私の兄
さしずめ兄妹紹介回なのである
兄と妹 仲良く手を繋ぎ街の路地を並んで歩いている
妹は怪訝そうな表情を浮かべ段々と足取りが重くなっている。
そんな妹を見つめ表情一つ変えない兄 その瞳は乾ききってどこまでも暗く深い
「お兄ちゃん・・・手痛い」
蛭沼 水幸8歳
兄に握られた右手には力が入っていない
「どうして?なんで?なんで?なんで??????」
蛭沼 姫愛25歳 水幸の兄であり世話をしている
姫愛の全身をダラダラと汗が流れ始める
水幸の方を強く掴み目線を合わせた その拍子に水幸は尻もちをつき兄の蒼白とした顔に全身がこわばる
「水幸が⋯ちゃんと握ってくれないから⋯気づいてほしかっただけなのに…どうしてそんなこと言うの?こんなにお兄ちゃんは思ってるのに水幸は自分のことしか考えてなっかたの?」
腕を掴む手が首元に周る
「お兄ちゃん悲しいよ」
その瞬間首元の手に一気に力が入り首が締め付けられる
「ッッッ!?」
水幸は顔に血が溜まる感覚と息苦しさに手足をジタバタさせる、死が間近にある実感に戦慄が走り必死に姫愛の手と首の隙間に指を入れ込もうと引っ掻き回す
その仕草に姫愛は頬を赤らめ
「⋯水幸お兄ちゃんの手しっかり握ってごらん…もっと頑張って!はやくしないと死んじゃうよ」
姫愛はさらにさらに力を込めて首を絞める
「お…にイ…ちゃ⋯⋯」
口の端から泡が溢れ始めた 視界がチラつき限界が近くなるのがわかる
その時首と手の隙間に少しだけ指が入った が、締める力が強すぎて姫愛の手を離すことができない
「水幸、お兄ちゃんのこと…好き?」
姫愛は首を寄せて口から垂れた泡を舐め取る
弱く細い呼吸を感じて嬉しそうに口に息を吹き込んだりキスをしたり愛で始める
「ねえ、お兄ちゃんのこと好き?」
水幸は意識が朦朧とする中声を絞り出した
「す…き……
そこまでが限界で視界がプツンとなくなった
ー目覚ましの音が鳴っている
「…うう」
ゆっくりと布団の中から顔を出す
「あえ…夢か⋯」
カーテンから漏れる朝の光を眺めてまた布団の中へ
もう一眠り⋯
ドンドンドンドン!!
「みこちゃあああああああああん!!!!!!!!!!!」
ドカン!!
鍵のかかった扉を強行突破で誰かが突き破った
うるさいなあ‥‥
枕を被り防音 だがしかし朝の眠気を守るふかふかの鎧は扉を破壊した何者かによって剥ぎ取られた
「みこちゃん起きなさい!今日入学式でしょ!今起きないと間に合わなくなっちゃうよ!」
「ん…ゆめお兄ちゃん…おはようございます布団返しやがれください」
2番目の兄 雪雫だ
朝早いのに準備が整っている。パジャマ姿を見たことがない。
寝癖のついた水幸を優しく抱え上げリビングに連れて行く
「うわあ!私は寝るんだあああ!!」
眠すぎてもはや暴れる気力もないため雪雫に連行されるのは毎日の日課のようなもの
「夜ふかしするのいい加減やめなよ、朝弱いんだから、それに肌にも健康にも悪いんだから」
「聞こえません何一つお兄ちゃんが運んでくれるので問題ないない」
「はあ、お兄ちゃんがいつまでもこうしてくれると思ってるの?」
「思ってるーーー♪」
「恥ずかしい子だなあ」
洗面所でやっと降ろされた
「髪やっとくから顔洗って」
水が冷たくて某映画のラストシーンのような心地になる
顔を洗ったおかげで幾分かは目が覚めた気づかぬうちに髪は寝癖がなくなった綺麗なストレートに
「あとはふゆくんにお願いしようね」
「⋯ええこれでよくない?それかお兄ちゃんがしてよ」
「ダメだよ入学式くらいしかかわいくできないでしょ?俺はスタイリングできないし、それとも姫くんにお願いする?」
「⋯」
不服そうな水幸の顔に笑みをこぼして雪雫はリビングの方へ
顔が良い 微笑む顔がとても優しくて安心する
私は近くにおいてある制服に着替えた
「制服の私⋯イイ!」
緑色のブレザーは少し大きめでぎこちないが高校生という自分の成長に大人っぽさを感じてニヤつく
そんな水幸の膝上スカートをハラっとめくられた
瞬時におしりを抑えるとそこにはスカートの中を覗こうとしゃがんでいる三番目の兄 冬棘 がいた
「おまえ…」
その顔を見ただけでふつふつといかりが湧いてくる
「あらッな~にその反応やらし〜自分でスカート短くしたくせに〜」
度の強い丸メガネと重い天パの前髪の奥でニヤつく目が見えるような気がした
「何!?ウザッ!!」
「おチビちゃんったら可愛いわねえ〜高校デビュー臭がプンプンしてるわよぉ♡」
そういって頭をポンポンと撫でる
語尾に嘲笑混じりの♡がついてて非常に腹立たしい
コイツは昔から私をからかって遊ぶのが好きなやつだ
「もーーーー!ほっといてよ!」
洗面所から一刻も早く抜け出そうとする水幸を捕まえて鏡の前に座らせる
「今日入学式なのにこんな田舎臭い髪型させると思ってるわけ?!ありえなあい!!おチビちゃんははサイドテールがいいかしら?さすがに幼稚すぎる?ふわっとさせて…ああおチビちゃんならボサボサにするわあ!あーもう難しいわねえ!でもアタシこういう客の方が燃えてきちゃうのよ〜♡」
「燃えなくていいからあ!」
冬棘は楽しそうに髪を一つにまとめはじめる
「サイドテールにするの?!恥ずかしいからやめて」
「だって一番似合うのそれなんだもん♡」
いつものサイドテール 小さい頃からずっとこれ ずっと冬棘お兄ちゃんが結ってくれる
「これが似合うってことはまだまだ可愛いおチビちゃんって証拠よー」
頭を撫でようとする手を払い席を立った
冬棘は反抗期気味な妹に投げキッスを飛ばすもそれすら振り払われてしまう
水幸はリビングから雪雫の声が聞こえくるりと回り足を伸ばす
「アタシ本当は…受験の時一緒にいたかったのよ あの時はごめんなさいね」
その台詞に心が締め付けられた
思い出したくもない嫌な記憶だ
ドライヤーの音でハッとした
私は足早にリビングへ向かった
朝食のにおいが今日は少し胃に重くのしかかってくる
入学式が迫る緊張と姫愛が今どんな気持ちであるかによって私が今日どれだけ安心して過ごせるかが決まる
「みこちゃん、食欲ない?やっぱ早く寝ないから体調崩してるじゃんか!」
「ちょっと考え事してただけだから」
ああみえて心配性な雪雫の前ではなるべく元気でいなければ…
さて、朝食のトーストを半分ほど食べ雪雫の心配も和らいだところでまた考えを巡らせる
私が高校に入ることを否定していた姫愛 私はいつも姫愛の言うことに従ってきたつもりだ、その方がめんどくさくないから だけど今回反対を押し切っての受験、しかも合格して今日は入学式
今日は兄三人と学校へ向かう予定
「気まずい…」
「ん?なんか言った?おかわり?」
「いや何も」
「そう?」
考えても仕方ない 結論はいつも同じだ 姫愛は予想を超えることしかしない起爆条件が毎回かわる爆弾だ
雪雫は何度も入学案内の資料を向かいに座って読み込んでいる ちなみに全ページ頭に入っている
「おチビちゃ〜ん♡どうかしらどうかしらぁ〜?イケメンすぎて惚れ惚れしちゃうわよねぇ!!!」
スーツを来てくるくる舞い全身をアピールしている
「顔はいいよねえ…」
しかし兄たちはなぜイケメン揃いなのか
私のこの平凡な顔立ちをどう説明すれば同じ血が混じっていると証明できるのだろうか
「冬棘ごはんたべないの?」
「今は抜いてんのーあんたこそ食べなさいよやつれてんじゃないの」
「そんなことないよ水とかコーヒー飲んでるし」
たしかにここ最近の雪雫は様子がおかしい
おかしいというか疲れているのに無理をしている感じ⋯
雪雫は目を泳がせキッチンへ逃げるように食器を片付けに行った
「で、おチビちゃん今日のアタシどう?」
「はいはいかっこいいですねー」
「でしょお〜♡」
ぬめっとした発音でそういった
「おチビちゃんもぉかわいいわよ〜♡ てか口にジャム付いてるよ〜かわいー!」
「うあ、まじかいまふく」
近くにあったティッシュを取る
「かわいい…」
チュッ…
冬棘がキスするように私のジャムを舐め取った
「うわ!きったねえ!!」
「なによお!いいじゃない♡」
「うええ」
「あーもうそんな子にはっ!」
口を尖らせ迫ってきた
それを必死に頭を抑えて妨害する
それを見て雪雫が笑っている
「やめろおお」
結局負けてキスを受け入れてしまった
顔中がリップまみれになっていく
その時リビングの扉が開いた
「おはようみんな」
その場の空気が凍りついた 姫愛だ
ニコニコしながら冬棘に近づく
「あ、あら姫愛…おはよう…」
さっと離れる冬棘の腰をぐいっと寄せ密着させる
「そんなにしたいなら僕ともしない?」
「はあ?朝から盛ってんじゃないわよ 大体さっ‥!」
姫愛は冬棘の後頭部を押して自分の唇に冬棘の唇を押し付けた
部屋に二人の呼吸と舌が交わる音が響く
少しして冬棘を解放した
これはおはようのキスだ 姫愛が起きたら必ずキスをしなければならない
が、半ば強引なため風邪でもゲボ吐いても必ずする
冬棘は腰が抜けその場に崩れ落ちた
ズボンが少し膨らんでいて屈辱な表情をしてそれを力の抜けた手で抑えた
姫愛はキッチンにいる雪雫に近づいた
「姫くんおはよう⋯」
雪雫は無理に笑顔を作り自ら姫愛にキスをした
最後は私だ
「あ、姫にぃ…」
私の頭を撫でそのまま頬に添えて顔を上げさせる
微笑み座ったまま真上に頭を持ち上げた
そして口の中に舌が入ってきた姫愛の息がだんだん荒くなるそれと同時に舌の絡ませ方がいやらしくなっていく
床に押し倒されなにか硬いものが股に当たる 嫌な予感がする
自分の身体が火照って変な感覚が体中に走る
「んっ///」
声が抑えられなくなる 家族に触られる不快感が薄れ嫌な予感は強くなる
姫愛の顔を話そうと肩を押すと両手を抑えられ首元に姫愛が顔を埋める
制服のボタンが外され胸を撫で揉み始めた
「お兄…ちゃん !あぅ…ッ…っ!んんん…っ!やぁ」
今までこんなにされたことがない 何が起こっているのか全くわからなかった ただ身体がびくびく反応して変な声が止まらない
「姫愛!なにしてんのよ!」
冬棘が姫愛を羽交い締めにした
雪雫が私の身体を起こし姫愛から離す
守るように私を抱きしめた
「だって…もう高校生だよ?」
疑問を咲かせた曇りなき眼で冬棘を見上げる
卒業式まで残り2時間
さしずめこれは破滅の物語である
最後まで読んでくれて感謝です
紹介回 声に出すとなぜだか恥ずかしくなってしまう
さしずめ次回は入学式というわけだ お楽しみに