表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/120

第8話 青春山賊団と甘酸っぱい女首領

◾️ディアブロ

屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。


●エルザ

アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。


「山賊が出るのです...」

警備隊長の報告を聞いた僕は、思わず聞き返した。


「……山賊?」

「はい。どうも隣のディアブロ伯爵領を本拠地にしているらしく、越境してきて街道で頻繁に襲撃が起きています」


なるほど。納得である。

表の僕――善良侯爵ハインリヒ・フォン・バームベルクの領地は、治安対策ばっちり。

一方、裏の顔――悪魔伯爵ディアブロの領地はというと……そりゃもう放置プレイ。だって住民ゼロの無人領だし。治安もへったくれもない。


「それは困りましたね。山賊は強いのですか?」

「なかなか手強いです。特に首領の女はカリスマがあり、手下を――」


――うん!?

いま、隊長さらっと言ったよね?首領が女?


なんとかしてディアブロ邸にお招きできないかな〜、なんて邪なプランニングが脳内で急加速する。


「……というわけでして。あの、侯爵閣下? お聞きになってますか?」

やば、聞いてなかった。あとでエルザに確認しよ。


「わかりました。私の方でも対応策を考えてみましょう」


治安対策会議が終わり、僕はそそくさと自室に戻った。


「エルザさん。山賊の首領が女だってこと以外、正直なにも聞いてなかった」


「やっぱり……」

エルザは深いため息をひとつ。

「そう思って、警備隊長から報告書をもらってきました」


「さっすが〜。できるメイドは違うな」

「表の顔をしている時くらい、徹底してください」

「は〜い」


報告書をめくる。なるほど、境界付近での襲撃。治安部隊が越境できないのを逆手に取ってるわけか。

ふむふむ、元々は別の場所で活動していた、と……。


「前の首領は討伐されて、今の首領はその恋人と」

「はい。後を恋人が継いだようです」


「で、その女首領は裕福な商家の生まれ?」

「そうらしいですね」


――なにそれ甘酸っぱい。

駆け落ちして山賊入り、その恋人の跡を継いで健気に手下どもを食わせてる。立派じゃないか。

「この間のバカップルに見せてやりたいな、この純愛」

「……はあ」

エルザは相変わらず同意しない。冷たい。


「まあいいや。女首領の身辺を直接探りに行こう。今回は僕も隠密するよ」

こうして僕とエルザは、山賊のアジトを目指すことになった。


ーーーー


さあ、隠密活動だ。

エルザはいつもの隠密用コスチュームでピシッと決めている。


僕もそれに倣って、全身黒のレオタードで出撃!

「どう?」


「……ダサいので着替えてください」

「ダメ?」

「ダメです」


――しょうがないので、普段着のまま出発することになった。


山賊のアジトは不明。だが僕にはチートスキル《探索》がある。ピコーン、と反応を辿っていくと……崖に囲まれた一軒家を発見。なるほど、こりゃ見つからないわけだ。


僕とエルザは崖の上に身を伏せ、下を覗き込む。

山賊たちはどうやら家の外で宴会をするらしい。せっせとキャンプファイヤーの準備中だ。


「ふーん。少人数だね」

「報告では、襲撃に出るのも首領を入れて五人が最大だそうです」

「じゃあ、ここにいるのが全員かな?」


――そこへ女首領、登場。

粗野な雰囲気をまとっているが……美人だ。社交界でドレスアップしててもおかしくないレベル。


「お前たち! よくやってくれた! 今回の仕事も上手くいったよ!」

「ヘイ!」

「ハンスも、山賊団が続いてると知ったら喜んでくれるだろうな!」

「ハンス団長は“自由”を教えてくれた人だ!」

「そうだ! 自由だ! 誰もあたいらを縛ることはできない!」

手下がギターを弾き、キャンプファイヤーを囲んでみんなで歌う。

なんだこの昭和の青春ドラマは?

挿絵(By みてみん)

しかし――いい笑顔だ。

女山賊ちゃんは恋人の遺志を継いで、仲間を食わせるために山賊稼業。健気で甘酸っぱい。


「ところで次のアジトですが……ディアブロ伯爵邸はどうでしょう? なんでも伯爵は一人暮らしらしいです」

「ボッチの伯爵様かい? いいじゃないか! 広い屋敷はアタイらがもらうよ! 野郎ども、明日は伯爵邸を襲撃だ!」


――来る! 青春山賊団が明日、僕の屋敷にやって来る!

ワクワクが止まらない。


ーーーー


甘酸っぱい女山賊ちゃんがやって来る。

その前に、屋敷のレベルチェックをしておかねばなるまい。


まずは罠から。

「……水鉄砲LV2」


ほう、今回は――お湯対応。しかも適温。


「ぬるま湯かよ!」

熱湯でも冷水でもない。リラックス効果あり。肌にも髪にも優しい。


続いてアイテム欄。

「……消臭剤?」

説明文:どんな匂いもバッチリ消臭。


「ってなんだよこれ!」

でも……今までアンロックされたものは、なんだかんだ役に立ってきたんだよな。


まあいい。ツッコミ入れても始まらない。

――とりあえず、迎撃戦だ!


「ご主人様。侵入者です」

エルザが静かに告げる。


モニター越しに確認すると――粗野な風貌の連中だが、動きは妙に統率されている。

もっとも、こちらは全てお見通しだ。


僕は正面の扉をわざと開け放った。


「ふはははは! 我が名は悪魔伯爵ディアブロだ! よくぞ我が屋敷に参った、歓迎しよう!」


「フン、噂のボッチ伯爵か。いいじゃないか、この屋敷、大人しく渡しな!」


「奥の部屋に鍵がある。それを取れたら、お前たちにこの屋敷をくれてやろう!」


「その言葉、覚えておけよ! 行くよ、野郎ども!」

女山賊の号令で、手下たちが一斉に屋敷の奥へ突撃していく。


――そこからは恒例のディアブロ邸名物。


まずはタライ攻撃。命中率は前より上がった!……が、落ちてくるタライをキャッチされた。

「……ノーダメージって、わかってるんですから」

エルザが呆れ顔で突っ込む。


続いてスライム。

「ギャッ」

一撃で蒸発した。


水鉄砲LV1。

びしょっ。

「……ただ濡れただけだね」


さらにゴースト。

「うらめしや〜」

……無反応。


「なかなか手強いな」

「効かないのは想像できましたけど」

エルザの冷たいツッコミが突き刺さる。


次の部屋のギミックは、ちょっと凝っている。


「四つのスイッチを同時に押せば開く?」

女山賊が扉に貼られた説明書きを読み上げた。


この部屋は、四隅のスイッチを同時に踏まないと正面の扉が開かない仕組みだ。


「姐さん!ここは俺たちが押しますから、先に行ってください!」

「……そうかい。じゃあ行ってくるよ」


……いいなあ。青春かよ。いちいち絆のドラマがあるんだよな、この山賊団。


四人の手下がスイッチを押すと扉が開き、甘酸っぱい女山賊が中に足を踏み入れる。


部屋の中央には――天井から吊るされた鍵。


「あれがこの屋敷の……?」


彼女が手を伸ばし、軽やかにジャンプした、その瞬間。


「きゃあっ!」


意外にも可愛らしい悲鳴とともに、女山賊の身体が宙に浮かぶ。

床に仕込んだ《反重力装置》が発動したのだ。ジャンプと同時に作動する罠。


そして、勢いのまま天井に――べちゃっ。

待ち構えていた《トリモチ》に絡め取られる。


ここで僕は、満を持して登場!


「ふはははは! 我が名はディアブロ! 悪魔伯爵ディアブロ……って、なんか臭い」


……女山賊しか考えられない。

すごい汗の匂いだ。酸っぱい。青春じゃなくて、リアル酸っぱい。


「ねえ? 風呂入ってる?」


「フン! 山賊にはね、風呂をキャンセルする自由もあるんだよ!」


……出た。風呂キャンセル界隈。まさか異世界で耳にするとは思わなかった。

“青春の甘酸っぱい女山賊”じゃなく“汗で酸っぱい女山賊”だったとは……!


ドカン!

そこへ手下どもが扉を破って乱入してきた。


「姐さん! 今助けます!」

四人の手下が同時にジャンプ。


――その瞬間。

反重力装置が作動し、まとめて天井のトリモチにペタリ。


「うっ!」

野郎の体臭が炸裂する。


僕とエルザは、思わず鼻をつまんだ。

「ほへはきふいな(これはキツいな)」

「ほひゅじんはま、へいのあいてふは?(ご主人様、例のアイテムは?)」


……そうか! 消臭剤!


シューーーー

空気が浄化され、ようやく呼吸可能に。


「チキショウ! 俺たちはどうなってもいい! 姐さんだけは……姐さんだけは見逃してくれ!」


……青春かよ。ちょっと感動してる場合じゃない。


「お前たちの生殺与奪は我が手にあるのだ!」


エルザさん!ちゃんと言えたよ生殺与奪!僕が高らかに叫んだ瞬間、エルザがスッと部屋の外へ。

……っておい! 匂いに耐えられなかったか。


「な、何をする気だい!?」

酸っぱい女山賊が吠える。


「お前たちへの罰はこれだ!」


――水鉄砲LV2発動!

適温のお湯が全員を洗い流す。


その後は、ゴーレム(万能型)部隊が登場。

美容師型、スタイリスト型……次々と髪を切り、髭を整え、ドレスアップ、メイクアップ。


しばらくすると、そこに立っていたのは――

ひとりの美しい姐御と、四人のイケメン。


「なんか変わったね。酸っぱい女山賊ちゃんは、元から素材がいいと思ってたけど」

「……驚きました」

匂いが消えて、エルザも戻ってきた。


「どうだ! お前たちにはオシャレを楽しむ自由を与えてやろう!」


……いや、絶対望んでないもの押しつけただけだよな。反発してこいよ。


「ありがとう、ボッチ伯爵!」

「うん?」


女山賊が頬を赤らめ、語り出す。

「アタイ、実家が厳しくてさ。礼儀作法にうるさいのが嫌で山賊になったんだ。でもファッションの楽しさを思い出したよ」

「俺はマナー教室の講師の家だった!」

「俺はダンス講師!」

「ハンスの兄貴も礼法の家元だって!」


……なるほど。礼儀作法アレルギーで山賊落ちした奴らだったのか。

ゴーレム《マナー講師タイプ》を用意しておけばよかったかな? まあいいや。


「う、うむ。これからはスタイリッシュなファッションを楽しむがいい」

自分でも何を言ってるのかわからない。


「ありがとう! ボッチ伯爵!」

「ボッチ伯爵は恩人だ!」


そう叫びながら、山賊たちは颯爽と帰っていった。


……で、残ったのは妙な感情。

「僕さ、前世でボッチだったから、面と向かって“ボッチ”って呼ばれて、さっきはちょっと凹んだんだ」


「……ボッチなんかじゃないですよ」


「ん?」


「……私がそばにいるじゃないですか」


エルザの小声。でも確かに聞こえた。


「聞こえなかった。もう一回!」

「ふふふ。ナイショです」


……なんだこの甘酸っぱい青春感。

敵は倒したはずなのに、心がやたら熱いんだが。

こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。

とても暇な方ですか?どうせ暇なら、ついでに感想など聞かせてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ