番外編 ディアブロ秘宝館 その5 山賊の腰蓑/金粉まみれの片眼鏡
◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)
屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。
●エルザ
アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。
ディアブロ邸・別館。
これまでの刺客や珍客たちの“遺産”を静かに並べる、悪魔伯爵ディアブロ秘宝館。
今日の見学コースは、ひときわ厳重な扉に続いている。
「次の展示室は――二重扉なんだ」
僕が鍵を回すと、鈍い金属音が響く。
重々しい仕掛け扉が二重にロックされている。
「そんな厳重な部屋に、いったい何が?」
エルザが眉をひそめる。
僕は扉を開けながら言った。
「心して見てくれ。ここにあるのは、継続してダメージを与える呪物だ」
――ブワッ。
瞬間、鼻を突く猛烈な臭気が吹き出した。
「ごひゅひんさま、これはいったい!?(ご主人様、これは一体!?)」
エルザが鼻を押さえ、涙目で後ずさる。
僕は急いでマジックアイテムの消臭剤を噴射した。
「ごめんごめん、これは“青春山賊団”の腰蓑なんだ」
「……腰蓑?」
「そう。彼らが身に着けていた装備品だ」
部屋の中央に、ガラスケースの中で保存された腰蓑。
見るからに古びているが、どこか輝きがある。……汗と油で。
エルザはため息をつく。
「そういえば、あの山賊団――“風呂キャンセル界隈”の人たちでしたね」
「うん。風呂嫌い、マナー嫌い。まさに社会から逃げて山賊になったような連中だった」
僕は懐かしむように言った。
「最終的にディアブロ邸で強制おしゃれ改造したけど……彼ら、今どうしてるの?」
「荒くれ青春ファッションリーダーとして、若者の間で人気だとか」
「……なんだそのジャンル?」
エルザは真顔で答える。
「“ワイルド・ノンバス・アヴァンギャルド系”らしいです」
「ちょっと理解できないな」
世間では自分の常識で測れないものが多い。改めてそう思った。
ーーーー
第9話の展示品。
こちらは匂いではなく――まぶしい。
「次の展示はこちら。“金粉まみれの片眼鏡”!」
ガラスケースの中で光を放つ、ひときわ豪奢なモノクル。
「……徴税官の女性ですね」
エルザの声が冷ややかに響く。
「そう! 金の計算を誤魔化そうとして、ゴーレムの“金粉エステ地獄”を受けた人だよ。
結果、全身金ピカにされて心まで輝きを取り戻した!」
「それ、心折れてたんじゃないですか?」
「いや、“再生”と言ってほしい!」
エルザは溜息をつく。
「つまり、山賊の腰蓑と徴税官のモノクル……。どちらも清潔とは縁がない展示ですね」
さすがツッコミのエルザ。上手いことを言う。
「人の成長って、清潔さから始まるんだよ。僕の教育方針だ」
「……教育ではなく更生施設の域です」
続く。




