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1 婚約破棄と殺人

「たまの遠出も楽しいものですけれど、さすがに疲れましたわ。」


2時間も馬車に揺られ、思わずため息がもれた。

屋敷まではあともう1時間は馬車に乗らねばならない。

疲れた気分を増幅させる要因はもうひとつ。

馬車をひく馬に水を飲ませるため補水地へ立ち寄ったのだが、なにやら時間がかかっているのだ。

私は馬車のカーテンをあけ、外を覗いてみた。

私の護衛を担当している娘、ヒルダが見知らぬ人と話し込んでいる。


「あの服装、王室からの使いでしょうか。

何故こんな馬車まで来たのでしょう。」


私が屋敷へ到着するのを待たずにここへ来るとは、よほど緊急の連絡なのだろうか。

使いのものとの話が終わると、ヒルダは慌てた様子でこちらへ走ってきた。

ヒルダはいつも丁寧な彼女には珍しく、音を立てて馬車へ駆け込んできた。


「カメリア様、大変です。

いま王室からの使いから連絡を受けたのですが…。」


「ヒルダ、落ち着いてくださいまし。

いったいどうなさったの。」


私は青い顔でわなわなと震えるヒルダの肩をさすってやる。

ヒルダは大きく深呼吸をして、掠れた声で私に告げた。


「カメリア様。

ビルヘルム第二王子とあなたとの婚約を破棄されたのです。」


思わぬ知らせに私は言葉を失った。


公爵家の一人娘である私は、5歳のときに第二王子ビルヘルムとの婚約が決められた。

国民からビルヘルムに隣に立つことを認められるような立派な淑女になるため、私は努力を重ねてきた。

家柄で決まった婚約とはいえ、ビルヘルムとの関係も良好だった。

王国主催の夜会で、ビルヘルムが私をエスコートしてくれたのはつい二週間前ではないか。

婚約破棄は私にとって青天の霹靂であった。


「婚約破棄だなんて…!

私に相談もせずにどうして…。

それに、直接会うこともしないでこんなふうに伝えてくるなんて無礼じゃありませんこと?」


「それが、ビルヘルム様が決めたことではないのです。

王が婚約破棄を決定されたのです。」



ヒルダは「とにかくすぐに屋敷へ向かいます。急ぎましょう。」と馬車を走らせた。



屋敷は普段とまるで様子が違い、人だかりができていた。

ヒルダの手を借りて私が馬車から降りると、人だかりの中から黒いロングコートをきた痩せ細った男がこちらへ近づいてきた。

男は不躾な態度で私に話しかける。


「私は王国警察のレストレードです。

あなたがカメリア・フォン・シュテルンベルク嬢ですね。」


「ええ、そうです。

私になにかご用意でしょうか。」


「あなたのお父様、シュテルンベルク公爵が殺害されました。

カメリア嬢、あなたは重要参考人です。

少しお話を伺えますか。」



私は頭がまっしろになってしまった。



突然の婚約破棄の理由は、私に殺人容疑がかけられたからに他ないのだ。

こうして私は、父親殺しを犯した王国始まって以来の悪女となったのだ。

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