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第48話 スパイを暴き出せ!

◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)

屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。


●エルザ

アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。


サラザール大公――帝国でも皇帝に次ぐ領地を持つ大貴族が、殺害されていた。

しかも、その亡骸は“悪魔に操られていた”という。


そのニュースは帝国全土を震撼させた。

大公の領地は広大で、彼の死はまさに政治的な地震だった。


「領地をどうするか」――それが最大の問題だった。

結局、遠縁の親族たちで分割相続されることになったが、当然のように揉めに揉めた。

大公の統治機構は一時的に崩壊し、旧大公領は無法地帯と化す。


そのまま放置すれば、隣接する諸侯の領地まで治安が悪化する。

バームベルクも例外ではない。

結局、帝国議会で「相続が完了するまでの間、諸侯が共同で暫定統治を行う」ことが決定し、それを皇帝が認める形で決着がついた。皇帝としては直轄領にしたかったらしいが、皇帝と諸侯のバランスが崩れることを恐れた諸侯が反対したらしい。まあどうでもいいことだ。


ーーーー


「あー……つまり、うちも軍を出すのか」

僕は嘆いた。

こういう面倒ごとがこの世でいちばん嫌いだ。


「真面目にやってください、ご主人様」

エルザが冷たい視線を向けてくる。


「だってさ。他人の土地を“共同統治”って……言い方を変えただけで実質“占領軍”じゃん。気が乗らないんだよね」


「……気が乗る乗らないで国の政治をやらないでください」


エルザの冷静なツッコミが刺さる。

まあ、確かに。放っておいたら魔王軍の残党が潜り込む可能性もある。最悪大公領が魔王軍に占領されてもおかしくない。立て直しは一刻の猶予もなかった。


しかし問題はまだ終わっていなかった。

大公家の内部には、魔王軍のスパイが巧妙に入り込んでいたのだ。

今から向かう旧大公領――そこに潜む“誰か”が魔族、いや敵かもしれない。


そんな疑心暗鬼の中での統治。胃が痛い。

まあ、僕にはステータスを覗き見るスキルがあるから敵味方の判別自体は簡単だが……。

問題は、それをどう説明するかだ。

下手に使えば、「あいつ魔王軍の仲間じゃね?」とか言われかねない。このスキルは人間社会では僕しか持っていないのだ。超面倒くさい。


「伯爵……じゃなかった、今は侯爵閣下だったね。いい考えがあるよ!」


アフロ頭のドワーフ、ウルバンがまた得意げに現れた。

ていうか――


「おいウルバン、今日も爆発したのか?」


「え? なんでわかるの?」


「わかるわ!! 髪から煙出てるし!」


「細かいことはいいのさ! 本題だけどね魔力を汗と一緒に吸い取る“魔導サウナ”に入れてみればいいんじゃない?」


「……サウナ?」


「そう!魔力を剥ぎ取れば、変装や幻術は全部解けるだろ? つまり、“誰が魔族か一発でわかる”ってわけ!」


「なるほど……理屈はわかる。でも、どうやって連れてくるんだ? そんな簡単には……」


「できるよ!」


「は?」


「サウナにエンジンをつけたんだ!」


……こいつは何を言っているんだろう。


「車輪がついてるだけでも頭おかしいのに、動くの?」


「うん。燃料は捕虜の魔石!」


「魔石なら倉庫に山ほどありますが?」

エルザが首をかしげる。


「問題はそこじゃないんだ。排気ガスがね、臭いんだよ」


「……臭い?」


「死霊術の魔力は“腐臭”が混じってるみたいでさ。

そのガスがサウナの熱気と混ざると――なぜか思春期の男子よりも汗臭い!」


「なるほど。じゃあ……この前の女悪魔が臭かったの、あれ本人のせいじゃなかったのか。敵とはいえ、女性に臭い臭いって言い過ぎたな」

なんか女子を傷つけたかもしれない。僕はあの悪魔に悪いことをしたと本気で思った。


「ご主人様、敵とはいえ女に臭いとかだめです。デリカシーという概念を学びましょうか」


エルザが呆れる。やはり女性的には臭いを言われるのはキツイのかもしれない。エルザが敵の方を同情してしまった。

言葉の選び方は考えよう。


「ま、まあいい。とにかく使えるなら試してみよう」

僕は強引に話を進めた。


「“魔王軍見破るサウナ号”!通称“MM号”だ!」


「……いやウルバン、その名前はやめてくれないか?」


「なんでさ?」


「なんか……前世…昔を思い出すんだよ。いろいろと」


「???」


説明できない記憶を胸に、僕はごまかすように命じた。


「よし! サウナ出撃だ! 行くぞ、“MM号”!」

だから、MM号って大声で言うな。恥ずかしい。


……こうして、“汗と涙の捜査作戦”が幕を開けた。


ーーーー


バームベルク軍は旧大公領へと到着した。

だが、その後方――地平線の彼方から、ひときわ異様な音が響いてきた。


ブロロロロロロ……


「……来たな。あの思春期マシンが」

僕は思わずため息をつく。


そう、魔道サウナ“MM号”だ。

燃料に死霊系魔石を使っているため、排気が“思春期の男子の汗臭さ”みたいな臭いを放つ。

当然、将校たちからはクレームの嵐である。


「侯爵閣下、どうにかならんのですかあれ!!」

「まあまあ、あれがないとスパイを見抜けないから我慢しろ。作戦完遂には代償がつきものだ」


そう言いつつも、僕も涙目だった。女子の臭いのはずなのにこんなにも臭いなんて。


ーーーー


「活気がないな……」


大公の居城がある街を見下ろしながら、僕は呟いた。

かつて帝国有数の繁栄を誇ったはずのこの地が、今はまるで亡霊の町だ。


「仕方ありません。悪魔たちが重税をかけていましたから」

同行している家令が淡々と答える。今回は復興のために内政に明るい家令を筆頭に文官を連れてきている。


バームベルクが“自由経済”で発展しているのに対し、ここは重税と恐怖で縛られた結果――完全に腐っていた。


「復興資金は魔石の売り上げだけじゃ足りそうにないな……」

僕はため息をついた。

魔王軍はイナゴのように食い荒らしていた。


ーーーー


居城の大広間に入った瞬間、いきなり叫び声が響いた。


「ルナ様の仇ッ!!」


警備兵の一人が剣を抜き、僕に飛びかかってきた。

が――横にいた騎士団員が一瞬で取り押さえる。


「魔王軍の残党か。変装しているな……まあいい、あとで“サウナ”で確かめよう。連れて行け」


僕は冷静に命じた。

まさか「サウナで取り調べ」とは誰も思うまい。


「侯爵閣下! 旧大公家の家臣と派閥の貴族、そして相続候補者を一堂に集めました!」


騎士団長の報告を受け、僕はうなずく。

よし、ここでスパイを一掃する。


そこへ――


ブロロロロ……


あの臭いがやってきた。

MM号の到着だ。


先頭から降りてきたのは、派手な登場ポーズを決める黒衣の男。

……いや、エルザが変装しているディアブロ伯爵。ディアブロの正体が僕だということは、あの汗臭い女悪魔のルナにバレてしまった。なのでディアブロは別人だと印象付けるために偽物を仕立てて、エルザに演じてもらうことにした。


「フハハハハ! 我が名はディアブロ! 悪魔伯爵ディアブロ! 諸侯連合の一員として参上した!」


会場がざわめいた。

当然だ、ディアブロなんて諸侯連合に数えていない。誰も呼んでいないのに勝手に来たようなものだ。


エルザが僕に目で訴えてくる。

(ご主人様! 視線が痛いです!)

(サウナが起動したら後ろに隠れていいから!)


「バームベルク侯爵、ディアブロ卿が持ってきたその妙な装置は何ですかな?」

諸侯の一人が怪訝そうに尋ねてきた。


「ディアブロ伯爵のご厚意でお借りしたものです。魔力を吸い取り、変装を暴く装置 “魔導サウナ”と申します」


会場の空気がざわめく。

説明すればするほど怪しい。


だが、実演すれば早い。

さっき捕らえた兵士を中に放り込む。


――数分後。


「うわっ! なんだあれは!」

そこに現れたのは、角を生やした魔族の姿だった。


「ご覧の通り、変装魔法を維持できなくなります」

僕がそう告げると、貴族たちは一斉に息を呑んだ。

中には明らかに動揺している者もいる。

ふむ、分かりやすい反応だな。


「連れて行け!」


僕は兵士たちに命じた。


「この魔導サウナは容赦なく魔力を吸う! 干からびる前に自白するんだな!」


脅しをかけると、降伏する者、強がる者、そしてミイラになる者――。

MM号の中では魔力と汗が蒸発していき、魔石を生み出していった。


そして最後、一人の女が進み出た。


念の為ステータスを覗き見る。


職業:魔王軍工作員(敵性)


ほう、こいつもか。

さっそくサウナ行きだ。


……が、何分経っても正体が現れない。


「あのー侯爵、長すぎませんか?」

諸侯の一人が心配そうに声をかける。

「そ、そうかな?」

いやでもこの女も間違いなく工作員なんだ。スキルがそう言ってる。


「そこまで言うなら……もう少し見守りましょうか」


……まだ何も起きない。


おかしいな。何かの間違いかな?


ディアブロに化けたエルザが小声で話しかける。

「ご主人様。工作員ではないのでは?」

「いや、工作員なのは間違い無いんだけど。サウナ故障した?」

「サウナは異常ないよ。侯爵」


「わかりました。多分、魔法ではなく化粧か何かでしょう。私がなんとかします」

エルザ――いや、“ディアブロ”がそう言うと、サウナの扉を開き、女を引きずり出す。


「我が名はディアブロ! 貴様のような小細工など、この目は見逃さぬ!」


「ちょ、ちょっと! 何するのよ!」


「うるさいわね! 化粧か変装か知らないけど、落としなさいよ!」


……エルザさん、口調、完全に女性の素が出てますよ。


会場がざわつき始めた。


「おい……ディアブロ卿って、オネエなのか?」

「まさか……いや、でもあの仕草……」

「“オネエ伯爵ディアブロ”……ありかもしれん」


おいおい、勝手に新称号を生み出すな。

ていうか、何がありなんだ?


キャットファイト(?)の末、女の変装は剥がれ、魔族の姿が露わになる。

なるほど、物理的に変装してたらサウナでもバレないのか。


「おーほほほほ! 我が名はディアブロ! 悪魔伯爵ディアブロよ! この名、しかと覚えておきなさい!」


……エルザ。完全にノリノリだな。ていうか、オネエ伯爵は確定だ。


こうして、大公領に潜んでいた魔王軍の工作員たちは一掃された。

だがその代償として――


“オネエ伯爵ディアブロ”という妙な噂が、帝国全土を駆け巡ることになった。

こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。

とても暇な方ですか?どうせ暇なら、ついでに感想など聞かせてください♪

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