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第7話 フンドシ剣士と網タイツ

◾️ディアブロ

屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。


●エルザ

アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。


挿絵(By みてみん)

僕は机の上に置いた一枚の絵を眺めていた。


「これはなんですか?」

隣でエルザが首をかしげる。


「メスガキがマッサージを受けてる時に、ゴーレム(万能型)に描かせたんだよ」


そこに映し出されていたのは――。

涙と涎にまみれ、痛いのかくすぐったいのか分からない顔でジタバタする、あのメスガキ殿下の姿。

ピースしてるように見える手の角度がまた絶妙で、より一層ヒドイ顔に仕上がっていた。


「この絵、お土産に用意したから送ろうと思うんだけど、どうかな?」


エルザは一瞬言葉を失い、それから深々とため息をついた。

「……いや、流石にいらないのでは?」


「そう?」


結局、戦利品コレクションにした。


「それよりもメスガキの姉、第1皇女はお忍びで各地を回り、悪を成敗するのが趣味らしいです」

エルザの唐突な報告を聞いた僕は、思わず眉をひそめた。


「……何それ?」

趣味が町歩きとかならまだわかるけど、成敗って。姉妹揃ってクセが強い。


「正体を隠して探索して、悪徳商人や腐敗貴族のところに突然現れては斬り伏せるそうです」

エルザは涼しい顔でさらりと言う。


「ふーん……。前世で早朝にやってた時代劇みたいだな」

白馬に乗った将軍が頭に浮かぶ。この世界にもいたのか。


「で?なんでそんな話を今さら?」

僕が問い返すと、エルザはさらりと答えた。


「――第1皇女が、ただいまバームベルク領に滞在しています」


「よく見つけられたな」

思わず感心の声が漏れる。やっぱりエルザは有能だ。


「隠密が活動していますので。……あ、どうせ聞かれると思ったので先に言っておきますが、その隠密はくノ一です」


その瞬間、僕の心がぴょんっと跳ねた。

これは!美女皇女とくノ一のダブルチャンス!一粒で二度美味しい!?


「ま、まあ……あまり嗅ぎ回られるのも面白くないし、そろそろ仕掛けるか」

努めて冷静を装う僕。


けれど――


「内心、喜んでますよね」

エルザにはバレてた。


ーーーー


エルザによれば、第1皇女は冒険者ギルドにいるらしい。ご都合主義に思えるが、まあ、なんだかんだで情報が一番集まるのはギルドだしな。順当といえば順当。


「じゃあ行ってみるか」

僕とエルザは商人夫婦の姿で潜入することにした。


ギルドの扉を開けた瞬間、すぐわかった。

……あー、あれだな。なんか無駄にオーラが目立つ。


ステータスを覗いてみる。


《職業:剣士(第1皇女)》


ほほう。ビンゴオ!


さらにもう一人。彼女の近くに旅商人風の若い女。


《職業:くノ一(第1皇女付)》


おっと、こっちは護衛のくノ一ちゃんか。いいねいいね。


さて、どうやって絡みに行こうか……と考えていると、妙案がひらめいた。

よし、ここは――お芝居タイム!


「なんとか!なんとか!悪魔伯爵を……!」

僕はわざと取り乱したように叫ぶ。


「落ち着いてください!」

ギルド職員が慌てて僕を宥める。


「私たちの娘を攫っていったのです! あの変態にひどい目に遭わせられると思うと……ううっ!」

エルザが芝居がかった声で泣き崩れる。


……いや、ちょっと待てエルザさん。変態は言い過ぎじゃない?


「詳しいことは、私が聞こうか」


来た! 餌に食いついたターゲット!

僕は目を丸くして振り返る。


「あ、あなたは?」


「私は旅の剣士、マリア」


なるほどー。そういう設定で動いてるわけか。皇女様。


「おお! マリア様! 悪魔伯爵ディアブロが私たちの娘を連れて行ってしまいました。どうか、どうか娘を取り戻してください!」


「心配はいりません。必ず娘さんを取り返しましょう」


くぅーっ! 正義感あふれるヒロインポーズ、ありがたい。


……よし。これで釣り上げ成功。

さあ――ディアブロ邸で、マリアちゃんと楽しく遊んでやろうじゃないか!


ーーーー


さあ、恒例の屋敷レベルチェックの時間だ。

新しい罠やモンスターは増えてるかな?わくわくしながら管理画面を覗き込む。


「おっ。今回は“部屋カスタマイズ機能”だ」


なんと背景を自由に設定できるらしい。

……これはもしや、悪代官の中庭を再現できるのでは!?


続いてモンスター枠。

「……役者パペット? 演技してくれるけど、戦闘はできない……?」


また非戦闘員かよ!

けどまあ、演出に大量のエキストラはありがたい。これで“殺陣(たて)ごっこ”が捗るぞ。


僕はニヤリと笑い、悪役顔を作ってみせる。

「上様! お手向い致す!」


ーーーー


「ご主人様、侵入者です。剣士がひとり……ですが、おそらく護衛がどこかに潜んでいるかと」

エルザの報告に、僕は頷いた。


くノ一ちゃんは、どうせチャンバラの最中に颯爽と乱入してくるに違いない。

――暴れん坊も、茨城の御隠居も大体そういうタイミングだった。前世のオタク知識からの鉄則だ。


やがて剣士マリアが洋館の扉を押し開く。

するとそこは――なぜか和風の中庭。


「うわっはっはっは! これで悪魔屋も儲けるのう!」

僕はノリノリで芝居を始めた。


「これも全て伯爵様のおかげにございます。本日はこちらにお礼の品を……」

横で役者パペットが恭しく頭を下げる。本格的だな。


「おお! これは見事に山吹色じゃのう!」

「さらに今宵は、隣のライバル商人の娘も攫って参りましたゆえ、後ほどごゆるりと……」

「おうおうおう、気がきくのう。しかし悪魔屋、お主も悪よのう」

「いえいえ、伯爵様にはとても敵いませぬ」

「うわっはっはっは!」


――完全に時代劇のノリで一通りの芝居をやっていたその時。


「悪逆非道の限りは今宵まで!」


中庭に凛とした声が響き渡った。


「な、何やつ!」

僕が叫ぶと、障子が勢いよく開かれる。


「うつけ者! この紋章が目に入らぬか!」


掲げられたのは――皇帝の紋章。


「こ、皇女様! ははーっ!」

僕と役者パペットたちが土下座モードに入る。


「商人と結託し不正取引、あまつさえ娘を攫うとは――悪魔伯爵! 潔く腹を切れい!」


……この世界に切腹文化あったっけ?

僕は一瞬だけ真面目に考え込んでしまった。だが――ここは大事な決め台詞の場面。


「ええい! 皇女殿下が斯様な場所におられるはずがない! 出会え、出会えい!」


その号令で、殺陣師(たてし)パペットたちが一斉に登場。


「皇女殿下の名を騙る痴れ者ぞ! 切れ! 切り捨てい!」


こうして、チャンバラ劇が幕を開けた。


「ヤーッ!」

殺陣師(たてし)パペットたちが一斉に切りかかる。だが、剣士マリアの一太刀であっさりと切り伏せられた。


次々と襲いかかるが、結果は同じ。鮮やかな剣さばきで次々と紙切れのように斬り捨てられていく。

(……そろそろかな?)

僕は心の中でタイミングを測る。だいたいこのへんで“人質救出に忍者参上”ってのが相場だからな。


人質役はエルザ。

物陰から忍び寄ったくノ一が、そっと声をかける。

「もう大丈夫だからね」


その瞬間――エルザが一撃でくノ一を沈めた。


「えっ?」

マリアの剣がピタリと止まる。そりゃそうだ。お約束から外れたシナリオなんて誰も予想してない。


だが殺陣師パペットはそれ以上攻撃しない。……まあ当然だ。演技専用だから。


その間に捕まったくノ一は万能型ゴーレムに両腕を縛られ、天井から吊るされていた。


「ふはは! この娘の命が欲しくば剣を捨てろ!」

よし、悪役らしいセリフだ!


「くっ、卑怯な!」

マリアが憤る中、吊るされたくノ一が目を覚ました。


「マリア様……私はどうなっても構いません。どうかこの悪魔を成敗してください!」


――いいねぇ、健気なくノ一ちゃん。


「ふはははは……さて、いつまで持つかな?」

僕は彼女の帯をぐいっと引っ張った。


「あ〜れ〜〜っ!」


くノ一は回転しながら帯を取られ、忍装束が解けていく。現れたのは――網タイツに近いアンダーウェア!

……エロいじゃないか。帯回しまで決められて、今日は大満足だ。


「卑怯だぞ! 一騎打ちをしろ!」

女剣士マリアが叫ぶ。


「……いいよ」

僕はあっさり答えた。


実は僕、めっちゃ強い。異世界転生ボーナスでつい調子に乗って訓練したら、ステータスがカンストしてしまったのだ。


「では――どこからでも来い!」


「余裕なのは今のうちだけだ!」

剣士マリアが一閃を放つ。だが、すべて紙一重で躱される。


カン、と軽く弾き返すように、僕は三度だけ剣を振るった。

次の瞬間――。


「マ、マリア様! そのズボンが……!」

吊るされたくノ一が叫んだ。


剣士の視線が下に走る。

ズボンの布地がスパッと裂け、するりと腰から滑り落ちていたのだ。


さらに僕の手には――切り取られた下着の紐。


「ほう……剣士殿の下着は、フンドシか」

僕はわざとらしく掲げてみせた。


「なっ……!?」

マリアの顔が真っ赤に染まり、慌てて両手で股間を隠す。


もはや勝負どころではない。

剣の腕前は一流でも、この辱めには抗えないらしい。


「くっ! 殺せ!」

剣士マリアが吐き捨てる。その声音は、一度目に捕えた見習い騎士とは違った。


――いいねぇ。今日は最高の一日だ。帰ったらビール飲もう。


気を取り直してネタバラシ

「ふはははは!我には成敗される謂れはない!」


「なんだと?」

マリアが鋭い視線を寄こす。


「本当に成敗される覚えはないんだけど」


「賄賂を受け取ったのか?」

「アレはただのお菓子」


「娘を攫ったではないか!」

「あー、あれは嘘」


「私に恥辱を与えて!」

「しょうがないじゃん。本気で斬りかかってくるんだもん」


「護衛にも酷い目に遭わせて……!」

「マッサージだよ。忍者って屈んだり跳んだり多いから、ストレッチで体ほぐしてあげただけ」


「……あ、本当だ。体の調子がいい」

拘束を解かれた隠密くノ一が、驚いた顔で腰を回していた。


「わかった? だから成敗しないで」

「……うん」


「そうだ。下着は……すまなかった。これを」

僕は、以前“お漏らシスター”の時に用意していたスペアのパンツを差し出す。


「……助かる」

マリアは赤面しながら受け取り、隠密と共に帰っていった。


やれやれ、大団円……と言えるのかこれは。


「なんか、大掛かりだった割にはグダグダでしたね」

エルザが冷静に総括する。


「今日は盛りだくさんすぎたからね。……このあと飲みに行こうよ」

僕が誘ってみるが――


「遠慮しておきます」


バッサリ振られてしまった。orz


こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。

とても暇な方ですか?どうせ暇なら、ついでに感想など聞かせてください。

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