第47話 プリズンサウナブレイク 女悪魔サウナからの脱獄
◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)
屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。
●エルザ
アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。
私はルナ。魔王軍幹部にして、魔王様の最側近。そして、未来の魔王妃(予定)である。
……そう、予定。なぜなら今、私は猛烈にピンチだからだ。
任務は完璧だったはず。
魔王様の命を受け、帝国に潜入。有力な皇帝候補である“大公”を操り、帝国を内側から乗っ取る――そのはずだった。
大公を殺し、その骸を操って派閥を掌握し、次の皇帝選挙で傀儡を皇帝に据える。
つまり、“骸の帝国”が誕生する予定だったのだ。
ああ、想像するだけでうっとりする……私が作り上げる、完璧で冷たい死の国家。なんて美しい。
そして私は魔王様の腕の中で……。と夢を持っていた。
だが現実は非情だった。
あと一歩、あと一歩で帝国が掌中に落ちるという時。中立派の有力貴族――“バームベルク”を大公の前まで連れてきた瞬間、謁見の間ごと異空間に転移したのだ。
目の前に現れたのは、あの忌まわしきディアブロ。人間のくせに悪魔伯爵と名乗り、私の諜報活動を邪魔してきた男。
この男はこともあろうか、私と女処刑人ソルの魔力を強制的に吸わせることに成功した。そのせいで私たちは囚われの身となった。
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「ちょっ、なにをするの!? やめなさいっ!」
私とソルが絶叫する。
拘束された私たちが放り込まれたのは――牢獄ではなく、なぜかサウナだった。
……サウナ?
しかも温度が悪魔的に高い。いや、私が悪魔だけども!
「アーサー卿は殺された。命を奪わないだけ感謝しろ。お前たちは、殺した者たちへの償いとしてここで魔石を作り続けるのだ」
意味が分からない。汗をかきながら私は歯ぎしりした。
アーサー卿?ああ、そういえば大公派の若い貴族を殺したっけ。そんな人間を殺したことなんかいちいち覚えていないわ。
しかし……体の中の魔力が、汗と一緒にじわじわと抜けていく。この感覚は正直なところ苦しい……!
「すごい! 純度の高い水属性の魔石だ!」
外で女ドワーフが叫ぶ。アフロヘアーの女だ。汗を拭きながら笑っている。
「ほう……それ、水道インフラに使えるかもな」
ディアブロがうんうんとうなずく。
おい、ちょっと待て。
「でもさ、この石から出る水、汗くさいんだよね。飲料向けじゃないね」
「確かに汗臭い悪魔の汚ねえ魔石だな。使い道はあるのか?」
「まあ、それでもトイレや下水には使えるかな」
……こいつら、好き放題言いやがって!
「ちょっと! 誰が汗臭いって!? 好き勝手言わないでよ! それに、私の高貴な魔力を下水に使うなんて――絶対に許せない!」
「黙れ。お前たちはここで“汚い魔石”を生産し続けるんだ」
ディアブロの冷たい声が響く。
くそっ、この私をこんな屈辱的なサウナ地獄に閉じ込めるなんて……!
「鬼!悪魔!」
「お前も悪魔だろ」と言われたけど、そんな細かい分類の問題じゃない。
奴らはサウナについていた小窓を外から見えないように閉めて笑いながら去っていった。
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「ねえ、ソル。私……汗臭いかしら?」
小声で尋ねると、処刑人ソルは真顔で答えた。
「正直に言いますと、汗臭いです。……あ、でも多分、死霊術の魔力のせいだと思います」
「そ、そうよね……きっとそう……」
気まずい。悪魔にも羞恥心はあるのだ。
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翌日。
ディアブロとドワーフが外で何やら話している。
「伯爵、魔力収集効率が落ちてるんだ。多分、魔王軍からの供給が断たれたんじゃないかな?」
「やはり、こいつらが敗れたことに気づいたか。まあ構わん。魔力が回復したらまた作業してもらおう。永久にな」
「も、もう殺してくれぇ……!」
ソルがうめく。干からびるまで魔力を吸われるのがこんなにも辛いものだったなんて。
干からびかけた悪魔なんて、見たくないわよね……自分の姿なのに。
数時間後、ドワーフが提案した。
「伯爵、このサウナ室、どうにも臭いから、実験室に置いておきたくないんだ。裏庭に建てていいかな?」
「確かに汗臭いな。屋敷の中には置いておきたくないのは同感だ。裏庭ならいいんじゃない? この汗臭い連中も魔王軍から見捨てられただろうし、どう、エルザ?」
「はい。監視の面では不安ですが、この様子ではこの汗臭い悪魔は自力で脱獄はできないでしょう」
好き放題言いやがって。だが、部屋を移動させる時がチャンス!
外に出られれば、魔力を集めて転移できるかもしれない!
「じゃあ、サウナ室ごと移動させるね。キャスター付きで作っててよかったよ」
……部屋ごと? 外に出ないの?
ガラガラガラ……と音が響く。
私は、脱力した。
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外に運ばれた後、サウナは完全密閉状態のまま放置された。
水はぬるい。食料は謎の生肉。
悪魔は魔物じゃないのに、これはもう捕虜虐待だ。
「ルナ様……」
「その声は……ステラ!?」
吸気口から赤髪の悪魔が滑り込んでくる。
ステラ。私の使い魔であり、諜報担当。体を小さくできるため、どんなところにも潜入可能だ。戦闘力が皆無で、脳筋部隊だった前の部署では浮いていたこの子を私の配下にした。また、女同士で慰め合う秘密の仲間でもある。
「ルナ様……なんというお姿に……これを」
ステラが差し出したのは小瓶と小包。
「これは?」
「魔力を肌の表面で保つ保魔力クリームです。これを塗れば汗から魔力が逃げるのを防げます。それと……こちらを」
「これは魔力回復薬……?純度が高いやつじゃない!」
「魔王様からです。“魔力は貸すから、ちゃんと返すように”とのこと。……魔王様は無事の帰還を望んでおられます」
「ああ……愛しの魔王様……。あなたの慈悲、忘れませんわ……」
涙が出そうになった。魔王軍は身内に対する情は厚いのだ。
「ステラ。今夜はハロウィン。死霊が活性化する。ボイラーを破壊してちょうだい」
「ルナ様の死霊術でゾンビにサウナを襲わせるのですね?」
「ふふっ、イイ子ね。よくわかってるじゃない♡」
「あ、ルナ様♡」
「私もご一緒させてください♡」
こうして私は、ソルも入れて3人の女悪魔で慰め合って夜を待った。
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夜。
私は死霊術を発動し、ゾンビたちを召喚。
ゾンビたちは油揚げの供物にも惑わされず、サウナへ群がる。
(なんでこの国のゾンビは油揚げ好きなのよ……!)
「さあ、愛しの死霊たちよ。私たちを解放するのよ♡」
外では奴らの慌てた叫び声。
「ウルバン! コイツらはサウナにいる汗臭い悪魔が操ってるに違いない! 出力を上げろ、魔力を吸い切るんだ!」
バームベルク? いや、ディアブロの声?どちらでもいい。もう手遅れだ。
扉がゾンビに破壊された
熱気と蒸気の中から、私とソルはついに外へ飛び出した。
「ふぅ~……ようやく出られたわね」
蒸気の中で、私はゆっくりと濡れた髪をかき上げた。
「おや、そこにいるのは――バームベルク侯爵じゃないか。なるほど、ディアブロの正体は君だったのね?」
「ルナ、ソル……貴様らだけは絶対に逃がさん!」
「相手してあげたいけど、今の魔力は借り物でね。帰らせてもらうわ。――ソル、行くわよ!」
「はい、ルナ様!」
私は空を見上げ、魔王様の方角を確かめた。
北の方角。あの方向に愛しの魔王様。
「バームベルク! いや、ディアブロ! 次はお前の骸をおもちゃにしてやる! 楽しみにしてな!」
そう叫び、濡れたバスローブを脱ぎ捨てた。
魔力の衣を纏い、悪魔の翼が背から広がる。
私は夜空を切り裂き、北の空へ――愛しの魔王様の元へ飛び立った。
「汗臭いとか、散々言いやがって……この屈辱、必ず返してやるんだから!」
蒸気の中、悪魔の笑い声が響いた。
プリズンサウナからの脱獄は、こうして成功したのだった。
こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。
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