第56話 バニーちゃん観察日記
◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)
屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。
●エルザ
アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。
「なにこれ?デカいニンジン」
僕はディアブロ邸に山積みになったニンジンを見て、エルザに尋ねた。
「領内に住んでいる魔女が取れすぎちゃったので、よければ食べてくださいということで、おすそ分けとして持ってきてくれました」
ディアブロ領は不毛の地だ。農業には全く向かないので住民はいない。魔女もマージョ草というここでしかとれない薬草がエリクサー(痔の治療用)の材料になるので、採集と研究のためにしばしば滞在しているのだ。
ちなみに、魔女はエリクサー(痔の治療用)の開発に功績があったと言うことで、今年の魔女オブザイヤーの最有力候補となったそうだ。なんでも、空飛ぶホウキにまたがる魔女の長年の悩みである痔の克服に多大な貢献があったことが評価されたとか。そのおかげで魔女のところには研究資金が集まって、怪しい魔法役の開発に勤しんでいるそうだ。
「しかし、普通のニンジンよりも明らかにデカいな。どうやって育てたんだろうか?ディアブロ領にはまともな植物は育たないんだけど」
「さあ?そこまでは聞いていませんでしたが、普通のニンジンでしょうから美味しくいただきましょう」
なんか嫌な予感がするんだけど。まあ少し普通より大きいだけで、人食いニンジンとかではなさそうだ。あまり気にしない方がいいのかな?そんなわけで今夜はニンジン尽くしのフルコースになった。
「おいしいな。これ」
「私が調理しましたので」
「も、もちろんエルザの料理だから美味しいんだけどね!」
なんだ?このやりとり。新婚カップルってこんな感じなのか?
「素材がいいのは間違いありません。これほどの食材は市場でもなかなか手に入りません」
「今度、魔女にどんな栽培方法だったのか聞いてみよう。うまくいけば領地の名産品になるかもしれないね」
そんな、普段通りのありきたりな日常だった。
ーーーー
夜になり、夜の灯りを消そうかという頃合いに、エルザが突然の来客を告げる。
「ご主人様。来客です。飢えていて食料を分けて欲しいそうです」
「敵では無さそうと言うことかな?」
「はい。大丈夫だと思います。ちなみにウサギの獣人です。ウサギ獣人はおとなしく、基本的に敵対行動は取らないので大丈夫かと思います」
バニーキター!ウサ耳の女子かな?
「うん。ちょっと様子を見にいくよ」
僕は客間でバニーちゃん、いや、ウサギ獣人と対面した。
「なんか、違う……」
小声でつぶやく。ウサ耳のエッチなバニーガールを想像していたけど、そこにいたのはウサギの顔をして体は人間のウサギ獣人が3人。服装はボロボロのローブを纏っていた。
まあ、ウサギ獣人ではあるし、ウサギ獣人なんだけど、想像と違っていた。
「助けていただきありがとうございます。その……できれば食料を分けてもらえれば嬉しいのですが……」
リーダーと思われるウサギ獣人が訪問の趣旨を告げる。
「食料だよね。君たちは何を食べるの?」
知らない種族だから、何をたべるのかわからない。
「私たちは草食ですので牧草があれば……馬の飼料で結構です」
結構ですって言われても、ディアブロ邸では馬を飼ってないからな。一応、貴族だから馬とか馬車とかよういしたほうがいいかな。
うーん。しかし、他にウサギが食べそうなものは……。あ、そういえば魔女からもらったあれがあった。
「じゃあ、ニンジンでも食べてよ」
「まあ!ニンジンなんてご馳走を!ありがとうございます」
彼女達にとってはニンジンはご馳走らしく、ウサギ獣人達は感謝していた。
「お客様。どのように料理すればいいでしょうか?」
エルザが調理方法を尋ねる。
「あ、大丈夫です。生でいただきます」
なんか思ったよりも獣だな。獣人だからかもしれないけど。ワイルドすぎるだろう。
例の魔女からもらったニンジンを彼女達に与える。
ボリボリボリボリ……
無心でウサギ獣人達は食べている。
こうしてみると本物のウサギみたいだ。体が人間だから奇妙なんだけど。
「フォーッ!!!」
「え?なになに?」
突然、ウサギ獣人達が奇声を上げる。
そしてウサギ獣人のウサギの顔が、溶けるように輪郭を変え、次の瞬間、まるで人間の美少女の顔に変形する。ただし、耳だけはそのままだ。
ローブの下から伸びた脚はやけに長く、
布が床に落ちるまでのわずかの間に、胸元に黒いレオタードが形成されていった。
なんと、人間の女性の顔に変わった。
そして、ボロボロのローブを脱ぎ捨てる。そこにはイメージ通りのバニーガールの姿。
ダンダンダンダン!
3人そろって足踏みを始めた。
「ちょ、ちょっと落ち着いて……」
僕はなだめに入るが、聞く耳を持とうとしない。
「ねえ、これ何?」
エルザに助けを求める。
「聞いたことがあります。ウサギは威嚇、警戒、そして不満を表すときに足を強く鳴らすらしいです」
※本当です
「え!?ご飯まで用意したのに、何が不満なんだよ!」
ていうか、前世の小学生の頃、ウサギ小屋の掃除で入った時に足をバンバンしていたのは僕のことを警戒していたのか……ウサギには好かれていたと思ってたのに……
そんな幼少の頃の思い出がトラウマに変貌した頃に足踏みを終えたバニーちゃん、いやウサギ獣人達は散り散りになって屋敷内を走り回る。バニー化した三人は、同時に腰を下ろし、相撲のシコのように足を鳴らす。
ドゥンドゥンッ! ドゥンドゥンッ!
「足バンバンするな!」
床板が震え、廊下にまで衝撃が走った。
エルザが「あ、来ますよ」とだけ言うと、三人は一斉に屋敷の中を猛ダッシュ。あっという間に見失った。
「きゃああ!旦那様!トイレじゃないところで……!」
幽霊執事が悲鳴をあげて滑り込んでくる。その場所に駆けつけるとウサギ獣人はすでにいない。
しかし、壁という壁に、スプレー状の液体の跡が散っていた。
「あ、これはナワバリのマーキングですね。スプレー状におしっこするので、大変なんですよ」
※実際にウサギがマーキングするのはオスだけです
「エルザ、詳しいね」
「私が通ってた隠密幼稚園でウサギを飼ってましたので」
隠密幼稚園。またさらっとパワーワードが出てきたけど、それどころじゃない。ウサギ獣人達を捕まえないと。
「ゴーレム、オーク!ウサギ獣人達を捕まえるのだ!」
ゴーレムとオークがウサギ獣人達を捕まえようと走り回る。しかし、すばしっこいウサギ獣人達を前に、動きの鈍いゴーレムもオークも歯が立たなかった。
脱兎の如くとは言ったものだ。本当にすばしっこい。
「ご主人様。ここは罠に誘導しましょう」
なるほど。そうするしかないか。
僕はウサギの逃げ道を塞いでいき、落とし穴のある部屋に誘導する。
「大人しくしろ!ウサギ達!」
僕は部屋の隅っこに追い詰めた。もう半歩下がれば落とし穴。じわりじわりと距離を詰めていく。
しかし、彼女達は僕たちの包囲網をスルりと抜け、背後に逃げ出す……。
と思われたが、そこにはあらかじめトリモチ床を用意しておいた。
バニー姿のウサギ獣人達がネバネバに囚われる。
「いやーん」
ウサギ獣人達は正気に戻ったようだ。だが、そんなことよりも僕の目はトリモチに捕まったウサギ達に行っていた。
「なんか、エッチだな!」
「そんなことより、どうするんですか?」
「久々の新アイテム!マジックハンドロボット(全自動タイプ)!これを使ってお尻ペンペンのお仕置きだ!」
「ご主人様。それはやめておいた方が……」
「ここまで屋敷で暴れられたんだ。ちょっとっくらいお仕置きしておかないと」
僕はエルザの制止を無視して、マジックハンドをトリモチの脇にセットした。そして、ウサギ達のお尻をマジックハンドがペンペンする。
「ウサ!ウサ!」
変な鳴き声だが、妙に色っぽい。何だこれ?
ウサギ達、発情してない?ちょっとコンプラ的にまずいかな?
「ご主人様。これ、本当によくないかもしれません」
「やっぱり?コンプラ的に問題?」
「コンプラもあるかもしれませんが、ウサギってお尻に刺激を与えるとダメなんです」
「え?」
よくみると、ウサギ獣人達の様子が変わった。なんかガルガルしている。そして妙に攻撃的な目線でこちらを睨んでいる。
「多分、妊娠したと勘違いしているんだと思います。お尻に刺激を与えると、その……交尾したと勘違いして、妊娠モードになるんです」
※本当です。これは偽妊娠と言って、メスのウサギはお尻を撫でられると想像妊娠します。ウサギさんを撫でるときは注意してくださいね。ちなみにウサギは年中繁殖期なので注意が必要です。
「早く言ってよ。でも、どうすればいい?」
「とりあえず時間をおくしかないと思います。しばらくは出産準備を始めますが、そのうち、妊娠していないことに気づくでしょう」
「じゃあ、しばらくこの部屋に放置するか……」
とりあえずウサギ獣人達を部屋に閉じ込めて一晩様子を見ることにした。ウサギ獣人達は絨毯を剥がして、出産準備のベッドを作っている。
「あ、本当にまずいやつか……」
ーーーー
一晩経つとウサギ獣人達は元のウサギ顔の獣人に戻っていた。バニーちゃんモードも偽妊娠も終わったみたいだ。
「昨夜はすみませんでした。ちょっとニンジンのエネルギーが強かったらしく、先祖帰りしちゃいました……」
先祖がえりで人間の顔になるんだ。どういう仕組みだ?
「ちょっとびっくりしたけど、良かった。ところで、旅の目的は?」
「あ、はい。スーパーキャロットというニンジンを探しています。栄養不足で病気がちな子どもが多いので。ひょっとしたら昨日いただいたニンジンがそうかも?」
「え、そんなものなのかな?」
僕はニンジンをスキルで鑑定する。
『スーパーキャロット。栄養満点。ウサギ獣人の必須栄養分が満点。ただし、過剰摂取すると大変』
これが原因か。
「まあ、持っていってもいいけど、気をつけてね」
こうして、ウサギ獣人達はニンジンを持って帰っていった。ウサギ獣人の村では栄養状態は改善したものの、ベビーブームもやってきたため、再び食糧不足に悩むのであった。
こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。
とても暇な方ですか?どうせ暇なら、ついでに感想など聞かせてください♪




