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行方不明のあの子を探しています

夏休みも終盤に差しかかるある日、私は友達の健人、渚、徹、そして澪と一緒に、町外れの山奥にある湖へ向かっていた。澪が「この湖、24時30分になると悲鳴が聞こえるって噂があるんだよ」と楽しそうに話してきたので、私は興味本位で他のみんなも誘って足を運んだのだ。


山道に入ると、整備されている道の両脇に、小さな人形が無数に置かれているのが目に入った。色褪せた顔、欠けた手足、不自然ににらみつける瞳……。数百体はありそうなそれらの人形を見ながら、私は澪に「こんなの、どういう意味があるんだろう」と聞いた。

澪は笑いながら、「誰かが置いたのかもね。……でも、ちょっと不気味だよね」と首をかしげる。健人たちは特に気にしていない様子で、黙々と歩き続けていた。もしかして、ビビってるの私だけ……?


湖がに着くと、水面にかすかな人影が揺れているのが見えた。風もないのに、水面が波打つように揺れる。私は思わず息を呑んだ。

「ねえ、あれ……」と声を漏らすと、澪が「あそこ、水中に何かある」と指をさした。見ると、水の中に人形のようなものが沈んでいた。腕や足が曲がり、不自然に浮かぶ姿は、さっき道で見た人形と同じ雰囲気を持っている。


私たちは少し離れた場所に座り、水面を見つめながら話した。徹は楽しそうに笑いながら「あの悲鳴の噂、本当かもしれないね」と言う。渚が冗談半分に「もし声が聞こえたらどうするの?」と聞くと、健人は「逃げるしかないんじゃない?」と笑った。


その時、湖の奥の方から微かに女の子のすすり泣く声のようなものが聞こえた気がした。私だけに聞こえたのかと思いみんなの顔を見ると、みんなも首をかしげている。私が「今、何か聞こえなかった?」と聞くと、澪は「うん、私も今聞こえた」と答えた。健人たちは音の方向を見つめるだけで何も言わない。


少し歩いて湖のほとりまで近づくと、水面にまた別の影が揺れた。水中に沈む人形がゆっくりと浮き上がるように見える。澪が「近づいてみよう」と言い、私は後に続いた。

人形が掴めるくらいに浮き上がってきたので、掴んでみると人形が何かを持っていることに気がつく。


行方不明者のポスターと、新聞?

どうしてこんなものをと思った次の瞬間、後ろで「パキッ」という木の枝を踏む音がした。振り返ると、誰もいない。ホッとしたのも束の間。急に振り返ったせいで足元が滑り、私はよろめいた。視界が揺れ、手足の感覚が薄れていく。気づくと、目の前が真っ暗になった。



---


目を覚ますと、自宅のリビングにいた。作り置きされたご飯が目の前にあり、私は無意識にそれを口に運んでいた。スマホを手に取り、グループラインに「みんな無事?」と送信する。すぐに返事が返ってきた。「私は無事」「僕も」「俺も大丈夫だよ」――みんな無事だと知り、安堵する。あれ、何か忘れているような……?


しかし安心は長く続かなかった。キッチンからポタッ、ポタッと水の音が聞こえる。今は家には私ひとりのはずだ。恐る恐るキッチンを覗くが、誰もいない。疑問に思った瞬間、今度はお風呂からもシャワーの音が聞こえた。


その時、スマホに着信があった。澪からだった。画面に映る澪の顔を見て、少し安心する私。「大丈夫?」と澪。私は声を震わせながら、「怖い、助けて」と答えた。


澪は突然「嘘つき、酷い、なんで、なんで…」と声を上げ、怒りに満ちて「なんで忘れたの!!」と叫ぶ。スマホの画面に映る澪の顔は湖で見た少女の顔のように歪み、冷たい水面のような光を帯びていた。


反射的に目を逸らそうと目の前にある鏡を見ると、自分が湖で沈んでいた人形になっていることに気づく。次の瞬間、水の中に引きずり込まれる感覚に陥り、息ができなくなる。必死にもがくと、どこからか声が聞こえた――遠くから、私を呼ぶような声。



---


ハッと目を覚ますと、時計は学校投稿日を示していた。夢だったのかと安堵し、急いで学校に向かう。


教室で友達に小声で「大丈夫?やっぱり湖で呪われたの〜?」と聞かれ、「あれって夢じゃないの?」と答えると、「寝ぼけすぎでしょ」と笑われる。


休み時間になり、皆で集まると、澪がいないことに気づいた。「あれ、澪は?」と聞くと、健人も渚も徹も首をかしげ、「澪って誰?知らない」と答える。


その瞬間、窓の方から音が聞こえた。

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