番外編 ディアブロ秘宝館 その6 皇帝家の求人書類/ピエロの付け鼻
◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)
屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。
●エルザ
アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。
第10話 派遣社員の暗殺者は正社員希望
「……ご主人様、これ、展示するようなものですか?」
エルザが呆れた声を出す。
展示ケースの中には、一枚の紙――いや、紙切れが入っていた。
「これはね、皇帝家の“メイド募集書類”だよ」
「……地味ですね」
「地味だけど、歴史的価値はあるんだ。カタリナ、今や冒険者ギルドのギルマスターになった女暗殺者が、ディアブロの暗殺報酬として渡された求人票なんだ」
エルザの表情が少しだけ和らぐ。
「まあ、カタリナは昔から私にライバル心を抱いてましたからね」
「そうそう。皇帝家のメイドになれば、エルザに勝てると思ったんだろうね」
僕は書類を覗き込む。
紙の端には“勤務形態:パートタイム”と書かれていた。
「でも、これパート募集だったんだよね。第1皇子って、噂以上にケチでさ」
「……条件面でケチると、人は離れます」
エルザの言葉に、妙な説得力がある。
何せ、彼女自身も元々は刺客だった。
しかし、僕が正社員待遇でメイドとして引き抜いた結果、今や忠実な(?)側近である。
「それにしても、今ではカタリナも立派になったよね。ギルドマスターだよ。
地元の学校の卒業式に呼ばれるくらいの名士になってるし」
「……その“卒業式に呼ばれる謎の来賓”という表現、絶妙にわかるようでわからないんですが」
「どこの学校にもいるでしょ? 『誰この人?』って思う来賓。あれがギルマスって感じだよ」
「……説得力がありますが、『名士』に失礼では?」
ーーーー
第11話 殺人ピエロは照れ屋さん
「さて、次の展示だ!」
「……これもまた、地味ですね」
エルザがやや困ったように言う。
大きな展示ケースの中には、赤く丸い小さな物体。
「見た目は地味でも、これは大事な記念品だ。暗殺ピエロ“ピエラ”の付け鼻だよ」
エルザが首をかしげる。
「ですが、ただの赤い玉にしか見えません」
「まあね。でもこれは“暗殺者からギャル受付嬢に転職した”彼女の象徴なんだ」
僕は懐かしそうに微笑んだ。
「昔のピエラは無口で、いつもピエロメイクで表情が読めなかった。
バームベルクの町で笑わずに無言で手品してるんだよ? しかも、宴会芸レベルの。ピエロがそんな芸を披露していりゃ怖いよ」
「確かに。隠密術を使いこなす彼女の暗殺スタイルとは相容れない格好でした。ピエロ姿で暗殺者が街角パフォーマンスとは……意味不明でしたね」
「でしょ? でも今じゃすっかりギルドの顔だ。ギャルメイクで“アハハ〜ウケる〜”とか言ってるんだから、人生ってわからないもんだね」
「……それ、誰のせいですか?」
続く




