第59話 悪魔との契約はクーリングオフできますか?
1話完結型なので気楽に読んでください!
◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)
屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。
●エルザ
アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。
(12/4タイトル変更)
「破門ですか!?侯爵閣下が!?」
訪問してきた大司教の発言に、バームベルク家の執事が驚きを隠さない。
「はい。バームベルク領が退廃的だということで本日から30日後に破門すると教皇聖下は回勅(命令)を出されました」
この大司教。涼しい顔してとんでもないことを告げてきたな。
領主の僕が破門されると、領内の教会は機能しなくなる。婚姻・出生・葬儀……領民のありとあらゆるライフイベントに教会が関わっているのだ。領主の破門となると僕一人の話では済まない。
「理由を聞かせてもらえないだろうか?」
僕は冷静に話を聞き出そうとして尋ねる。
「よろしいでしょう。教皇庁はバームベルクが異端に寛容なことを問題視しています」
嘘だ。
確かにバームベルクは異端には寛容だが、それが本当の理由ではない。
理由は金。
大司教にとっては金蔓と思っていた人物から思ったように金を引き出すことができないのが不満なのだ。要は金を出さない僕に揺さぶりをかけてきているのだ。
「いくらですか?」
まどろっこしいのは苦手なので、大司教に金で解決することを持ちかける。
「はい?」
「ですから、大司教猊下の力で教皇聖下の回勅を撤回させてもらえるためには、おいくら必要ですか?」
「侯爵閣下。何か勘違いされておられますな。これは地上における神の代理人である教皇聖下の思召です。金で解決できるものではありません。とはいえ、私は閣下の側で閣下の信仰のありようを見てまいりました。これくらいの資金を頂ければ教皇庁に根回しをします」
大司教が提示してきた金額は今まで寄付の要請があった金額を大きく上回る金額。くそっ!金の亡者め!
「わかりました。近日中にお赦しをいただけるのに十分なものを用意しましょう。ただ、しばし家臣と相談する時間をください」
とりあえず、この場では即答せずに、一旦保留にした。
ーーーー
大司教が帰ってから、屋敷の中は紛糾した。
「大人しく金で解決するしかあるまい」
「それでは舐められる!おかわりが来るぞ!」
「皇帝に仲裁を求めるべきでは?」
「いっそ、帝国北部で流行り始めている新教に鞍替えしてはどうか?」
「ここは大司教を人質に聖都まで軍勢を率いて攻め込むべし!」
うーん。困った。終盤は軍事で解決派の意見がだんだんと強くなってきている。聖都まで攻め込むなんて面倒なことはしたくない。勝てるとは思うけど、下手すれば世界を敵に回しかねない。宗教戦争の火種がうちからなんてのは勘弁しれ欲しい。だから僕としては穏便に済ませたいのだが……
「とりあえず各自ゆっくり考えてみてください」
僕はそう宣言し、会議を終了した。
家臣団が出ていった会議室には僕とエルザだけが残っている。
「ねえ、エルザ。あの大司教どう思う?」
「おそらく、教皇の回勅というのは偽物だと思います」
「ええ!?そこから?」
「はい。ご主人様は少し疑った方がいいと思います。教会の連中にとっては文書の偽造なんて常套手段ですから」
「よりによって教皇の破門宣告を偽るんだよ。大司教もタダじゃ済まないんじゃないの?」
「まあ、あまり深く考えていないような気がしますが。いざとなったらシラをきるんじゃないでしょうか。受け取った回勅が偽物とは思いもよらなかったとか言って」
「うーん。そんな言い訳通じるのか?」
「ところで、教皇の破門宣告であれば、教皇の使者がいると思うのですが……使者はなんと?」
「あ」
エルザの指摘に気づかなかった。普通ならば教皇の使者が仰々しく告げるのに、ここにいる大司教が領主の破門を告げてきた時点で疑うべきだった。僕も家臣団も破門という言葉に動揺していたのだ。
さすが冷静なメイド。頼りになる。
「いずれにしろ不自然な点が多すぎます。大司教の近辺を探ってきます」
「エルザ。すまいなが、お願いするよ」
ーーーー
翌日。エルザが早速報告にきた。
「ご主人様。あの大司教、悪魔との繋がりがあります」
「えっ?なんか碌でもない連中とつるんでるのかなと思っていたけど、よりによって悪魔。聖職者が悪魔とお付き合いするのはまずいんじゃないの?」
「こちらをお聞きください」
「これは?」
「ウルバンが発明した録音魔道具だそうです。爆発する確率はかなり低いとのことで、今回、持参しました」
「あ、それでもやっぱり爆発するんだ……潜入中に爆発しなくてよかったよ」
魔道具から音声が聞こえる……
「マモン様。御指図どおり、領主に破門宣告をしてきました」
「ふふふ。大司教。あんたもワルだね。あんたの欲望に忠実なところ。ワタシにとってはご馳走な魂だよ」
「しかし……破門状が偽物だとバレないか心配でして……」
「何を言ってるんだい?ここで資金を貯めて枢機卿になるんだろ?」
「そうでした。そしてゆくゆくは教皇選挙に!」
「そのために、あの貯め込んでいるケチな領主から選挙資金を引っ張ろうじゃないか。お前の野望を一つ一つかなえてやるために契約したんじゃないか」
「はい。マモン様と契約してから、毎日が幸せです!」
「そうだろう。そうだろう? ワタシはお前の欲望を叶える手伝いをしてやる。そしてお前の成熟した欲望をいただく。一蓮托生ってやつさ」
「はい。この魂はマモン様に捧げます」
「ふふふ。お前を含めて何人もの人間と契約しているが、お前ほど美味そうな魂は初めてだよ」
ここで音声は終わっている。
「……何これ?」
「こういうことだそうです」
「謀略家とも噂されていた大司教にしては雑な計画だと思ったけど、こういうことか」
「このマモンは強欲を司る悪魔として有名です。かなり厄介な相手かと」
「しかし、悪魔、何もやってないよね。なんか見返りを受けてるのかな?そのくせ代償が魂ってだいぶ取引としては不平等じゃない?」
「悪魔との契約にツッコミを入れるのはご主人様くらいですね」
「そうかな?まあ今夜乗り込んでみるか」
ーーーー
夜の大聖堂は静かだ。大司教以外の人たちには眠り薬入りのご馳走を差し入れた。これでみんなぐっすりだ。
そこにディアブロスタイルの僕と隠密スタイルのエルザが乗り込む。
大司教の執務室の前。声が聞こえる。どうやら中ではマモンと大司教がイチャついているようだ。
「ふふふ。領主は早速お金を払うと言ってきたそうじゃないかい?」
「はい。これもマモン様のおかげです」
「そうだろうそうだろう。このワタシは大悪魔のマモン様だからねえ」
「はい。マモン様にこの身を捧げます」
「お前は聖職者だから結婚できないんだろう?魂をいただくまでの間はアタシが妻とか恋人になってあげるよ。ダーリン♡」
「ハニー♡」
なんだこの大司教。悪魔と新婚ごっこをしているのか?罪深いやつだな。もう呆れる……。
気を取りなおして扉を開ける。
「フハハハハ!お邪魔するぞ!バカップル!我が名は悪魔伯爵ディアブロだ!」
「なんだ!?お前は?大司教の部屋と知って入ってきたのか?」
大司教は動揺しながら乱入者を叱責する。
「マモン様!お願いします」
「フン!こんな人間!」
マモンは指先から閃光を僕に向けて放つ。しかし、念のため装備した魔法耐性強化アイテムが無効化した。
(あれ?大悪魔と聞いたから重装備できたけど大したことないのか?)
「それではこちらの番だな」
ディアブロ邸おでかけバッグから罠を取り出す。屋敷の罠やモンスターを取り出せるご都合アイテムだ。
「見ろ!巨大岩石だ」
バッグからどうやって出てきたのかはこの際問題ではない。
屋敷の罠である巨大岩石がマモンめがけて追いかける。
「ひー!」
マモンは悲鳴を上げて逃げ出している。岩石は自動追尾装置付きだ。もっとも近すぎると停止する安全機能がついているが、知らなければインパクトから必死で逃げる。しばらくはこのままでいいだろう。
「貴様にはこれだ!」
大司教に向けてゴーストを大量に召喚する。
「お前、金にうるさい割には契約書読んでないな?…」
「あの悪魔、お前に何をしてくれてるんだ?雑なコンサルしかしてないぞ…」
「エロい悪魔と新婚ごっこするだけで魂を捧げるのか?お前は安い魂だな…」
「あんなのと組んだってお前は枢機卿になれやしないぞ…」
「そもそもあの悪魔はマモンじゃないぞ…」
え?ゴースト、最後なんて言った?あの岩石と遊んでいる女悪魔はマモンじゃないの?
「ご主人様これを」
エルザが大司教の書棚から契約書を持ってきた。
「うん?よくみると、契約者の名前、マモンじゃないな?マモン(フランチャイズ135号)とあるが?」
「アタシは強欲の大悪魔、本家マモン様に名前を借りて活動しているフランチャイズ契約だから……」
岩石に追われながらマモン(FC加盟)はそう説明する。
なんだそれ?悪魔界も名前が重要なのか。
「大司教よ。お前が契約した悪魔は大したことなさそうだな。今ならバームベルクの法律でクーリングオフができるがどうする?」
「クーリングオフをお願いします!」
「ちょ、ちょっと!イチャイチャさせてあげたじゃないの!今更契約解除とかなしでしょ!」
「うるさい!こっちは大悪魔だと思ったから契約したんだぞ!」
淡々とクーリングオフの手続きを進める。色恋営業で捕まえた太客をとられそうなのだ。フランチャイズ悪魔も必死だ。
ーーーー
翌日、早速大司教がバームベルク邸にやって来た。
「侯爵閣下の破門撤回のため聖都に行きたいと思います。そのために旅費を…」
ここまで来て金か。
「えっと…ディアブロ伯爵から色々聞いたのですが?」
「え、あ、はい。ただで結構ですよ。もちろん」
大司教は昨日までの横柄な態度はどこへやら、おとなしくなっていた。
「その代わり一つ問題があります。実は教皇庁の文書管理者を買収してまして破門状自体は正規のものなのです」
「おい!どうしてくれるんだよ!」
「心配いりません。聖都まで巡礼すれば徳を積んだということですぐに撤回できます」
「それじゃあ聖都に行かないとダメなのか?」
大司教は無言で大きく頷く。
「はあ」
こうして聖地巡礼の旅に出ることになったのだった。
侯爵の破門まであと28日
こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。
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