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第4話 バカップルよ!別れろ!

◾️ディアブロ

屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。


●エルザ

アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。


挿絵(By みてみん)

「うーん。微妙に違うな…」

僕は机に並べた布切れを前に、腕を組んで唸っていた。


「それは、前回の義賊団が残していったスカーフですね。どうかなさいましたか?」

背後から静かに声をかけてくるのは、いつも通りの忠実なる従者――エルザ。


「いやね。ドン引きされるかもしれないんだけど……」


「これ、五人の匂いが全部違うんだよな」


「……はあ」

エルザは、じと目を隠しもしない。


「何なら当てる自信あるよ」

僕は自ら目隠しをし、ゲームを開始した。


くんくん……。

「これは赤いやつだ!」

「……正解です」


「こっちは青!そしてこれは緑!」

「……本当に当たっていますね」


「ふふ、我ながら才能を感じる……。さて、これは……」

鼻先に漂った香りに、僕は一瞬言葉を失った。


「これは……エルザ、君の?」


目隠しを外すと、そこにあったのは義賊団の色にはなかった黒い布。


「……お見事でございます、ご主人様」

エルザは小さく咳払いしながらも、どこか気恥ずかしそうに肯定した。


「いやぁ、なかなかコレクションも充実してきたなあ」

僕はうっとりしながら六枚のスカーフをまとめようとした。


が――。

「これは違います」

エルザが黒に伸ばした僕の手を止めた。


ーーーー


午後。

僕とエルザは、異世界では定番の冒険者ギルドにやって来ていた。

商人に変装した僕の目的は――「ディアブロ伯爵の殺害依頼」を出すこと。

そうすれば定期的に刺客が送られてくる、という寸法だ。


「父をディアブロ伯爵に殺されまして……仇を討ちたいんです!」

僕は涙ながらに、机の上へ身を乗り出す。


「そうですか……悪魔伯爵に……」

受付嬢は同情の眼差しを向けてきた。


「できれば、信頼できる方に“指名依頼”としてお願いしたいのですが」


「では、こちらの冒険者などどうでしょう」

紹介されたのは数人の冒険者。――が、全員男だった。


男には興味がない。


「男性ばかりですね。女性限定で出すことってできませんか?」

僕はストレートに尋ねた。


受付嬢は困った顔をする。

「いえ……今は男女雇用機会均等法で、性別を指定した依頼は出せないんです」


……なんだよ。前世の日本みたいなルール。


「しかし、なぜ女性限定で……?」


ヤバい。答えを用意してなかった。

まさか「刺客に対して、ちょっとやらしいことをしたいんです」なんて言えるはずがない。


「伯爵は男尊女卑がひどいと聞きました。ならば、女性に殺された方が伯爵は無念だろうと思いまして」


「……なるほど、そうでしたか」

おお、納得してくれた! 危なかった!


結局この場では依頼の相手を決められず、いったん休憩に。


ギルド併設の酒場に顔を出すと――目に入ったのは。

やたらイチャつく、むかつくバカップル。


「マーくーん♡ 次はどこのダンジョン攻略する?」

「ルミルミと一緒なら、どこでもいいよ」


……数分観察したが、ずっとこの調子だ。

正直、単純にムカついた。


そんな僕の耳元で、エルザが囁く。

「ご主人様。あのカップルパーティを屋敷に誘い込み、罠にはめて別れさせるというのは……どうでしょう?」


「…エルザさん。君はすごいことを考えるね」

今回は僕の方が引いた。


あのパーティに指名依頼を出した。

パーティ名は――「ラブ&ファイア」。


……名前からしてすでにムカつく。


しかも奴らにとっては初めての指名依頼だったらしく、舞い上がって二つ返事で受けたそうだ。

「ディアブロ伯爵を倒せば名声間違いなし♡」とか何とか。


よーし、ディアブロ邸で待ち構えてやろうじゃないか。


ーーーーー


「ご主人様、来ました」

エルザの報告。あ、これ完全にイラついてるやつだ。


まずは屋敷の“レベルチェック”だ。

仕掛けとモンスター、きちんと確認しておかないと。


「罠は……お、これだ。“転移陣(1人用)”!」

その名の通り、パーティの誰か1人だけを強制的に転移させる。


「これいいね!今回のためにあるようなものじゃん!」

バカップルをバラバラにできる、まさに神の采配。


「続いてモンスターは……おお、ゴーレム!やった!強そう!」

僕は思わずガッツポーズ。


「ご主人様、よく見てください」

エルザに冷静に指摘されて、説明文を凝視する。


……ゴーレム(リラクゼーション仕様)。

冒険者に“癒し”を与えるマッサージ専用モンスター。


「……マッサージ用?」


「はい。リラクゼーション効果が高いとのことです」

「…………」


いやいやいや、どう使えってんだ。


「ご主人様、これ使えますか?」

エルザの問いかけ。


僕はしばし黙り込み、真剣に考え込んだ。

――いや、考えれば考えるほど使い道が見えない。


バカップルの編成はこうだ。

男は槍使い――ランサー。

女は回復役の白魔導士。


だが、このディアブロ邸は一筋縄ではいかない。

今までの侵入者たちは、肉体ではなく精神を削られ、屈してきたのだ。


「ククク……お前たちの心が折れる音は、どんな音だろうな」


……エルザさん、それ僕のセリフ。

まあいい。


予定通り、バカップルが邸内に侵入してきた。


「ねえ、趣味悪くなーい?」

「マジでダセーよな」


……うるせぇ!

悪の伯爵邸なんだから、スタイリッシュとかおしゃれ感とか求めるな。

こっちはわざと不気味にしてんだよ。


最初の部屋は――タライの間。

今回は特に気合を入れて、大量に天井からタライを吊るしておいた。


「よし、今日も張り切ってタライ攻撃だ!」


ガンガン落ちるタライ! 本気で狙ってるのに、見事に当たらない!


「当たりませんね」

エルザが残念そうに言う。


ふっふっふ。だが狙いは“当てること”じゃない。

余裕ぶってるところにこそ、真の罠が待っている。


「余裕余裕〜!」

白魔導士ルミルミが調子に乗って笑っていた、その瞬間――


バチィッ!


「きゃああっ! マーくーん!」

「ルミルミーーーッ!」


転移陣、発動。

作戦通り、愛しのルミルミは別部屋へと転送された。


転送先には――ゴーレム(癒し用)を複数配置済み。

攻撃力は皆無でも、耐久度はバカみたいに高い。

とりあえず時間稼ぎには十分だ。


「ふっ……これでカップルの連携は断ち切られた」


男の方――ランサーには、足止めを山ほど仕込んでおいた。

特にゴーストには、ルミルミの悪口を吹き込んである。


「……お前の彼女、足臭いぞ……」

「……二股かけられてるのに健気だな……」

「……あの子、合コンで見かけたぞ……」


もちろん全部嘘だ。

だが、効果は抜群。


「な、なにぃ!? ルミルミが……?」

男は動揺して槍を振り回すが、ゴーストには物理攻撃が効かない。

空を切る音だけがむなしく響く。


その頃、転移先のルミルミは――。


「うぇ〜ん……私、攻撃力がないんですぅ……」

泣き出していた。


いや、頑張れよ!

こいつら攻撃してこないんだから!

思わず僕も心の中で応援してしまった。


その時――ピロン。

モニターにウインドウが開く。


《ターゲットにマッサージをしますか?》


「……どうでもいいや」

僕は軽い気持ちで「はい」を押した。


するとゴーレムが動いた。

あっという間にマッサージ用ベッドを生成し、ルミルミをそこにセット。

……見た目は処刑用ギロチンのような、おどろおどろしさ。優雅さゼロ。


「な、なにこれえええっ!?」

ルミルミが混乱して叫ぶ。


そこへようやくマー君が到着。

「ルミルミ! お前の足が臭くても、ビッチでも……俺はお前を守るッ!」


さっきまでゴーストの悪口で疑心暗鬼になってたくせに。

都合のいい男だな、おい。


「マー君! 私、そんなんじゃ――」

そこまで言いかけた、その瞬間。


「ぎゃああああああああっ!!!」


ルミルミの絶叫が邸内に響き渡った。

「ぷっ。ひどい顔で叫んでる」

今回はエルザがノリノリだ。


よく見ると……あれは足ツボマッサージだ。

「……痛いよね、あれ」

僕は思わず感心してしまった。


すさまじい攻撃力。


そして――満を持して黒幕登場。


「我が名はディアブロ伯爵! ようこそ我が館へ!」


「ルミルミを返せ!」

ランサーが槍を構える。


「ふむ。ルミルミというのは、この“足が臭くてビッチな女”のことか?」

僕は手元にあった彼女のブーツを掲げてみせた。


……正直、臭い。

ゴーストが吹き込んだ悪口は全部でっち上げだったはずだが、これは事実だったかもしれない。


「ル、ルミルミは……ルミルミは……そんなんじゃ……ない……よな?」

おいおい。聞いてどうするんだよ。愛の力はどこへ行った?


「ヒ、ヒドイ! マー君……ぎゃあああっ!」

タイミングよくルミルミの絶叫が響く。どうやら足ツボ第二ラウンドに突入したらしい。


その隙に、ランサーの周囲はゴーレム軍団とエンペラースライムで包囲完了。

――マー君のレベルじゃ勝てないだろう。ゴーレムが戦闘用なら、だけど。


「さあ、お前もあの女のようにひどい目に遭わせてやろう。抵抗すれば女は――」


「帰ります」

……は?


「足臭いし、ビッチだし、あんな奴のために拷問受けたくないので帰ります」


マー君、あっさりとルミルミを見捨てて撤退を選択。

まさか帰るとは思わなかった。


「う、うむ。気をつけて帰るがよい」

なんかいいセリフが浮かばなかった。


「うっう……マー君〜!」

置き去りにされたルミルミの泣き声が響く。


ここでゴーレムに呼ばれる。

「……あ、マッサージ終わったの? じゃあ解放してあげて」

僕はゴーレムに指示を出す。


「まあ、なんというか……元気出して」

声の掛け方がわからない。


「さっきのはマッサージだから。ほら、体の調子良くなってない?」

「……あ、本当だ」

ルミルミは足をさすりながら驚いていた。


「カップル修復できないかもしれないけど……頑張ってね」

「大丈夫です。あいつ、キープ君なんで」


……え、そうなんだ。

悪口攻撃、全部真実だったんじゃん。


ルミルミはすっきりした顔で帰っていった。マッサージ室のサンダルを履いたまま。


「これ……臭うので、どうにかしてほしいのですが」

エルザがルミルミのブーツを指差した。


「とりあえず戦利品だから、密閉容器に入れておこうか」


こうして、僕の宝物庫に、またひとつ“どうでもいい戦利品”が増え、ギルドには1組のパーティ解散届が提出された。

こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。

とても暇な方ですか?どうせ暇なら、ついでに感想など聞かせてください。

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