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第16話 詐欺ドワーフvsクレームモンスターおばさん

◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)

屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。


●エルザ

アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。


ディアブロ邸の玉座の間には、入り口とは別にもう一つドアがある。

ただ――開けても出てくるのは壁。


「……なんだこれ?」


気になってチートスキル【鑑定】を発動してみると、表示されたのはこうだ。


――『世界のどこかにあるペアとなるドアプレートをつけたドアと空間同士がつながる』


「マジかよ……」


どうやら“対”になるプレートが世界のどこかに存在するらしい。


「……まあ、いいか」

どうせ無理だろうと諦めた。


――そんなことよりヤバい事態が起きた。


ディアブロ邸の前庭がくっ殺第4騎士団の野営地になった。


“癒し処 ディアブロ庵”のマッサージ。


前回、団長に施したオーク達のマッサージを受けようと団全体で押しかけてきたらしい。


しかも騎士団相手に商売しようと商人たちまで集まってきて……前庭がまるでバザールになっている。


「いやいやいや、ここダンジョンだから! 静かで不気味なのが売りだから!」

僕は頭を抱えた。


「……ご主人様が“マッサージに連れてこい”なんて言うからですよ」

エルザが冷ややかに突き刺す。


オークから受けるのは凌辱ではなく極楽マッサージ。


「ああ〜っ、極楽……もう殺してくれ〜」


……新しいタイプの“くっ殺”を聞いてしまった。


「まあ、せっかくですからバザールを見てみましょう」


そういうわけで、エルザの提案で僕たちは老夫婦に変装してバザールを回ることにした。


「……あー、ガラクタばかりだね」


前庭にできた即席バザールは、掘り出し物もあれば胡散臭いガラクタも並ぶカオス市場。


「ご主人様。これは……?」


エルザが見つけた古びたドアプレート。

念のため【鑑定】すると――


“ディアブロ邸とつながるペアのプレート”


(やった! こんなところにあった!)


思わず声が出そうになった。

店主は小柄な女――ステータスを覗き見たらどうやらドワーフらしい。


僕がプレートを買おうとすると、値段は驚くほど安かった。


「なんか呪いのアイテムみたいなんだ。引き取ってくれれば安く売るよ」


やった!これでターゲットを屋敷に誘導できるぞ!


それより気になったのが、隣に積まれていたチラシ。


“エルフの皆様に耳寄りな情報! エビの養殖で一攫千金! 確実配当! 高利回り!”


(……これ、エルフ社会を震撼させた“エビの養殖詐欺”のパンフレットじゃないか!)


「ああ、それかい? うちの会社がエルフ向けに始めた事業さ。エルフ限定だからごめんね」


……ドワーフとエルフは仲が悪いって聞いていたけど、こんな汚い商売を。


「わしの友人にエルフがいてのう。紹介してもいいぞ」

僕は探りを入れる。


「本当かい? じゃあ説明するよ」


怪しげな笑みを浮かべ、ドワーフ女は語り始めた――。


「まずね! この投資は確実に儲かるんだ。このパンフレットを見て欲しいんだけど――ほら、こんなに大規模にやってるんだよ!」


「なるほどのう……」


……って絵じゃねーか! 何とでも描けるだろ!


「エビが災害で大量に死んだら大変じゃのう」


僕の質問にドワーフ女は胸を張って即答した。


「大丈夫! このエビは絶対に死なない品種なんだ!」


……は?どうやって食材にすんの!?


「なるほどのう。では養殖場に行ってみたいんだが、案内してくれるかの?」


核心に迫るとドワーフ女は目を逸らした。


「案内したいんだけど……今、モンスターが大量発生してて現地は危険なんだ」


はい出たー! 近づかせないための言い訳!


「さらにね、この投資には“お友達紹介システム”があって……紹介してくれた人はお友達の投資額を受け取れるの! さらにその友達が新しい友達を連れてくれば、その分も一部還元される仕組みなんだ!」


……ネズミ講じゃねーか!

これ絶対に法律で禁止にしなきゃ。


「実際にエルフの族長のお母さんは儲けてるよ」


族長の家が“成功”したのってこれ!?まあネズミ講は初期メンバーは儲かると聞いたが…


コイツに怪しい商売をさせるのはダメだ。


「……もっと詳しい話を聞きたいのう」


僕はそう言って、近くに建っていた小屋――例のドアプレートを取り付けられそうなドアを指差した。


「いやあ、お爺さん、目の付け所が違うね。友達のエルフにもぜひ勧めてよ!」


インチキドワーフ女を先に小屋へ入らせる。

扉を開けて踏み込んだその先は――ディアブロ邸だった。


僕とエルザはその瞬間を確認すると、魔法のドアプレートを外し、ダッシュで館主室へ戻る。


「ゼイゼイ……詐欺女は!?」

「――あそこにいます。調度品を値踏みしていますね」


さすが暗殺メイド、エルザは息切れせずにモニターを指さす。

しかし詐欺ドワーフ……こいつ逞しいな。


気を取り直してスピーカーから声をかける。

「フハハ! 我が名は悪魔伯爵ディアブロ! ゼイゼイ……よくぞ来た!」


「伯爵! よければ伯爵のお友達のエルフを紹介して!」


……コイツ本当に逞しいな。悪魔伯爵を前にして営業トークかよ。


問題は、今回は準備をしていない。なんとか時間を稼がねば。


「しばし待て! 三十分だけ時間をくれ!」


「いいよ。その代わりこのツボもらっていっていい?」


逞しい、いや図々しい!


「もっといいものをやるから待て」


さあ――大急ぎで“迎撃”……いや、“お仕置き”の準備だ!


ーーーー


さあて――まずは恒例の、ディアブロ邸のアンロック。


今回解放されたのは……


特殊スキル【帰宅】!

一瞬で館主室に戻れる、まさかの便利ワープ。


「……え、最初からこれ使ってれば、さっきみたいに必死で走らなくて済んだよね?」

ちょっと後悔。いや、かなり後悔。


さらに、今週のモンスター召喚。


――『ハードクレーマー』!

理屈っぽいクレームをぶつけて、相手の精神力をゴリゴリ削る恐怖の存在だ。カスハラとはコイツのためにある言葉。


「敵に回したくないな……コイツは」

見た目は成金おばさん。だが見た目より圧倒的にタチが悪い。前世がサラリーマンだった僕には恐怖のモンスターだ。


だが、今回はむしろこれがピッタリ。

インチキ投資話をふっかけてきたあのドワーフ女……お前の相手は、ハードクレーマーだ!


「さあ、お前のインチキ商法、ハードクレーマーでギッタンギッタンにしてやる!」


ーーーー


「あなたね? エビの養殖の勧誘をしている人は?」


バタンと扉が開き、ハードクレーマーモンスターが部屋に入ってきた。


「えっと、そうだけど……おばさんは?」

ドワーフ女は相変わらず馴れ馴れしい。


「言葉遣いがなってないわね。まあいいわ。私がお話を伺います」


そう言うなり、クレーマーモンスターは腰を下ろした。


「じゃあ、理解してもらわないとね!」

ドワーフ女は嬉々として説明を始める。


だが――。


「“絶対儲かる”とは誰が保証してるのかしら?」

「し、信頼ある我が社が……」


「死なない海老? どういうこと? 食材にならないじゃない。エビフライはゾンビにでもなるのかしら?」

「そ、それは秘密の調理方法が……」


「現地に行けないってどういうこと? あなたが言った岬を知っているけど養殖場なんて見たことないわ」

「え、ええと……最新の情報では……」


クレーマーモンスターは矢継ぎ早に突っ込みを入れ、ドワーフ女はしどろもどろで返すたび、さらに痛烈なツッコミが追撃される。


ここまでクレーマーモンスターは正論しか言っていなかった。

だが――ここからが本領発揮だった。


「……ごめんなさい。本当はこれ、全部嘘なんです……」


ついに、ドワーフ女が降参した。

しかし、クレーマーモンスターは止まらない。


「あなた、こんなインチキ商売をして、ただで済むと思ってるのかしら?」


「ぼ、僕……実はドワーフなんだ。でも、鍛冶の能力が低くて……仲間から“エルフにひと泡吹かせて来い”って言われて……」


……ドワーフ社会も世知辛いな。

だが、クレーマーは容赦しない。


「そもそもあなたの能力が低いのが原因でしょ? 自分の無能を棚に上げて! これだから若い子は!」


出た、人格攻撃!

これこそクレーマーモンスターが嫌われる理由だ。相手の自尊心を粉々にする。


「本当に反省しているよ。許しておくれよ……」

挿絵(By みてみん)

ドワーフ女はついに泣き出した。

しかし――。


「泣いたから許されるとでも思ってるの? 加害者のくせに被害者ぶらないでちょうだい!」


涙すら燃料にして攻撃する。

まさに精神力クラッシャーである。


「あなた! 今の仕事を辞めなさい! この仕事、向いてないわ!」


クレーマーモンスターの言葉は容赦がない。


「うううう……」

ドワーフ女は完全に泣き崩れてしまう。


そこへ僕が高らかに笑った。

「フハハハハ! 悪魔伯爵ディアブロ! お前に力を貸してやろう!」


「伯爵……僕はどうすれば……」


「お前、鍛冶の適性がないそうだな?」


「そうなんだ。でも、ドワーフで職人になれないのは落ちこぼれとされてて……」


「ならば鍛冶以外の職人をやればいい。たとえば服飾職人なんかどうだ?」


「は?」


僕の提案に、ドワーフ女はぽかんと口を開けた。

だが――実はステータスをチェックしていた僕は知っている。鍛冶職人の適性は絶望的に低いが、服飾職人の適性はずば抜けて高いことを。


「よければここで訓練するがよい!」


その合図で、ゴーレム(万能型)と、手先が器用なオークが現れる。


「ディアブロ職業訓練センター、本日開校だ!」


こうしてドワーフ女は半ば強制的に入校させられた。ゴーレムの丁寧な指導でスキルが磨かれる。オークは仲間の同級生として励ましてくれる。

そしてクレーマーモンスターは彼女にダメ出しとアドバイスを与えていく。


――数時間後。


「……すごいな。コイツら」

「元々素養はあったんでしょうけど……」


エルザも目を丸くする。たった数時間でそこには立派なファッション職人へと成長したドワーフ女がいた。


「伯爵……僕、職人として頑張っていけそうだよ!」


こうしてドワーフ女は詐欺商売を捨て、新たな人生を歩み始めたのだった。


「クレーマーが結果として救済になったな」

「詐欺から足を洗わせるためとはいえ……精神攻撃がえげつなさすぎます。不愉快になるレベルでした」


……やっぱり、クレーマーモンスターを呼ぶ時は慎重にしよう。

こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。

とても暇な方ですか?どうせ暇なら、ついでに感想など聞かせてください♪

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― 新着の感想 ―
『エビ養殖』ネズミ講を知っている人なら、腹を抱えて笑えるネタ、バカバカしく、笑えます。 そして、ネズミ講(マルチ商法)に手を出した人を厳しく非難し改心させる。 最後にエルザの 「詐欺から足を洗わせる…
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