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第15話 女騎士団の秘密の癒しスポット

◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)

屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。


●エルザ

アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。


挿絵(By みてみん)


「――演習地に、バームベルクを……ですか?」


皇帝家直属、第4騎士団の伝令役が面会を求めてきた。

次回の軍事演習に、僕の領地を貸してほしいという。


ちなみに第4騎士団は――第1皇子専属。しかも全員が女性騎士で構成されている。

なにそのハーレム軍団。第1皇子め……けしからん。


ただ、これは妙に引っかかる。


伝令役の女騎士は胸を張り、きっぱりと言った。

「ハッ! 滞在費用はすべて騎士団が負担いたします。ですので、キャンプ地としてディアブロ伯爵領との境界付近をお貸しください」


……境界? あのあたりは無人地帯だし、断る理由も無い。


「なぜディアブロ領との境界地域なんですか?」

僕が問いかけると、伝令役は一瞬視線を泳がせてから、言葉を濁した。


「それについては……演習の折に団長より直接、閣下に説明があるでしょう」


ふむ。やっぱり何か隠しているな。


――っていうか、この子……。

よく見たら、第1話で「くっ、殺せ!」とか言ってたあの女騎士じゃん!

その時は「エロいことはやめてほしい」と涙目で懇願してきたのに、今は「ハッ!」なんて勇ましい声を出しちゃって。


自分のブラジャーを没収した相手が目の前にいるとは夢にも思ってないんだろうな。


……しかし。この予感はワクワクする予感だ。


ーーーー


演習当日。

面白そうだから、僕は視察を兼ねて演習地へ向かった。


ディアブロ領との境界地帯。

農業ができない草原で、人の気配など皆無。だが今日は第4騎士団が野営地を築いていた。


「閣下にわざわざお越しいただきありがとうございます」

伝令役の女騎士が恭しく迎える。


「いえいえ。精鋭部隊の演習ですからね。我が家の騎士団にも良い刺激になりますよ」

僕はさらりと答えると、後ろで控えていたバームベルク家の騎士団幹部がぺこりと頭を下げた。


「団長は現在、訓練の指揮中です。しばらくご見学ください」

伝令役に案内され、僕は演習場の中心へと足を踏み入れる。


そこで目にした光景は――予想の斜め上だった。


挿絵(By みてみん)


「くっ殺せ!」

「くっ殺せ!」


団員たちが二人一組でペアを組み、片方が縛られ、縛られた方が揃って叫ぶという……謎の大合唱。

そこかしこで「くっ殺コーラス」がこだまするカオスな光景に、僕の眉が思わず引きつった。


「お前たち!もっと声をそろえろ!」

指揮棒を振りながら叫ぶドヤ顔の騎士がいた。


「あそこで号令をかけているのが、我らが団長です」


この訓練、いったい何の意味があるんだ?

僕の家の騎士団員たちも、明らかに目を泳がせている。

団長はデキる女って感じの美女だが、やっていることがアホすぎて台無しだ。


「し、失礼ながら……この訓練には、どのような意図が?」

恐る恐る尋ねると、返ってきたのは予想を遥かに超える回答だった。


「これは――第1皇子殿下の発案によって始められた、我が第4騎士団だけの特殊訓練であります!」

伝令役はフンっと鼻を鳴らし自慢げに言う。


……やっぱりか!

アホ皇子の趣味丸出しじゃねーか!

ていうかこんなバカバカしいことを自慢げに言うなよ。ここまで来るとアホの変態集団じゃねーか。


「汚いオークめ!お前の好きにはさせんぞ!」

「我らの心までは汚すことはできない!」


どうやら「くっ殺」以外にもバリエーションはあるらしい。

どうでもいい。驚くほどどうでもいい。


……けどまあ。ある意味、珍しいものを見せてもらった気はする。


ーーーー


僕は会見用の天幕へと案内された。

団長との面会は“1対1”の指定。同行した我が家の騎士団やエルザには外で待ってもらうことにした。


中に入ると、予備の鎧や装備品がずらりと並んでいる。

……しかし、こうしてまじまじ見ると――やっぱりおかしい。なんで素肌に直で鎧を着るようなデザインなんだ。機能性に欠陥があるだろう。これも皇子の趣味か?


「侯爵閣下にご覧いただき光栄ですわ」

やがて団長が姿を現した。堂々とした雰囲気。


「それで、演習地の提供以外に御用は?」

僕が切り出すと、団長の表情がきりりと引き締まる。


「実は……本当の狙いは演習ではありません」


やっぱりな。


「――ディアブロ伯爵の命。それが皇子殿下のご希望です」


……来たか。皇子もしつこいな。


「皇子殿下とはいえ、仮にも諸侯を私怨で討伐すれば大問題になるのでは?」

僕の言葉に団長は悔しそうに唇を噛む。


「百も承知です。我々も表立っては動けません。ですので今夜、私ひとりで動きます。それを黙っていただきたいのです」


……なるほど。騎士団全体ではなく、団長ひとりで“勝手に”越境するから、責任は自分にあると。

完全に皇子の尻拭い役だな。


「つまり勝手に行動するから、黙認しろと?」

「はい……」


「しかし、それなら私に知らせず勝手に行けばよかったのでは?」

「それも考えましたが……」


「……団長。貴女は、皇子の暴走を私に止めてほしいのですね?」

「……まあ、そう取っていただいて構いません」


――哀れだ。

不正を強いる上司に従わざるを得ない部下。

もし事が露見すれば、彼女はひとりで全責任を負うつもりなのだろう。

まるでサラリーマンの悲しい縮図だ。


「……わかりました」

僕は静かに答えた。


急にシリアスな空気が漂う。だが――舞台は整った。


ーーー


恒例のアンロックチェックをする。


【罠】

天井や壁から飛び出す槍。……といっても当たっても痛いだけの安全仕様。


【モンスター】

オーク(優しい)。性格はおとなしくて心優しい。器用な手先を持ち、夢は「いつか女騎士を捕まえること」。

……いや、夢が。まあオークっぽい。


どちらも戦力にはならない。だが――今回の客人、女騎士団長には楽しんでもらえるかもしれない。


――――


「ご主人様。騎士団長がひとりで参りました」

エルザが淡々と報告してくる。


「……今回は彼女の悲哀を知ってしまったからな。純粋に迎撃する気分になれないんだ」

僕は珍しく弱音を吐く。


だがエルザは冷たい視線でピシャリと返す。

「何を言ってるんですか。それも含めて全力で迎え撃つのが、ご主人様の役割でしょう?」


なすべきこと――美女を変な罠で捕まえて、変なことをする。それが僕の宿命か。


「……うん? カッコつけて考え込んだけど、やってることってやっぱり変だよね」

「お気づきでしたか。バカバカしい設定を、どこまでシリアスで通せるか試してみたかったのですが」


……遊ばれてる?

でも――なんだか吹っ切れた!


「よし、やるか! ディアブロ流のおもてなしと行こうじゃないか!」


ーーーー


重々しい扉が音を立てて開く。

入ってきたのは、第4騎士団の団長。


「――ディアブロ伯爵! ここで決着をつける!」

名乗りを上げる。


「フハハハハ! 悪魔伯爵ディアブロだ。最奥で歓迎しよう!」

僕はわざと大仰に名乗り返した。


団長は迷いなく屋敷を進む。

骸骨剣士の軍団に囲まれても一切動じず、天井や壁から飛び出す槍も軽やかにかわす。

タライや水鉄砲といったギャグ罠もものともせず、涼しい顔で突き進んでいく。


ここまで大量に仕掛けたのだから、せめてかすり傷ひとつくらいは……と思ったが、団長は息ひとつ乱さない。


「なかなかやるね」

僕が感心すると、エルザが横で静かに言う。


「相当な実力者です。今回はご主人様自ら迎撃なさるべきかと」


進言がなくても、そのつもりだった。

彼女の誠実さと覚悟には、罠ではなく僕自身で応じるべきだ。


やがて団長は玉座の間へと辿り着いた。


「悪魔伯爵ディアブロ! お相手しよう!」

「第4騎士団長。いざ参る!」


刃と刃がぶつかり合い、火花が散る。

彼女はかなりの実力者だ。だが――僕はレベルがカンストした異世界転生者。

力の差は歴然で、団長もそれに気づいているはず。


それでも彼女は引かない。勝てないと知りながら、なおも真っ直ぐに向かってくる。


「……!」

僕は彼女の剣を払い飛ばし、首元へと剣先を突きつけた。


勝負あった。


「――くっ! 殺せ!」

その言葉は“言わされている”ものではなく、覚悟を宿した眼差しから放たれた本物の叫び。


「フハハハハ! その覚悟、気に入った!」

僕は特殊スキル《バインド》を発動する。


光の鎖が現れ、団長の四肢を縛り上げた。

凛とした女騎士の体は、煌めく鎖に拘束され、静かに膝をつく――。


「――これからがディアブロ邸のおもてなし本番だ!」

僕の高らかな宣言と同時に、控えていたオーク軍団がぞろぞろと入場してきた。


「オークか……覚悟はできている!」

騎士団長が凛然と構える。

……あれ? 訓練のときの決め台詞と微妙に違うんじゃない? まあ、いいか。


だが次の瞬間、彼女の想定は大きく裏切られる。

オーク軍団は団長を乱暴に扱うどころか、驚くほど手際よく鎧を外し、下着姿に。

さらに優しい手つきで香油を塗り込み、全身をマッサージしはじめたのだ。


「な、なにを……っ!?」

完全に予想外の展開に、団長は目を白黒させる。


「本日開店――『癒し処・ディアブロ庵』!」

「い、癒し処……?」


くっ殺に備えていた団長の脳内台本は木っ端微塵になった。

オークたちは乱暴どころか、職人の手つきで鎧を外し、香油を温め、呼吸に合わせて圧を乗せる。


「日々、上からの無茶振りに耐える中間管理職よ。ここでMPを満タンにして帰るがいい」

僕は大袈裟に言い放った。


「……はぁぁ……気持ち良すぎる……いっそ殺せ……」

「うむ。日々の務め、ご苦労である。今日はオーク達の新人研修も兼ねているから、お代はタダで良いぞ」


「あの……その……部下達も連れてきてよろしいでしょうか?」


えっ? オークにマッサージされに来るの?くっ殺騎士団が?

なんだそのシチュエーション。まあ面白そうだからやってみるか。


「う、うむ。何人でも連れてくるが良い!」


こうして騎士団長は穏やかな顔で帰っていった。


「あの...本当に騎士団が来たらどうするんですか?」

「あ」

エルザの一言で僕は安請け合いしたことを後悔した。

連休が終わりますね。作者も癒しが欲しいです。


こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。

とても暇な方ですか?どうせ暇なら、ついでに感想など聞かせてください♪

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