第60話 プロテインと修道院
1話完結型なので気楽に読んでください!
◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)
屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。
●エルザ
アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。
破門撤回してもらうため聖都まで旅をすることになった。
「私もついて行くんですか?」
トラブルの元となった大司教が不満そうに言ってきた。
「いやならいいですよ。異端審問所に悪魔と新婚ごっこしてる聖職者がいると報告するだけだから」
「いや!お供します!させてください!いやあ!歩くの大好きなんですよ!」
オッサン。手のひらクルックルだな。
メンバーは、バームベルク侯爵ハインリヒこと僕、メイドのエルザ、そして大司教のオッサン、そして騎士団から選抜した護衛としてゴッツ。ちなみにゴッツくんはゴリマッチョなのに、ずば抜けて素早いのだ。
この4人でバームベルクを旅立った。
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きちんとした巡礼の旅は立ち寄る場所が決まっている。教会、修道院、聖人ゆかりの場所……全部を丁寧に回るのは大変なので、宿泊場所に修道院などを選ぶようにするのだ。
帝国の国境を超えてしばらくして、山中で僕たちは狼のモンスターに囲まれていた。
「ご主人様。数が多すぎます」
「連中諦めないな」
「………」
「ひー」
大司教は素早く木の上に避難した。俊敏さなど無さそうな風貌なのに、必死だったら木にも登るのか。
ちなみにゴッツは無口なので、セリフはない。
さすがに疲労が溜まってきた頃。
「助太刀いたす!」
峠の向こう側から上半身半裸のマッチョな男たちがやってきた。下半身は軍装なので、騎士団か?
「ダブルバイセップス!」
「サイドチェスト!」
「アブドミナルアンドサイ!」
「ラットスプレット!」
一太刀ごとにポーズをきめ、大声で叫んでいる。
あっという間に半裸のマッチョ騎士団は狼たちを倒した。
「いやー。助かりました」
僕が礼を言う。
「いえいえ!巡礼者の安全を守るのが我らの務め!おきになさらず」
団長と思われる男が黒光りした顔に白い歯を見せながら笑顔で語りかける。
「団長。もう日が暮れそうです。今夜は我らがジムに泊まっていただいては?」
「そうだな。旅の方。麓の街まではまだ距離があるで、夜道になってしまうよければ、我らがジム。『聖バルク修道院』に泊まっていただいてはどうだろうか?」
「聖バルク修道院?申し訳ないのですが初めて聞きます」
「はっはっは!知られていないのも仕方がない。聖バルクというご当地聖人にちなんで設立された修道院なんだ。我々はそこの修道騎士団!」
いちいち暑苦しい話し方をするな。この騎士団長。
「侯爵閣下。ここは無理してでも次の町まで行きましょう。この修道院はやめておいた方が……」
大司教のオッサンがその修道院に行くのを嫌がる。いつもなら、「つかれたー。休みたい。ここで泊まりましょう」と言うのに。
まあ、冷静に考えれば夜道を歩くと、さっきみたいにモンスターに襲われる可能性があるので、ここは一泊した方が無難だ。
「大司教。一人で麓まで行くのと、一緒に修道院に宿を借りるのどっちがいい?」
「一緒に行きます……」
こうして僕たち一行は聖バルク修道院に一晩の宿を借りることにした。
ーーーー
修道院に着いた僕たちは修道院長に挨拶をする。
「修道騎士団に助けられました。ありがとうございます」
「いえいえ。巡礼者を保護するのは聖バルクの心に叶うこと。当たり前のことをしたまでです」
修道院長。年齢は高齢だが、すごい筋肉だ。修道着の上からでもわかる。
そしてうちの大司教のオッサンは後ろでコソコソしている。
「おや?そこにいるのはマルコじゃないか!」
修道院長が大司教を見つけて話しかける。
「フン。ノーキン!今夜はお前の修道院に世話になるぞ!」
「なんだ?大司教、知り合いなのか?」
僕が大司教に尋ねる。
「フン。ただの腐れ縁です」
「フォフォフォ。侯爵殿。このマルコとは神学校の同級生でな」
なるほど。見ていてわかった。大司教は修道院長がいるからここで宿を借りるのを嫌がっていたのか。
「まあ、まずは食事でおもてなししましょう。今日は麓の町から商人も来ておりましてな」
食堂に向かうときに院長が修道院の歴史を教えてくれた。
「かつて聖バルクは麓の町で神の教えを説いていました。ある日、モンスターが町を襲ったときに、聖バルクは勇敢に立ち向かい、拳一つで町を救ったのです」
「えっ!拳で?」
「はい。おのれの身体だけを頼りに戦ったと伝えられています。ところがバルクの肉体を危険視した時の権力者はバルクを迫害し、信仰を禁止しました」
「まあ、ありがちな話ですね」
「そこでバルクと信者たちは、権力者達と拳で語り合ったそうです」
「えっ?」
「そのため、神の教えの素晴らしさに目覚めた権力者達はこの修道院の設立を許可し、以来この聖バルク修道院は信仰厚き巡礼者の保護に務めているのです」
「それって町から厄介払いされたんじゃ?」
「ご主人様。それを言ってはいけません」
しかしすごいな。なんだ?この脳筋修道院は?僕はなんだか呆れるというか不思議な気持ちになった。
食堂の扉を開くとマッチョ達が出迎える。
「ようこそ!バルクキッチンスタジアムへ!」
え?何?キッチンスタジアムって。
「娯楽が少ない修道院ですからな。料理をライブで楽しもうと言う趣向です」
「な、なるほど」
修道院長の説明に納得した。
「その前にもう一人の客人をご紹介しましょう。こちらの女性は麓の町で商人をしている方ですじゃ。いつも修道院の特産品を買ってくれたり、必需品を売りにきてくれてましてな」
「まあ、バームベルクのかたなんですか?それではあの有名なBL作家のフー・ジョシ先生がいらっしゃる町ですね!?」
「ええ。先生ともお会いしたことありますよ」
「まあ!素晴らしい!いつかお会いしたいですわ」
なるほど。そう言う趣味だからマッチョ修道院の出入り商人をやってるのか。この女商人も癖が強そうだな。
そんなことを思っていたら、太鼓が盛大に鳴らされる。
「さあ!料理が始まりますぞ!」
トントントン
「ダブルバイセップス!」
グツグツグツ
「サイドチェスト!」
ジュー
「アブドミナルアンドサイ!」
ザバー
「ラットスプレット!」
半裸のマッチョ達が料理をしている。いちいちポーズを決めるのはルールなのか?フライパンの上でポーズをとった時は体に塗ったオイルで焼くのかと思ったが普通の油を引いていた。さすがに体に塗ったオイルで料理したものは食べたくない。
「さあ!できましたぞ」
「えっと……何これ?」
「バルク修道院名物タンパク質尽くしです」
騎士団長が黒光りした顔に白い歯を輝かせて自慢げに言う。
しかし、料理の内容は蒸した鳥のササミ、蒸したブロッコリー、それにゆで卵の3種類だけ。
「さっき、焼いたり煮たりしてませんでしたっけ?」
「演出なので関係ありません!」
「え?」
「さっきのは単なるショーですじゃ」
ライブで料理とは一体?
「そ、それじゃいただこうかな。うん」
モグモグ。思った通り味がしない。とにかく淡白だ。舌が肥えてる大司教は泣きそうな顔をしている。なるほど。メシマズだから来たくなかったんだな。
「今日は新しい物を持って来たので試してください」
女商人が何やら牛乳みたいな物を配る。なんだか怪しげな飲み物。
「むん!」
飲み干した修道士達は上半身半裸になってポージングしている。
何が起きているんだ?
一応、念のため鑑定する。
“プロテイン(改):依存性あり。筋肉をつけるのに効果的な補助食品。女商人調合の秘薬により上半身を見せたがる副作用あり”
「だめだ!飲むな!」
と叫んだが、すでにゴッツと大司教は飲み干していた。あ、エルザは飲んでくれなかった。
「遅かったか」
「ムン!」
「はあ!」
ゴッツと大司教がポージングしている。大司教よ。たるんだ体を誰に見せるんだよ。
「フォフォフォ。どうですかな?侯爵殿も。グイッと」
修道院長がプロテイン(混ぜ物入り)を勧めてくる。
「あ、お腹いっぱいなので……なあ!エルザ!」
「はい。私も十分に頂きましたので……」
「ふうむ。そうか。健全な肉体から健全な信仰心が育まれるんじゃぞ。鍛えられよ」
「はあ……」
こうして、奇妙な食事会は終わった。
ーーーー
来客用の談話室。エルザと話をする。
「エルザは、よくあの怪しげな飲み物に手を出さなかったね」
「初めての場所で無防備に口にする隠密はいません。まあ、魔法薬の匂いがしましたので」
「へえ。大したものだ」
改めてエルザの凄さに感心する。
「ところで、あの女商人だけど」
「はい。おそらくは自分の欲望のためだけだと思いますが、少々やりすぎだと思います」
「だよね。ちょっと考えを改めてもらわないと」
ーーーー
夜になり、皆が寝静まった頃。
僕とエルザは例のBL女商人の部屋の前にいた。
「ご主人様。今回はどうするのですか?」
「今回はこれだよ」
僕はそう言い、作家のフー・ジョシに似せたゴーストを召喚。ゴーストを女商人の枕元に立たせる。ゴーストが語る。
「……BLと筋肉を愛する敬虔な者よ。私はBLの女神……目覚めるのです……」
「こ、これは夢?」
女商人は目覚めて起き上がるが状況が理解できない。
「夢ではありません。私は筋肉とBLを司る女神。今から重要なことを託します。その教えを守り、BL信者として過ごすのです……」
「は、はい!」
「筋肉は寒さに弱いのです。よって上半身半裸になる副作用はダメです。見たい気持ちはわかります。でも、マッチョが風邪引くと筋肉が落ちるのです。いいですか、冬は暖かくして過ごさせなさい……」
ゴーストはそう言い残して姿を消した。
「さて、明日の飲み物がどうなってるかな?」
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翌朝の朝食。例によって味のない淡白なタンパク質料理の後にプロテインが配られた。
「こ、これは!?」
飲み終えた修道士達は上半身半裸になってポージングしている。
「ご主人様、結局脱いでますよ?」
「警告が聞かなかったかな?」
恐る恐る修道士に聞いてみる。
「あのーなんで脱いでるんですか?」
修道士がポーズをしながら語る。
「体が熱い!だから脱いでいるのだ!」
女商人を見るとヨダレを垂らしながら説明している。
「冬は風邪予防に暖かくなる成分を入れました」
結局、脱ぐのね。
「……なんかもうね。好きにして」
こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。
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