表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/119

第24話 異端審問官の背教的秘密

◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)

屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。


●エルザ

アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。


「異端審問官……?」

大司教がいかにも重々しい顔でそう切り出した。


「はい。教皇庁が派遣する異端審問官が、鞭打ち苦行団の件で近々このバームベルクへ来ます」


なるほど、あの件か。

公開SMクラブ――もとい鞭打ち苦行者集団。散々好き勝手やらせておきながら、いまさら取り締まるというのか。


「もうあの人たちは事実上解散してるでしょう。なぜこのタイミングで異端審問官なんて?」

眉をひそめる僕に、大司教は言葉を濁した。


「……どうやら教会内部には、彼らを好意的に思っていた人間も多かったようでして」


あー、なるほど。信仰か趣味か知らんが、あんなムチで打たれて悦ぶ集団を「敬虔」と言いながら楽しんでいる連中がいると。


「つまり、このバームベルク領で何らかの“事件”があったと見ているわけですね?」

僕がそう言うと、大司教は押し黙ったまま。


「そして、その事件とやらが宗教上の問題と判断されれば……異端として処罰する、と」


ふぅ。胃が痛い。

異端審問官なんて、どうせ腹の出た太ったジジイだろう? そんな相手に付き合うのはゴメンだ。


――と思ったら。


「今回派遣されるのは……若くして異端審問官に抜擢された才媛でして。彼女は神学校を……」


……才媛? つまり才色兼備。

ちょっと待て、それ美女ってことじゃないのか!?


「……侯爵閣下、聞いていらっしゃいますか?」

あー、やばい。例によって女性だと分かってからの話が入ってなかった。


「コホン。わかりました。大司教猊下から異端審問官殿には私自ら調査に協力するとお伝えください」


宗教裁判という重すぎるテーマなのに、胸の高鳴りが止まらなかった。


ーーーー


「エルザさん! 異端審問官ちゃんが来るってよ!」

私室に戻るなり、僕はテンション高めに報告した。


「……あの、異端審問官に“ちゃん付け”するのはご主人様くらいですよ」

エルザはいつも通り、冷めた顔で釘を刺してくる。


「で? どうせ調べてるんでしょ?」

「一応、報告書をご覧になりますか?」


やっぱり。

「さっすが〜。うちのエルザさんの前では隠し事なんてできないね」

ドヤ顔で報告書を受け取り、めくっていく。


「異端審問官の名前は……『エス』? あ、そういうことね」

「信仰に対するあまりに厳格な姿勢から、ついたあだ名は――『氷のこおりのいばら』です」

エルザがさらりと補足する。


なるほど、冷酷キャラか。嫌いじゃない。


さらに読み進めていくと――。

「例の公開SMショー、あの苦行団のリーダー“エム”。彼女とは同じ修道院で育った、と。しかも姉妹のように常に一緒にいたらしい」


「……ねえ、これってやっぱり“妹分の敵討ち”ってやつかな?」

「おそらくそうでしょう。それに――」


エルザが少し言い淀んだ。

「なに? まだあるの?」


「噂ですが……エス審問官とエム聖女は、その……百合的な関係だった、と」


「……あー。つまり“エスとエム”は恋人同士ってことね」


僕は思わず頭を抱える。

おいおいおいおい。別に同性愛は否定しないけどさ。

お前ら聖職者だろう? 修道院って神の家で何やってんの? いや、面白そうだからいいけど。


つまりこういうことか。

妹(恋人)を密かに庇ってきたけど、行方不明になった今となっては――

異端審問にかこつけて真相を調べ、妹を追い詰めた“犯人”を異端認定して裁こうと。


宗教の看板を借りた愛憎劇。ドロドロで最高じゃないか。


なんだか複雑な事情も透けて見えたけど――

それ以上に、氷の棘ことエス様に早く会いたくて仕方なかった。


ーーーー


「異端審問官のエスです。お目にかかれて光栄ですわ」


氷の棘こと異端審問官がやってきた。

第一印象は――思ったより普通。もっとこう、鞭を片手に「ひざまずきなさい」とか言い出す女王様を想像してたんだけどな。


「ようこそバームベルクへ。我が街は異端審問官殿のお手をわずらわせるような話はないはずですよ」


ニコニコしながら、内心では「できるだけ領地は見ないでほしい」と念じていた。

自由すぎる我が領地は異端だろうがなんだろうが寛容すぎるのだ。


「早速ですが、鞭打ち苦行団についてお伺いします」


やっぱりその話。宗教裁判は怖いので慎重に言葉を選ぶ。


「正直、よく分からないのです。いつの間にかどこか他領へ行ったようですね」


あいまいに濁して、様子見。


「では、彼らがどこに滞在していたか?」

「調べたところ、郊外の廃教会です。翌日にでもご案内しましょう。今日はゆっくりお休みください」


……で、その夜。


「本日は、信徒たちの罪を告白してもらいます」


エスが言い出した。いわゆる“告解”だ。普通なら聖職者と信徒が二人きりで行うもの。なのに――。


「公開でやります」


は? 公開? みんなの前で秘密を暴露するの? 嫌な予感しかしない。


結論から言うと、その予感は大当たりだった。


「エス様! オレは妹のBL本を勝手に売ってしまいましたぁ!」


男性信徒が涙ながらに大声告白。……いや、それ妹も被害者だろ。何を公衆の面前で妹の趣味まで叫んでんだ。


「それは罪深いこと。あなたには、神に代わり私が裁きを授けましょう」


「このクソ豚め!」

一瞬で氷の棘という名前にふさわしい雰囲気に変わり、鞭が鋭く振り下ろされる。


「エス様! もっと裁きを!」


おい。裁きのおかわり頼んじゃったよ、この人。

結局やってること、苦行団と同じじゃねーか!


「これであなたの罪はあがなわれました……」


――いやいやいや。どう考えても、あなたが異端だって。


こうして変な夜は更けていった。


ーーーー


翌日、僕は女王様…ではなく異端審問官を馬車に乗せ、例の廃教会へ案内していた。

途中、村人を見つけたので聞き取りをすることに。


「そういえば、あの教会にいた連中……ディアブロ伯爵がどうのこうの言ってましたねえ」

「ええ、悪魔伯爵に神の道を示すのが自分の使命だって、シスターみたいな女の人が言ってたのを耳にしましたわ」


……実はこの村人はくノ一が変装したもの。

審問官の目をディアブロに向けさせる。


「……エム」


異端審問官エスが、ぽつりと呟いた。

その小さな声を、僕は聞き逃さなかった。


やがて廃墟の教会に到着。

中は――うん、やっぱりというか、SMグッズの山。三角木馬だの、鞭だの、首輪だの。


エスは一つ一つを手に取って、真剣な表情で確認していく。


(……これ、捜査じゃないよね)

(……絶対違うと思います)


隣でエルザとアイコンタクト。意見は完全一致。


「侯爵閣下!」


氷のように鋭い声に思わず背筋が伸びる。

びっくりしたー。


「これらはすべて重要な証拠品です!教皇庁の私のオフィスに送ってください」


「はあ……」


いやいや、これ送るの? 荷札に“三角木馬”とか書けって?


「私はこのままディアブロ伯爵の元へ出向きます」


そう言い残し、エスはディアブロ領へ一人で向かっていった。


ーーーー


異端審問官エスが、ついにディアブロ邸に乗り込んできた。


「悪魔伯爵ディアブロ卿! あなたに異端の疑いがあります。お話を伺いたい!」


……冷静に考えてみれば“悪魔伯爵”って名乗ってる時点で完全に背教的だよね。そこはスルー?


「フハハハハ! 我が名はディアブロ! 悪魔伯爵ディアブロだ!」


悩んでも仕方ないので、とりあえず名乗ってみる。


「あなたが鞭打ち苦行団を匿っているという容疑があります。エム――彼女はどこにいるのです?」


やっぱり。結局エムちゃんを探してたのね。


「貴様の言うエムとは、この変態集団のリーダーのことか?」


そう言って扉を開けると――。


そこには“死にかけのセミ”ポーズで拘束されているエムの姿があった。


「エム!」

氷の審問官エスが思わず叫ぶ。


目隠しされたままのエムは状況を理解できていない様子だ。


「あ、ごめん。目隠し外してあげて」

僕がエルザに指示すると、エムの瞳がようやくエスを捉える。


「エス!」

感動(?)の再会。


だが――。


「悪魔伯爵! 貴様! よくもこんなことを!」


やっぱりあの拷問チックな体勢が許せないのか。そう思ったら――。


「私以外がこんなプレーをエムにするなんて! 許せん!」


……は? そっち? 怒るポイントそこなの?


「我は何もしておらんぞ。今日はこうして目隠ししてお休みいただいておったのだ」


事実、今日はエス様対応で手一杯だったから、完全に放置してただけなんだけど。


「こ、これは……! 放置プレイというやつではないか! まだ私もやったことがないのに!」


ああ、そういうことね。

――奥が深いな、この分野。


「お前たち、ずいぶんと仲が良さそうだな」


「あ、当たり前だ! 私たちは姉妹のように育ったのだから!」


――ほう。なら、これはどう説明する?

僕は懐から一冊の交換日記を取り出し、声に出して読んでやった。


『エムへ 今日の快楽に満たされたお前の表情、最高だった。新しい攻め方を試した甲斐があった』

『エスへ いつも愛情あふれる攻めをありがとうございます。これからもこの雌豚を心身ともに攻めてくださいませ♡』


「や、やめて!」

エムが顔を真っ赤にして叫ぶ。


「教会の教義では、聖職者同士の百合関係は認められていたのか? 悪魔伯爵が教皇庁にチクってやろうかな?」


――いや、自分で言っておいてなんだけど、“悪魔伯爵が教会に告げ口”って何だよ。


「くっ……わかった! 私はどうなってもいい。だが、エムだけは助けてやってくれ!」

氷の異端審問官が、ついに涙ながらに命乞いをしてきた。


「我にとって、貴様らが教義に反していようがどうでもよい。……隣のバームベルクの廃教会、あそこに移り住めばいいだろう。立場も名誉も捨てて、二人で暮らすがよい」


――こうして、エスとエムは廃教会で二人暮らしを始めた。


昼は美人シスターが姉妹のように寄り添って暮らし、

夜は――教会から、甘美で妖しい嬌声が漏れ聞こえるという。


さらに彼女たちは「会員制の告解」を始めた。

淫らな欲望を抱えた信徒たちが夜ごとこっそり訪ねるその修道院は、やがてこう呼ばれるようになる。


――“エスとエムのクラブ”。


やっぱり、この異世界に前世の文化を持ち込んだやつがいるんだよな。

それとも……神様の趣味なのか?

こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。

とても暇な方ですか?どうせ暇なら、ついでに感想など聞かせてください♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ