番外編 ディアブロ秘宝館 その11 アド馬車の模型/お笑いライブのパンフレット
1話完結型なので気楽に読んでください!
◾️ディアブロ(バームベルク侯爵)
屋敷に来た侵入者(美女限定)を罠やモンスターを使って捕獲を楽しむ。悪魔伯爵と恐れられているが前世はオタク趣味のサラリーマン。表向きは隣で善良な領主をしている。
●エルザ
アシスタント兼ツッコミ。ディアブロの命を狙う刺客だったが、捕縛され悪趣味な遊びに付き合わされている可哀想な女性。金髪巨乳でお姉様系美女。
ディアブロ邸別館。
かつてディアブロ邸を訪れた刺客、来訪者、あるいは人生の進路を誤……いや、変更した人々に縁のある品々を展示する場所――ディアブロ秘宝館である。
第20話 突破せよ!広告規制とディアブロ特措法
展示品:アド馬車の模型
「……今回も、模型ですね」
エルザが視線を落としているのは、精巧に作られた小型の馬車だった。
ただし、普通の馬車ではない。
かつてバームベルクの繁華街を爆音で疾走していた広告用馬車
アドトラックならぬ、アド馬車の模型である。
「これ、ちゃんと光も音も出るんだよ」
僕は懐からスイッチを取り出し、何の躊躇もなく押した。
『バーナナ! バナナ!
バーナナ! フゥフゥ!
バーナナバナナ高収入!』
模型とは思えないほど元気いっぱいの音声が、静かな展示室に虚しく響く。
「……騒がしいですね」
「前世では、こういうのが街中を走ってたんだよ。これ以外にもホストクラブとか。アイドルのやつとか。他には何があったっけ?」
「ご主人様がいた世界って、地獄ですか?」
「一部だよ一部。一部の繁華街だけ。それに意外と統治機構はちゃんとしてたしね」
スイッチを切り、僕は模型を眺めながら続ける。
「でも、新しい商売が出るたびに法律や条例が作られてさ。規制されて、抜け穴が見つかって、また塞がれて……ずっとイタチごっこ。元いた世界でもその後、アドトラックも規制がかけられたんじゃないかな?」
「この世界と同じですね」
「人間のやることだからね。世界が変わっても対して違いはないってことさ」
僕は天井を仰ぎ見た。
「このアド馬車のおかげで、広告規制の穴に気づけたし、怪しい人材紹介業者は駆逐できたし、抜け穴を作ってた悪徳弁護士を、逆にバームベルクの法律顧問に引き抜けた」
「結果的に、法整備が進んだと」
「そう。顧問のセンセイは今も『抜け穴を見つける方が私に向いてる』って愚痴ってるけど。放っておくと悪さをするから、こっちサイドで働かせないと」
「しかし……そのきっかけが、この騒々しい馬車というのが、なんとも微妙ですね」
模型から、まだ音が漏れている。
『バーナナ……バナナ……』
二人きりの展示室に、間の抜けた広告ソングが余韻のように流れ続けていた。
ーーーー
第21話 悪役令嬢?いいえ、マナー芸人ですわ!
展示品:お笑いライブのパンフレット
「次の展示品は、ディアブロ邸を“卒業”した人から送られてきたものだよ」
僕が差し出したのは、一枚の紙。
派手な装飾が施された、お笑いライブのパンフレットだった。
「……あの、マナーに異様に厳しかった悪役令嬢ですね」
「そう。その人」
南方の都市国家で、彼女は今
“堅物すぎる令嬢キャラ”のコメディアンとして活動しているらしい。
コンビ名は「ザ・マナー」
「ディアブロ邸での体験をきっかけに、人生をやり直す。
悪くない話だと思うけど」
「……本人にとって、いいことなのでしょうか?」
エルザの声は、少しだけ慎重だった。
まあ、普通に考えれば第1皇子の婚約者からお笑い芸人だからね。
「そこは、本人次第かな」
僕はパンフレットを元の場所に戻す。
「選んだのは彼女自身だ。堅苦しいマナーを笑いに変えるって決めたのも」
「……少し、罪悪感があるんです」
「罪悪感?」
「ご主人様と一緒にやった、あの“すべった漫才”。あれが、彼女の人生を変えてしまったのではないかと」
「それは買いかぶりすぎだよ」
僕は軽く笑った。
「あのまま貴族社会に残ったのが幸せとも限らないよ。第1皇子から婚約破棄された令嬢なんて社交界のネタにされるだけだ。それに……ディアブロ邸で何かを感じたとしても、そこから先は本人の選択だ。少なくともね」
少しだけ、言葉を選ぶ。
「彼女は自分でお笑いの道を選んだみたいだし、僕らが強制したわけじゃない」
エルザは、しばらくパンフレットを見つめてから頷いた。
「……売れているのが救いですね」
「成功するんじゃない?」
一拍置いて、僕は付け足す。
「知らんけど」
どうもお笑いの話をすると、語尾が雑になる。
知らんけど。
続く
こんなくだらない物を読んでくださってありがとうございます。
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いろんな人に読んで欲しいので⭐️評価などいただけると嬉しいです!




