第70話 暖炉前のかわいい悪魔とボッチ伯爵
1話完結型なので気楽に読んでください!
◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)
屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。
●エルザ
アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。
「にゃーお」
「ニコ。今日もあんたは暖かいね〜」
「マスター、肉球プニプニですよ。かわいい〜」
「え、そうなの?本当ね。猫ってこんなにかわいいものなのね〜」
最近、ディアブロ邸に迷い猫がやってきた。猫は屋敷のみんなに愛想を振り撒き、誰にでも懐いた。いつしかニコと呼ばれ、屋敷中のアイドルとなった。暖炉前は、いつの間にかニコの定位置になっていた。
まるで最初から、そこにいるべき存在のように。そしてニコを中心に人が集まる。
ただし、僕を除いてだ。
このニコ、なぜか僕にだけ懐かない。
屋敷のエルザも幽霊執事も、くノ一軍団も、おもてなしオークにも、そしてミスターSAIZOUことマッサージ師のオッサンにも懐くのに、なぜか僕には懐かない。
「今日もモフモフさせてくださいねー」
女性陣がニコを囲んで団欒している。
「僕にも抱っこさせてよ」
僕が近寄ると……
「シャー!」
ニコは容赦なく態度を変える。
なんで、僕にだけ威嚇するの?
「旦那様、ニコに嫌われちゃいましたね」
「ご主人様。表情が固いんですよ。ほら、にっこり笑って」
「領主殿。もっとスマイルですぞ!」
幽霊執事と氷のメイドのエルザに言われたくない。
オッサン。お前には一番言われたくない。
「ぐっ……ニ、ニコちゃ〜ん。おいで」
「シャー!」
威嚇してきた……
なんだこのクソ猫は。可愛くないな。
「あれあれ、ご主人様。怖いでちゅねー」
いつものエルザじゃない。あのエルザがデレている。
クソ!なんだこのモヤモヤは!
「ダメですよ。旦那様。ほら、領主としてのお仕事に戻ってください」
ぐう。女性陣に追い返されてしまった。猫に嫉妬するなんて、自分でもどうかしているとは思うが……悔しい。
そんなモンモンとした気持ちのまま、夜を迎えた。
ーーーー
屋敷中が寝静まった頃。何となく眠れなかった僕は、屋敷の中を少し歩くことにした。
「……はい。お任せ……。ディアブロ邸は…………ています。はい。内部………順調……」
誰も使っていない部屋から、話し声が聞こえた。
「誰かいるの?」
僕がドアを開けたところ、そこには衝撃的な光景が。
なんと猫のニコが怪しげな通信機を使って誰かと話をしていた。
「なっ!?お前は一体?」
「聞かれちゃったかな?まあ、いいや。僕はニコラウス。とある方の使い魔さ。ディアブロ邸の内部崩壊が僕の任務。まあ、ほぼ達成できたようなものだね」
まどろっこしいことを……。こんな面倒な作戦はあいつらしか考えられない。
「貴様!魔王軍のスパイか?」
「よくわかったね。でも手遅れだよ」
猫のくせに余裕な態度。ムカつくな。
「なんだと?もう僕にバレたんだ。すぐに屋敷から追い出してやる!」
「そう簡単にはいかないと思うよ〜。試してみればいいじゃないか。みんな僕にメロメロじゃないか。クールなメイドのデレた顔。かわいいじゃないか。それじゃね。ボッチ伯爵」
そう言い残して、猫のニコ……いや、魔王軍スパイのニコラウスは姿を消した。
舐めやがって。僕のエルザをデレさせるとはゆるせん。
明日、エルザ達に指示して、あの憎たらしいネコを追い出すように仕向けよう。
ーーーー
翌朝。僕は早速、屋敷の使用人たちを集めて宣言する。
「この猫は魔王軍のスパイだ。早速、拷問して目的を吐かせるんだ!」
シーン……
だれも何も言わない。キョトンとしているようだ。
「あの、ご主人様?猫に相手されないからと言ってそれは無いのでは?」
「そうですよ。旦那様。冷静になってください。猫ですよ猫」
「領主殿。かわいいですぞ〜。ほれー」
「にゃー。ゴロゴロゴロゴロ」
誰も僕の言うことを信じてくれない。
「でも、昨夜、こいつ誰かと通信してて……」
「ご主人様。夢でもみてたんじゃ無いですか?」
「なんか、通信機みたいなものを……使って……」
そういえば、あの通信機はどこへ行ったんだ?
「そんなものどこにも無いじゃ無いですか。旦那様は夢でもみたんですよ」
「お疲れでしたら、温泉にでも入ってリフレッシュしましょう」
僕はニコの方を見た。お前は本当に何者なんだ?と問いかけるように。
すると、ニコは前足を目にあて、舌を出してあっかんべーのポーズを取った。
夢なんかじゃない!
こいつ、やっぱり僕を嵌めようとしている!
「昨夜は変な夢を見たのかな。ごめんね。ハハハハハ……」
ここで、みんなとやり合っては孤立してしまう。そう思ったので、一旦、引き上げることにした。
ーーーー
その後、僕はニコの行動を観察した。
定期的にどこかに姿を消すことがわかった。おそらく、魔力の補充か、外部との連絡か何かをしているのだろう。
(これだ!)
僕は発明ドワーフのウルバンに頼んで、ニコへのプレゼントを作ってもらう。
「フフフ。これで貴様の正体を暴いてやる……」
ーーーー
夕食後、暖炉の前には団欒の輪ができていた。ただし、僕はその輪の中には入っていない。
「ニコちゃ〜ん。おねえさんからプレゼントですよ〜」
エルザがニコの首に首輪をつける。
そう。この首輪こそが僕からのプレゼントだ。
「ニコ。よかったな。ニコが迷子になっても場所がわかる魔道具なんだ。これで、いつでもどこでもお前の居場所がわかるから、屋敷のみんなも安心だな」
僕はニコの方にニヤリと笑いながら微笑んだ。
「よかったでちゅねー。ニコたん!」
ニコはしまった!という様な顔をしている。
猫のくせに表情に出るな。何やら焦っている。肉球の手で外そうとしているのか?
「ああ、そうそう。言い忘れてたけど、それ、無理に外そうとすると爆発して頭が吹き飛ぶらしい。外し方はウルバンから教えてもらたけど、普通の猫のお前に教えても仕方ないもんな」
ニコは“このヤロウ!”という感じで僕を睨みつけてくる。
さあ、ニコちゃんよ。我慢比べだ。僕が屋敷の中でボッチになるのか、貴様の魔力補給が尽きるのか。
どっちが先になるかな?
それからニコはどこかに出かけようとすると……
「ビービービー」
警報音が鳴る様になった。
「あらー。ニコちゃんダメよ。外は寒いからお家にいなさい」
こうやって連れ戻される。
僕はニヤニヤしてニコの方を見る。
ニコは悔しそうに僕の方を睨み返す。
ネコ相手に大人気ない気もするが、こいつは魔王軍のスパイだ。容赦はしない。
「ねえ、伯爵さま。ニコちゃんと一緒にサウナに入ってもいい?」
くノ一軍団がニコとサウナに入りたいと言ってきた。
*動物を人間用サウナに入れるのは危険です。絶対に真似しないでください
うちのサウナはちょっと特殊だ。汗と一緒に魔力を吸い取るのだ。魔力が無い人間にはただのサウナだが、魔力持ちには拷問に近い。
(ちょうどいい)
僕は思わずニヤリと笑う。
「いいじゃないか!ニコちゃんと一緒に、あったまるのもいいんじゃないかな?」
ここで貴様の正体を暴いてやる。
しばらくして……
「伯爵!大変だ!ニコちゃんがニコちゃんが!」
やはり使い魔だから魔力を吸われるのは苦しいのだろう。
「どうしたんだろー。フツーのネコならば、こんなに苦しいはずがないんだけどなー」(棒読)
僕は白々しくニコの方を見る。
手には魔力回復の飴玉を用意していた。それをわざとらしくニコに見えるように持つ。
「そ、それを……ください……」
「ひっ!ニコがしゃべった!」
「普通の猫だよ。喋るはずないよ。気のせいだよ〜」(棒読)
僕はまだ芝居を続ける。
「普通の猫じゃありません!魔王軍の使い魔です!みなさんを魅了の魔法でメロメロにして、ディアブロ伯爵と皆さんの仲違いをさせるのが僕の任務です!」
ニコが突然饒舌に喋り出す。
唖然とする一同。とうとう白状したか。
「お前の主人は誰だ?」
「ボクのご主人様は……ルナ様です……」
ルナ。魔王軍幹部。死霊使いで僕の友の仇。
一度、捕縛に成功したが、ハロウィンのゾンビ騒ぎで脱走を許してしまった。
「帰って汗臭い女悪魔に伝えておけ!貴様の策謀なぞに揺るがされるディアブロではないとな!」
決まった。これでニコは逃げ帰る……と思ったがまだいる。
「うん?用は済んだから早く帰れよ」
僕がニコに早く帰るように促すが。
「あのー。できれば首輪を外してください……」
「ああ。爆発するってのは嘘だから。安心して外していいよ」
「なんだ。よかった。それじゃあ……」
ニコが首輪に手をかけた瞬間
“ボン!”
「ウヒャヒャヒャヒャ!猫もアフロになるんだ!」
そこにはアフロになった猫の姿……ウルバンの発明品につきもののアフロ爆発だ。
エルザ達も笑いを堪えている。
今まで散々かわいいと言っていたのに……ぷっ。
「く、くそ!覚えてろ!悪魔伯爵!」
こうして、暖炉前を占拠するかわいい悪魔騒動は終わった。
「手強い敵だった」
僕がしみじみと振り返る。
「あの……猫にデレデレしていた姿は忘れてください」
エルザにとっても魅了の魔法に当てられたとはいえ、敵に操られていたからな。
でも……インパクトが強かったからエルザの猫撫で声は多分忘れられないや。
こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。
是非是非感想など聞かせてください♪
いろんな人に読んで欲しいので⭐️評価などいただけると嬉しいです!




