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番外編 大きな時計は今日も時を刻む

「……あれ? ご主人様、これ、戦利品じゃないですよね?」

ディアブロ邸大広間。その中でひときわ目を引く巨大な柱時計にエルザが首をかしげた。


「おっ、いいところに気づいたね!」

僕は満足げに頷く。

「これは発明家のウルバンに特注した“特製仕掛け時計”だ!」


大きな木製の柱時計。ディアブロ邸お抱えの発明家ドワーフのウルバンに頼んで作ってもらった。

彫刻が施された外装には歯車とパイプのような機構が組み込まれている。

「ちょうど時報の時間だ。動くところを見てみようか」


ジーーーーー……

やがて柔らかなオルゴールの音が響く。

そして時計の下部にある小さな扉がゆっくりと開いた。


中から現れたのは――ミニチュアサイズの女騎士人形。

銀の鎧をまとい、軽やかにステップを踏みながら踊り出す。

だが次の瞬間、背後から見えない力に引かれ、両手を後ろで縛られる。


「クッコロ! クッコロ! クッコロ!」

軽快なリズムに合わせて、女騎士人形が何度もその言葉を叫ぶ。

そして扉が閉まると同時に、オルゴールは静かに止まった。


エルザは、しばらく無言だった。


「どう? なかなかいい出来でしょ? 鳩の鳴き声とかじゃなくて女騎士の決め台詞“くっ殺せ”って聞こえるのがいいかなと思って、製作してもらったんだ」

僕は自慢げに胸を張った。


「……はあ」

エルザの溜息が、静かな大広間に響く。


「で、これ……どこかに置くんですか?」

「贈り物にしようと思って。廃嫡された第1皇子の修道院に寄贈しようかなと」

「……」

エルザの顔が固まった。


第1皇子――かつてディアブロ邸の激闘(?)に敗れ、今は修道院で穏やかに過ごしている皇帝の息子。

女騎士が大好物だった変態な男であるために廃嫡された悲しきピエロ。


「……やめた方がいいと思います」

「そう?」

「また“悪趣味領主”って噂が広がります」

「そう?」


とりあえず、女騎士仕掛け時計はディアブロ邸に置いておくことにした。

客などおらず主人も普段は留守にしているため静まり返っているディアブロ邸。その中で時報のたびに「クッコロ」が鳴り響く。

誰に告げるわけでもなく今日も柱時計は時を刻んでいる。

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