に面会するためにはミサに参加しなければいけないらしい。免罪符ってそういうものなの?
「こちらミサの免罪符の料金表でーす」
「SS席、S席、A席……なにこれ?」
ご利益に差が出るんだろうか?値段がずいぶんと違うぞ。祝福も金次第か……世知辛いなぁ。
よくわからないので、とりあえずA席の免罪符を買って来た。
礼拝堂に案内される。礼拝堂の後ろの方だ。はるか前方に教皇の姿が見える。
「ご主人様。あれはマチルダ女伯では?」
「本当だ。教皇に近い席だな。SS席かな?」
前列の方は教皇から個別に祭具を振りかざし、祝福の儀式を受けている。A席はまとめて1回で行われた。
「露骨に差があるな……」
「まあまあ。そんなものですよ」
大司教。そういえばあんたも金で態度を変えるタイプだったな。
続いて、ようやく面会だ。
「拝謁希望者はこちらで免罪符を購入ください」
運営……じゃなかった。教皇庁の役人に促されて購入の列に並ぶ。
券を1枚買うだけだろう?結構時間かかるな。
ようやく順番が回ってきた。
「拝謁の免罪符ですね。何枚必要ですか?」
「人数分必要ですか?」
「グループでまとめて接見することも可能ですよ」
何枚ってどういう意味だろうか?
「1枚でもいいですか?」
「もちろんです。教皇様は寛大ですから」
運営の人がにっこりと笑顔で返す。
僕はシステムが理解できないまま免罪符を1枚握りしめて列に並ぶ。
僕の後ろはマチルダ女伯だった。
「女伯も教皇様にお会いになるのですね?」
「もちろんです!そのために来たのですから!」
鼻息が荒い。握りしめているのは免罪符は束だな。
「女伯。それは……?」
「免罪符ですわ。信仰心を表すために複数買うものですわよ。侯爵は免罪符は1枚しか買ってないのですか?」
「はい。そうですが、何か?」
「1枚では何もできませんわよ」
意味がわからない。
「ご主人様。色々と調べましたが、最近、聖都では教皇に対する推し活を『パパ活』と呼ぶそうです」
「なにそれ?『パパ活』って……」
教皇は英語で通称パパって呼ぶけどさぁ……。パパ活って。なんか悪意あるような呼び方だなぁ。お願い聞いてくれるのは金額次第ってことかな?そこは前世も異世界もパパ活という意味は変わらないのか。
なんだろうか、このモヤモヤした感じは。
僕の番がやってきた。
「遠路、よくぞ来られた」
パパこと教皇が語りかける。
「教皇聖下。初めてお目にかかります。私は帝国のバームベルク……」
「はーい時間でーす」
運営が間に入ってきた。
「えっ?」
「ですから時間でーす。終了ですよー」
僕らは運営に促されるまま退出させられた。
ーーーー
「あのーすみません。ここのシステムを教えてくれませんか……?」
なんか事情に詳しそうな商人に尋ねる。
「あんた、新規さん?1枚だけ買ったんだろ?何もできなかったろ?」
「はい。そうなんです」
「1枚で15秒教皇様に会えるんだよ。俺らみたいな古参は何を喋るか、どんな言葉が返ってくるか綿密にシミュレーションしてから免罪符を買うんだよな」
周りでウンウンとうなづく古参達。ていうか、なにその握手券システム。
「まあ、俺らは商売の保護をしてもらうために、商品に祝福の言葉をもらうだけだけど、熱心な信者は後先考えずに献金してるな。あんたの後ろに並んでた黒服の女貴族。あれなんか「パパ活」にハマりすぎて領地が貧乏だって噂だぜ。教皇への愛が強すぎてパパの愛人なんて呼ばれてるけどな」
マチルダ女伯。そんなところでも有名なんだ。あだ名がパパの愛人って……悪意を感じる。
「ところでみなさんは拝謁を終えたんですよね?なんで残ってるのですか?」
「あのパパの愛人、あの黒服の女伯爵がくると、もう一回チャンスが来るんだよ……」
まるで秘密の情報だと言わんばかりに教えてくれた。
しばらくしてマチルダ女伯が出てきた。と言っても鼻血を出して恍惚の表情で気絶した状態で担架に乗せられての強制退出だ。
「教皇聖下のご予定が空きましたので臨時の拝謁を行います。免罪符の番号が50721番の方いますか?」
なるほど。こういうシステムか。
少量購入でも最後に会えるかもしれないと希望を持たせる。よく考えられてるな、ここのパパ活システムは。
でも僕は一枚しか買ってないのに当たるわけない……と思ってたら当たってた!
「はい!」
おおー。会場がどよめく。
「あんたやるじゃねえか!1枚で引き当てるなんて!ついてるね!」
昨日、礼拝した聖ピアロッピ教会の加護かな?とにかくラッキーだ。
ーーーー
運営に案内されて再び接見の間に。
「私はバームベルク侯爵の……」
「あ、大丈夫ですよ。侯爵。プロフィールは先に読んでます」
教皇が気さくに話しかける。
「破門の撤回ですね。いいですよ。そのために巡礼してきたんですね」
「は、はい」
なんか調子狂うな。
「その代わりお願いがありまして」
「はあ」
「私の著書『神学大全』。あれ、苦労して書いたのですが、一向に売れません。それを一般向けに売れるようにしたいのです」
教皇の著書。聖職者向けにはいい内容だけど、一般向けじゃないって大司教が難解だと言っていたよな。
「それをやっていただけるなら破門は撤回しましょう。売れ筋ランキング上位に入るまで破門は仮撤回ということで」
「ええ〜!?」
こうして売れそうにない宗教本を一般向けに売り出さなければならないというミッションに挑むことになった。
こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。
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いろんな人に読んで欲しいので⭐️評価などいただけると嬉しいです!




