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第55話 悪女のプライド

◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)

屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。


●エルザ

アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。


西の王国にはやり手の宰相がいた。彼の名前はアルマン。小貴族の三男だったが、官僚の道を歩む。そして最高位である王国の宰相ともなった。


そんな宰相を支えるのは、国の内外に張り巡らされた密偵網。その一翼を担うのが、私、ミレディだ。


国王はまだ若い。そのため、前王妃、つまり母后が摂政となっているのだが、何かと宰相様と対立することが多い。いうなれば宰相閣下の政敵である。そのため、私が母后付きの侍女として送り込まれた。“母后の弱みを握れ”という命令を受けて。


母后は気難しい性格だった。とにかくわがままなのだ。そして気に入らないことがあると側近を怒鳴り散らす。側近達は辟易していて、侍女も頻繁に変わった。だが、私は母后にとりいるのがうまかった。

この手の人間はルール通りに接していればうまく付き合うことはできる。

でも だが しかし 

この3つは禁句だ。それが王宮ではなかなか難しいのだ。

側近達は「でも前例がございません」とか「しかし宰相閣下と相談しないと……」とすぐに母后を制しようとする。今までは夫である国王が抑止力になっていたが、それがない以上、母后はヒステリックに自分のわがままを主張し続ける。特に宰相が自分の希望を邪魔する障害だと思い込んで、政治的にも対立する様になった。完全に私怨だけど。


そんな時、母后はとあるパーティで外国の大使に目をつける。この大使はなかなかのイケメンで国内の貴族の娘にちょっかいを出す危険人物だ。


「ミレディ。あのイケメンの大使を私の私室に連れてきて」


要は愛人にしたいと言うことだろう。何を考えているんだ?この色ボケさんは。


「承知しました」


しかし母后は好みではないため大使に断られる可能性は高い。

だが、このスキャンダルはチャンスだ。

そう思った私は母后の失脚を狙うことにした。

方法は簡単だ。私は大使に変装し、母后の相手をすることにした。迫ってきたら眠らせた。

母后は大使に、正確には大使に変装した私に夢中になっていった。母后からのラブレターも結構な数になった。そして、私は母后に大使に貢ぐための原資として国庫の横領にも手を染めさせた。もちろん、私が積極的に手伝った。不正の書類にサインをさせるのだ。その際にこう囁く。

“王宮内では母后様に意見できるものなどおりませんわ”と。

貢物や横領した金? もちろん私がいただいたわ。パワハラババアを相手にした代償よ。これでも足りないくらいだわ。おかげで密偵をやめても郊外で農場を買えるくらいの財産にはなったけど。


私の報告と証拠を受けて、宰相様は不正と密通の証拠を国王に差し出した。さすがに国王も母親とはいえ、政治に介入している存在を快く思ってなかったのか、すぐに王宮の塔に幽閉するように命令した。


「ちょっと!離しなさいよ!私を誰だと思ってるの!?」

母后は衛兵に連行される時も喚いていた。


「侍女を連れて行きたいわ!ミレディ!あなた来てくれるわよね?」

母后は自分が世話係としてついてくる様に懇願する。

だが、私は宰相様の側に立ち冷たく言い放つ。


「残念ですが、次の仕事がございますので」


「ミレディ!謀ったな!」

醜く喚く母后を笑顔で見送った。

私は今まで母后に見せたことのない邪悪な笑みだっただろう。


こうして宰相様は政敵を排除して、国内での権力を確立した。私は功労者として宰相様から女性だけの密偵チームのリーダーを任せられることになったのだ。


ーーーー


「閣下。お呼びでしょうか」

私は宰相に呼ばれた。私以外にも密偵チームはいるはずなのだが、お互いその存在を知らない。全て宰相様から直接命令を受ける。


「うむ。ミレディか……」


相変わらず渋い声。

私は宰相様のような素敵なおじさまが好きなオジ専なのだ。


「帝国の後継者候補が変わった様だな」


「はい。アホの第1皇子が廃嫡され、聡明な第2皇子のカールが後継指名されたとのことです」


「そうか。では、第2皇子の元に潜入し、毒を与えよ」


「毒殺ですか?」


「いや、殺すな。殺して面倒な人物が後継候補に出て、帝国がまとまると面倒だ」


「弱らせよ……と」


閣下はニヤリと笑った。

「そうだ。帝国が不安定であれば、王国は安泰だ。皇帝の後継者に不安要素がありさえすれば良い」


「ハッ」


(ああ。愛しの宰相様……ミレディはあなた様のためならばどんな危険な任務でもやり遂げます……)

こうして私たちは帝国に潜入することになった。


ーーーー


私は第2皇子カールの侍女として潜入し、毒を与えた。王国秘伝の毒は帝国の侍医にもバレていない。伝染病の病後がよろしくないということで結論づいていた。ヤブ医者のおかげで順調だ。この毒をあと1週間も与え続ければ症状が固定化する。後遺症で病弱なままだ。そうすればミッションは終了。愛しの宰相様が待つ王国へ帰還ができる。そう考えていた頃だった。


だが、このタイミングで思わぬことに出くわす。

第2皇子がディアブロ領で療養すると言うのだ。

悪魔伯爵ディアブロ。奴に関わると碌なことがないと言う噂だ。魔王軍も何度か奴に煮湯を飲まされていると言う。

対スパイの防諜組織はおろか、まともな領地運営もしてなさそうな人物なのにどうしてなのだろうか。


ディアブロの隣のバームベルク侯爵。この貴族がディアブロ邸まで皇子を連れて行くと言う。

初めて会ってから、どうもこの貴族、私のことをチラチラ見ているのだ。

正体に気づかれた?

いや、そんなはずはない。帝国は外国の密偵を把握していないはずだ。だとすると、単に私がいい女だからかしら?


ーーーー


ディアブロ邸に到着する。

出迎えるのは悪魔伯爵ディアブロ。


「フハハハハ! 我が名はディアブロ! 悪魔伯爵ディアブロである! よく来たな、カール皇子!」


奇妙な出で立ちの変な貴族だ。こんな人物それほど警戒する必要もあるまい。


ディアブロが呼んだ医療チーム。ジジイとアフロヘアの女。それ以外はみんな同じ格好の没個性的なメンバーだ。


「それではまず、デトックスからいくとしようかのう」


リーダーと思しきジジイがそう言うと、アシスタントのアフロが何やら大掛かりな装置を持ってきた。


「皇子さん、ここに入って」


「こ、こうですか?」


カール皇子は素直に、機械の中に立つ。


「スイッチオンじゃ!」


ジジイの掛け声とともに、薬液が流れ込んでいく。


「皇子の病の原因を、この機械で体外に排出するのじゃ!」


こんなのインチキに違いない。そう思っていた。

そうこうしていると洗濯機が回転を始めた。


「ディ、ディアブロ卿……目が回る……」


カール皇子は中でぐったりしている。

ここで殺されたら困るんだが、止めるか?


機械から救い出されたカール皇子はぐったりして、ベッドで寝込んでしまった。


このままコイツらに預けて弱らせてもいいかもしれないな。


ーーーー


翌朝。


「おはようございます。カール殿下、お加減はいかがで……」


「やあ!ミレディ。この通り昨日の治療が効いたみたいだ。おかげで健康そのものさ!」


驚いた。なんと言うことだ。まるで健康優良児。今まで地道に毒を与えて弱らせていたのが台無しになっている。


カールはそのまま食堂に行き、ディアブロと対面する。


「フハハハハ! 当然の結果である! 今日はディアブロ邸名物の温泉、サウナ、そしてオークのマッサージを堪能されよ。明日には皇宮にお送りしよう」


まずい。明日には出発となると、警備が手薄なこの屋敷で行動を起こすのは、今夜が最後のチャンスだ。誘拐して軟禁して毒を与え続けて治らない病弱な体に仕上げてやる。


ーーーー


夜。屋敷の外に待機しているチームメンバーに襲撃の指示を下す。そして準備ができた頃合いに襲撃場所の合図となるスカーフを窓から出す。

しかしチームが潜入してくる気配がない。


「……遅いわね」


「そうね。今頃、みんな捕まっているわ」


私の独り言に返事があった。


「貴様、何者だ!」


そこに立っていたのは、隠密コスチュームの女。


「あら、残念だったわね。あなたの襲撃班、大したことなかったわよ」


挑発する女


「くそっ!」


私は一瞬で隠密スタイルに変身し、短刀で女に斬りかかった。だが相手の方が上手だったため、返り討ちにあった。

その時、光の鎖が私を拘束する。


「フハハハハ! 正体を現したな、女スパイ!」

ディアブロが余裕たっぷりに登場する。こんなピエロみたいな変なやつに負けるなんて!


「くそっ……どうするつもりだ!」


「ほう、活きのいい女スパイだな。捕まったスパイの末路は決まっている」


ディアブロが指を鳴らすと、部屋を仕切るカーテンが開いた。


「ミレディ様ぁぁ!」

「見ないでええ!」


そこには、オムツに涎掛けの完全赤ちゃんスタイルにされた私の部下。襲撃班の女達がいた。


「貴様も、同じ目に遭ってもらおう!」


「やっ、やめて! お願い――!」

私の懇願も虚しくオークに別室に連れて行かれ、赤ちゃんスタイルに着替えさせられる。


「ううう。私のクールな悪の女幹部イメージが……」


宮廷の陰謀を華麗に演じれた私がこんな格好なんて……酷い。


「今回は大目に見てやろう。このまま帰るがいい!」


冗談じゃない。こんな変な格好で誰かに見られたら大変だ。

せめて元の服を返して欲しいと懇願したが、ディアブロは容赦なく私たちを屋敷から叩き出した。仕方がない。


「お前たち!支援班との合流ポイントまで全力で行くよ!」

「ハッ」


私は襲撃班のメンバーと全力で森の中を疾走した。待機している支援班と合流できれば着替えられる。

しかし、赤ちゃんスタイルの女密偵が夜中全力疾走してるなんて、なんてシュールな……恥ずかしさよりも悔しさよりも奇妙な感覚に襲われた。


ようやく支援班との合流ポイントに到着した。そこには、この姿を最も見られたくないお方。宰相様がいた。


「おお。ミレディ。たまにはお前達の様子を見ようと思ってな……ってその格好はどうしたのだ!?」

さすがの宰相様も私のこの姿混乱した様だ。


「さ、宰相様。その……見ないで。恥ずかしい」

思わず小声で懇願した。


「悪くない……むしろいい」

「は?」

今、小声だがはっきりと言った。悪くないと。


「いや、それよりもどうしたのだ?」


「これはその…ディアブロ伯爵に負けまして」


「なるほど。敵ながらいい趣味をしている……」


「は?」

今、小声だけど、この赤ちゃんスタイルを肯定したよね?

なんだか私の中のイケオジ宰相様の姿が崩壊しかけている。


「とにかく王国に帰ろう。そしてその姿でデートしようか?」


宰相様が無駄にいい(イケボ)で耳元に囁く。

本当はイケオジ謀略家と危険な女密偵の相引きみたいなのに憧れてたのに……赤ちゃんごっこなんて。

今までのスタイルを捨てて赤ちゃんごっこでデートするべきか?私は混乱しながら王国へ帰還の途についたのだった。

こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。

とても暇な方ですか?どうせ暇なら、ついでに感想など聞かせてください♪

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