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第14話 マザコンエルフはずっと彼女を好きだった

◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)

屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。


●エルザ

アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。


挿絵(By みてみん)


バームベルク領内には古くからエルフが住む森がある。

そのエルフの族長が代替わりしたということで、挨拶にやってきた。


「……」


沈黙。

応接室で僕と対面した新族長は、何も喋らずに棒立ちしている。


「ほら、フリントさん……練習したでしょ」

隣にいた女性が耳元で囁いた。


……ん? てっきり妻かと思ったら違うらしい。

僕が混乱していると、家令がこっそり耳打ちしてきた。


(付き添いの方は、族長のお母様です)


え? 母親連れて来たの!? しかしエルフ寿命長いからか同世代に見えた。


「エルフの族長になりました……フリントです……」


声ちっさ!


「う、うむ。私がハインリヒ・フォン・バームベルクだ。これからも友好的な関係を築ければと思う」


なんとか返す。が、沈黙。気まずい。


「フリントさんは武芸が得意ですのよ」

沈黙を埋めるようにママが話し始めた。

弓術は歴代最高クラス――とのこと。

まあ、ママが言うには。だが。


結局、フリント本人はほとんど喋らず、ママが代弁してばかり。

地獄の族長就任挨拶はこうして終了した。


――


私室に戻って、エルザと話す。


「……何あれ?」

思わず口から漏れた。

前世で見た料亭の女将の会見か?


「過度のマザコンらしいです」

エルザが淡々と解説する。

冬ひこ...じゃなかったフリントさん。大丈夫?


「あのマザコン族長ですが婚約者がいます」


「ブッ!!」


僕は盛大にお茶を吹いた。


……いや、無理でしょ。あれじゃ結婚生活なんて成立しないって!


「実は……彼の婚約者から相談を受けています」


エルザが切り出した。


「エルフの里の政略結婚らしいのですが、彼女――ミーナはマザコン族長との結婚に悩んでいるのです」


「うーん……気持ちはわかる」


「実は……ミーナは思い悩んだ末、族長の証である宝珠を密かに盗んでしまいまして」


「は?」

頭が追いつかない。


「このままマザコンと結婚させられるなら宝珠を破壊し、里を滅ぼすと……」


「おいおい待て待て!それ領地全体に被害が出るやつだ!確かエルフの宝珠って、周囲のモンスターを鎮めてる結界の源だろ? それ壊されたら魔物ラッシュ不可避だけど」


僕が頭を抱えていると、ひとつ閃いた。


「……なあ、宝珠が盗まれたこと、まだ誰も気づいてないの?」


「普段は宝箱にあるので、誰も気づいていないそうです」


「じゃあさ……こうしよう。『ディアブロに盗まれた』ことにして、マザコンちゃんとミーナに奪還に来てもらう。で、そこでマザコンが泣き出したら――ミーナが宝珠を取り返したことにすればいい」


エルフの社会は宝珠に絶対服従だ。ミーナが取り返せば誰も彼女に逆らえなくなる。マザコンとの婚約も白紙だ。


「なるほど。さすがでございます、ご主人様」


エルザも納得の作戦らしい。もっと褒めて。


ーーーー


まずは問題の婚約者ミーナと会うことにした。


「初めまして侯爵様。エルフ族長フリントの婚約者、ミーナです」


……普通に美人だ。けど少しやつれている気がする。


「なんであんなマザコン……フリントと婚約することになったの?」

素朴な疑問をぶつけると、ミーナは苦い顔をした。


「実は、父がビジネスに失敗して……」


「ビジネス? エルフって狩猟採集じゃないの?」


「かつてはそうでしたが、今では普通に貨幣経済なんです。父は商人の誘いで、エビの養殖に投資を……結果、大失敗しました」


「エビ……!?」


……絶対嘘だなそれ。


「エビの養殖場とか、見たの?」


「いえ。ですがパンフレットには、とても立派な施設の絵が……」


完全に詐欺じゃねえか!


「で、その失敗とフリントとの婚約がどう繋がるの?」


「父は借金をフリントの家からしていまして……。フリントの家は投資で成功して裕福なんです」


エルフも格差社会か。世知辛いなぁ。


「それで借金チャラの代わりに、娘を嫁に寄こせと?」


「……まあ、そういうことです」


借金婚約! いやー、なんて言うか……


「ちなみに……馴れ初め的なのは?」


「全然記憶にないんです。フリントから“いついつ、世界樹の下で”とか“神秘の泉で”とか言われましたけど……確かにその時その場所にはいました。でも一人で」


……それ、完全にストーカー。


ーーーー


次の日、僕はエルフの里に出向いた。

目的はもちろん、宝珠が盗まれた大騒ぎを仕込むため――表向きは「族長就任の友好親善訪問」ってやつだ。


「侯爵様がお越しくださるなんて!」


「……」


やっぱりフリントちゃんは無口。で、ママが饒舌。安定の母子コンビである。


「手土産を持って参りましたが、エルフの宝珠には敵いませんでしょう。一度、宝珠を拝見してもよろしいですか?」


「喜んで!ぜひご覧ください!」


「ミーナさん、宝珠の宝箱を持ってきてちょうだい」


完全に召使い扱いだ。姑根性、全開。


いざ箱を開けると――中身は空っぽ。そして紙切れ一枚。


『宝珠は預かる 悪魔伯爵ディアブロ』


「な、な、な、なんなのよこれ!? ミーナさん!あなたが宝珠磨きの担当だったわけよね!? 大体……」


ママがブチギレ。だが僕が慌てて割って入る。


「まあまあ落ち着いてください。新族長が取り返せばいいじゃないですか。それに、ミーナさんと一緒に奪還に挑めば――フリント族長の就任にも結婚にも箔付けになりますよ」


「……た、確かにそうね」


ママは納得したように頷いた。

よし、このまま計画通りディアブロ邸に誘導でき――


「私も参ります! フリントさんをお守りするのは母親の役目です!」


ええええーー!?


……まさかの母親参戦。予定外すぎる。


フリント母子とミーナがディアブロ邸に到着した。

さあ今回の迎撃ラインナップを確認だ。


今回アンロックされたのは――


【罠】時限式ギロチン

 歯が落ちてきても痛くない安全設計。完全に脅し用。


【モンスター】火炎ドラゴン(幼生)

火を吐く。見た目は派手だがお弁当を温めるのにちょうどいい


うーん。まあいいか。


――


「ご主人様。フリント母子とミーナが来ました」

館主室のモニターに映る三人組。


「出て来なさい!宝珠を返してもらいます!」

響き渡るのは母親の声。

族長さん、なんか言えって。


僕は高笑いで応じる。

「ふはははは! 我が名はディアブロ!我が屋敷の最奥で待つ。辿り着けたら交渉してやろう!」


挑発に応じ、エルフパーティは館内へ。


「ミーナさん!あなたが先頭を歩きなさい」


ママが容赦なく命令。盾にする気まんまんだ。

だが、フリントが意外な行動をとった。

母親を手で制して、自分が先頭に立ったのだ。


……お?


「自分が先頭に立つつもりか」

「意外でしたね。ミーナを庇いましたよ」


僕とエルザは顔を見合わせた。

――マザコンにしては、少しだけカッコいいじゃん。


まずはお約束の――タライだ。


ガコンッ!

天井から3人めがけて落下する。


フリントは素早く反応し、自分とミーナを狙ったタライをキャッチ。だが――


ゴンッ!

「いったぁいわね!」


ママは頭直撃。


続いて水鉄砲。

「つめたいわね!」

びしょ濡れになるのはママだけ。


火炎ドラゴン(安全仕様のやつ)

「アチアチ!」

やっぱりママだけ被害を受ける。


ガイコツ剣士登場。

「ひーっ!」

真っ先に悲鳴を上げるのもママ。


――とまあ、罠もモンスターもフリントはしっかりミーナを庇いながら進んでいくのに、ママだけは毎回きっちりダメージを受けている。


やがて一行は少し広めのホールに到着した。


「はあ、はあ……少し休憩しましょうか」

ママが息を切らし、休憩を提案。


だがその瞬間、ホールの奥からガイコツ騎士軍団がぞろぞろと迫ってくる。


「きゃーっ!」


慌てて三人は散り散りに逃げ込み――それぞれ、1人ずつ隠れられそうな場所に飛び込んだ。


だが、そこには僕が仕掛けておいた転移陣(1人用)が。


フリントが気づいた時には――

ミーナとママ、二人の姿はすでにどこかへ飛ばされていた。


フリントが広間に足を踏み入れると――そこには壮絶な光景が待っていた。

ママとミーナ、二人が並んでギロチン台にセットされていたのだ。


「ふはははは! よくぞここまで辿り着いたな!」

僕は高らかに宣言する。

「宝珠を返してやろう! ただし――その前に試練だ!」


「フリントさん!」

ママが叫ぶ。必死の声。


「これ以上近づけば命はないぞ!」

ガイコツ剣士たちが二人の喉元に剣を突きつける。


「今宵はどちらかに生贄になってもらう。どちらを助けるかは族長である貴様が決めろ!」


「フリントさん! ママを早く助けてちょうだい!」

ママが絶叫。……自分で言うか普通。


僕は更に煽る。

「二人の頭上にはリンゴがある。そのリンゴを射抜けば、ギロチンは解除される仕掛けだ! さあ、どちらのリンゴを狙う!?」


――まあ実際の仕掛けは何でもよかったんだけど、弓矢の英雄譚にはリンゴでしょ。


「早くしろ!二人ともギロチンの餌食だぞ!」


フリントが弓を構える。

矢が放たれ――


ヒュン!


矢は迷いなく、ミーナの頭上のリンゴを射抜いた。


その瞬間、ミーナのギロチンは止まり、ママの方は――ガシャン!

刃が落ち、気絶する母親。


「フリントさん!」

涙ぐむミーナ。


……ついにマザコンを乗り越えた瞬間だった。


ーーーー


フリントは見事に宝珠を取り返し、エルフの里へ凱旋した。


それまで彼は「マザコン族長」などと陰口を叩かれていたが――宝珠を取り返した功績で、一気に評価がひっくり返った。


一変したのは彼だけではない。


まずママ。

あのギロチン事件が衝撃だったらしく、ようやく子離れ。

今ではフリントと別居して、森の奥で隠居暮らしをしているという。


そしてミーナ。

なんとフリントと結婚した。

ディアブロ邸でミーナを庇い続けた姿に心を動かされ、見直したらしい。


さらに判明したのは――

フリントは本当の意味でマザコンではなく、「母親が子離れしてくれないのを我慢していた」だけらしい。

なるほど。無口だったのも、喋ればママが全部かぶせてくるからだったのかもしれない。



フリントも大好きなミーナと結婚できて幸せそうだから、良しとしようかな。


こうして、エルフの里を巻き込んだお騒がせマザコン騒動は――無事、幕を閉じたのだった。

日曜日ですね。昔のドラマなど見てもいいかもしれませんね♪


こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。

明日は月曜日ですが今日くらいは笑ってください^_^

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