表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/120

第39話 ゴイゴイとスー ふたりは仲良し

◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)

屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。


●エルザ

アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。


冒険者ギルドは熱気に包まれていた。各地を巡って開催される武術大会――その名も、

『ふるさと冒険者うで自慢』


……名前のセンスがどうにも前世の某国営放送を彷彿とさせるが、内容自体はいたって真面目な格闘大会だ。


「にぎやかだなぁ……」

戦士、格闘家、魔法拳士――。みんな腕に覚えがある人間は目を光らせている。

こういうイベントは冒険者のレベルアップにもなるし、領主としては歓迎だ。


この大会、“ある噂”で持ちきりなのだ。


――“美しすぎる格闘家が勝ち上がっている”と。


その格闘家の名はスー。


見た目はまるで無邪気な子どものような顔立ちに、陽の光を弾くような金髪。

けれど、その腕っぷしは折り紙つき。今や大会の看板スターだ。


「スー様〜っ!」

「スーちゃーん!」


観客席からは、老若男女を問わず黄色い――いや、むしろ眩しいまでの歓声が飛ぶ。


「みんな〜、今日も応援ありがと〜♡ スー、全力でがんばっちゃうからね〜!」


「おおおおおおおおおおおーーっ!!!」


……なにこれ。格闘大会というよりアイドルライブだ。


だが、そんな熱狂の決勝戦。リングにのしのしと上がってきた対戦相手を見て僕は驚いた。


身長は二メートル近く、腹は樽。

手にはトゲ付き鉄球のモーニングスター。

しかも、入場の時点で観客からブーイングの嵐だ。


「帰れー!」

「また殺す気かー!」

「風呂入れー!」


どうやら、この男は“手加減を知らない残虐ファイター”として悪名を轟かせているらしい。


……やばい。この感じ、何か裏がある。


「はじめ――」


審判の声が言い終わる前だった。

ブンッ!


鈍い風切り音とともに、巨大なモーニングスターが振り下ろされた。

観客席から悲鳴。地面が爆ぜ、砂煙が立つ。


「うわっ、危なっ……!」

ギリギリでかわしたスーの金髪がふわりと舞う。


「危ないわね! まだ“はじめ”って言い終わってないじゃないの!」

彼女が抗議すると、男はニタリと下卑た笑みを浮かべた。


「ぐへへ……一撃で楽にしてやろうと思ったんだがなぁ」


言葉と同時に、男は口を大きく開け――ブッ!

目潰し用の毒霧を吹きかけた。


「うっ……!」

スーが目を押さえて後ずさる。


「卑怯な!」

観客からも怒号が飛ぶ。


「ぐへへ……ゆっくりと料理してやろうか……!」

モーニングスターを振り上げながら、男がにじり寄る。


ブンッ!

ブンッ!


スーは目を閉じたまま、わずかな音と気配で攻撃を避ける。

けれど、さすがに動きが鈍ってきた。

毒が回っているのか、それとも……。


「はっ、もう逃げられねぇ!」

男が勝利を確信して踏み込んだ、その瞬間――。


ズルッ。


「うわっ!?」

男の足が滑った。

次の瞬間、彼の巨体は派手に転倒。地面に鉄球がめり込む。


「ん? 何があった?」

突然の転倒はあまりにも不自然すぎた。


「そこっ!」


だが、スーはこのすきに鋭い回し蹴りを炸裂させる。

バキィッ!

男の頭にクリーンヒット。巨体がのけぞり、そのまま沈黙した。


審判が慌てて手を上げる。

「勝者! スー!」


「ふるさと冒険者うで自慢、バームベルク大会――優勝は美人格闘家スー!」


アナウンスが響く。会場が歓声と拍手に包まれる。


スーはウィンクをして笑う。

「えへへっ、スー、がんばっちゃった♡」


不自然な試合運びに観客は誰も気にしていない。むしろ卑怯な大男ザマアといった感じだ。


「それでは優勝したスー選手に、インタビューしてみましょう!」


司会者の声が響くと同時に、観客席から歓声が爆発した。


「スー選手、優勝おめでとうございます! 決勝戦、危なかったですね?」


「まあね〜。でも、みんなの応援があったから、勝てたの♡」


わああああああああ!!


観客席が一気に沸く。

熱狂的なアイドルコンサートだ。


「それでは、今後の目標を教えてください」


「うーん……そうね。まだ誰も攻略していないダンジョン……そう! ディアブロ邸に行きますっ!」


「「「うおおおおおおおおおお!!!」」」


会場が揺れた。

観客たちが興奮のあまり立ち上がる。


「おい、聞いたか!? スー様がディアブロ邸を攻略するってよ!」

「初の踏破者はスーで決まりだな!」


来る。美人格闘家が!僕は本格的なバトル展開に興奮を覚えていた。


ーーーー


大会終了後――。

僕は主催者の一人という立場を利用して、優勝者スーの控え室を訪ねることにした。


扉の前に立つと、中からひそひそ声が聞こえてきた。

どうやら誰かと話しているらしい。


「ゴイゴイ姉さん。あそこで転倒させなくても良かったんじゃない?」

スーの声だ。


「で、でも……あのままだとスーちゃんが危なかったから……」


「姉さんはほんと、見せ場ってものがわかってないんだから。もうちょっとギリギリまで引っ張ってから倒したかったのよ」


「ご、ごめんなさい……」


姉? 

耳を澄ませる。


「でもゴイゴイ姉さん、ありがとう。姉さんが対戦相手を“ちょっとだけ”妨害してくれたおかげで、優勝できたわ」


……なん、だと?


やっぱり何かやってたのか。


つまり、あの転倒――偶然じゃない。

観客席にいた姉のゴイゴイがスーと連携して相手を妨害していたというわけだ。


毒霧男も卑怯だったが、こっちもたいがいである。

いや、むしろこっちの方がタチが悪い。会場にいた全員を騙しているのだから。


僕は控え室の扉からそっと離れた。

ゴイゴイとスーの姉妹――。

ディアブロ邸ではどんな“インチキ”を仕掛けてくるのか。


ーーーー


――ディアブロ邸。


僕は新しく導入した装備のチェックをしていた。


「おっ、今回はデコイのレベルアップだな」


デコイ――僕の身代わりとして敵の攻撃を引き受ける罠人形。

前までは喋るだけの置物だったが、今回からは自律戦闘機能付き。


「インチキ攻撃をしても、このデコイが全部受け止めてくれるってわけだ」

僕は口角を上げて、不敵に笑った。


――まさに、インチキ対インチキの戦いである。


ーーーー


「ご主人様、報告します。スーが侵入しました。相方と思われる“ゴイゴイ”の姿は、まだ確認できません」

エルザの声が静かに響く。


「ところであの姉妹の調査はどう?」

「はい。ゴイゴイとスー。二人は双子だそうです。ですが性格は正反対のようで、冒険者として登録して華々しく活躍しているのはスーだけです。ゴイゴイはターゲットを後ろから攻撃することでスーをサポートするスタイルのようです」


ゴイゴイが表に出てこないことに理由はあるのか?


「じゃあまずは、デコイで様子を見ようか」


――そしてスーが大広間に到達する


「フハハハハハ! 我が名は悪魔伯爵ディアブロだぁぁぁ!」


デコイが名乗りあげる。あれ? なんか僕より芝居がくさいぞ。


「ふるさと冒険者うで自慢優勝者、スー! 参る!」

しかし大会名ダサいなあ。


デコイとスーが激しくぶつかる。

打撃音が連続し、床石が砕け散る。

だが――。


デコイの背後に、影がすっと現れた。


「――!」


次の瞬間、閃光。

デコイの首が飛んだ。


「大したことない...」

「ゴイゴイ姉さん、さすがっ!」


……出たな、ゴイゴイ。スーにそっくりだ。


まあいい。

次のデコイを投入だ。


「我が名は――あくまはくしゃくディアブロぉぉ!」


「なっ!? 倒したはずでしょ!?」

姉妹は一瞬驚いたが、すぐに立て直す。


スーが叫ぶ。

「見せてあげる! 私の奥義――分身!」


……双子のあるある技だけどネタバレしてるって。


だが連携は本物だ。デコイ2号撃沈。


「よーし。ならば――物量戦だ!名付けてスパルタカス大作戦!」

古代ローマ、反乱を起こした剣闘士たちはローマ軍に自分が反乱首謀者のスパルタカスだと名乗りながら突撃していったという映画の名シーンだ。


「我こそはディアブロ!」

「吾輩こそディアブロ!」

「麿こそディアブロでおじゃる!」

「おいどんがディアブロたい!」


もはやカオス。


「ちょっ、数多すぎない!?」


ゴイゴイとスーは必死に戦うが、倒しても倒しても次が出てくる。


「戦いは数だよ!」


気分は完全にハイテンション。僕はデコイを次々と投入し、広間はディアブロだらけの地獄絵図になっていた。

姉妹が息を切らし始めたのを見計らい、僕はついに切り札を投入した。


「出でよ!機動石像ガンゴイル!」


重厚な音を響かせながら、巨大な石像が動き出す。

今回はエルザをパイロットにしてみた。


ゴイゴイスー姉妹は、華麗なコンビネーション攻撃を繰り出す。

しかし――。


「拳が……効かない!?」「石像が硬すぎるわ!」


音だけが虚しく響き、攻撃は通らない。

ガンゴイルは、悠々と防御もせず立ちはだかっていた。


「圧倒的じゃないか。我が軍は……」

――いやちょっと待って、エルザが変なキャラになっている。


僕はタイミングを見計らって拘束魔法を展開。

光の鎖で姉妹の身体を縛り上げた。


「ゴイゴイとスーは敗れた!なぜだ!」

まだエルザは変なキャラのままだ。ガンゴイルの副作用か?ちなみにガンゴイルからおりたエルザはいつものエルザに戻ってた。


気を取り直して……

「フハハハハ! 我こそが本物の悪魔伯爵ディアブロだぁ!」

「くっ、離せぇ!」

スーが叫び、ゴイゴイは無言で鋭い視線を送ってくる。


「尋ねたいことがある。なぜ姉妹なのに、スーだけが単独で活動していた?」


スーが観念したように答えた。

「姉さんは無口すぎて、あんまり人前に出られないの。だから私のアイドル冒険者活動のマネージャーをしてもらってるの」


「……私、本当はアイドルやりたい」

ゴイゴイが小さな声で呟いた。


「姉さん……!」


なんだこの姉妹ドラマ。

でも……悪くない。むしろビジネスチャンスの匂いがする。


「よし、決めた! 本日開設――『ディアブロ芸能プロダクション』!」


「えっ?」

「ディ、ディアプロ……?」


「我がお前たちをプロデュースしてやる! 姉妹ユニット『ゴイゴイとスー』としてデビューだ! 我のことは“ディアP”と呼ぶがよい!」


「ディ、ディアP!?」


こうして、突如誕生した謎の芸能プロダクション。

そして数週間後――。


『ゴイゴイとスー』の評判は瞬く間に広がり、

「スーのソロより姉妹ユニットの方が尊い!」

とファンたちの間でバズることになったのだった。


こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。

ついでに感想など聞かせてください♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ