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3

暗く凍てついた森の中を男が走っている。肩にはずた袋のように一人の少年を担いでいる。


子供とはいえ、人を一人担いでいるにしては、いや担いでいなかったとしても信じがたい速度を保っていた。


この森の暗さではその姿を捉えることさえ難しい。


担がれたレエは意識があるのかないのか、うわ言を繰り返していた。


「僕が…… 僕のせいで……」


「チッ またそれか」


男は忌々しげに首を振った。





とあるひらけた場所で、レエは目を覚ました。


「うぅ…… ここは?」


「やっと目を覚ましたか」


突然頭上から声がして、レエは体をびくつかせた。


獣が低く唸るような声だ。


(ここは……? いや、確かに僕はさっき……)


戸惑うレエなどお構いなしに男が続ける。


「動ける程度に傷は治した。……理屈はいい。貴様がこれまで負ってきた取るに足らぬ運命とやらもな。俺が見たいのはただ一つ」


冷酷な響きだった。レエはカルカを思い浮かべたが、より血の通っていない物言いだ。


「生き残れ。己が価値を示せ。 ……失望させるなよ」


男の言葉の意味に思慮を巡らせる暇もなく、脳を揺らすような咆哮がレエの耳を貫いた。


思わず耳を塞いだが、同時にその異形が並のものではないこと、自分をいつでも屠ることのできる間合いにいることを察知し、身構えた。


身構えたところで、何かができるとは思えなかったが。


生存本能に加速された輪郭を持たない思考が頭を駆け抜けたと同時に、異形が飛びかかってくる気配を察知した。


すでにかなりの捕食を繰り返した上位種だろう。赤黒く光る妖しい光沢は、数々の獲物の血で間違いない。


人の頭蓋骨ほどもある爪と牙を剥き出しにしている。


レエは咄嗟に身を守ろうと腕を顔の前で重ねた。


目が見えずとも、異形の纏う邪悪な第六元素の残滓が、ひしひしとその身に刺さるように感じられた。


常軌を逸した膂力だった。


レエの小さな体は、砕けた樹木の破片とともに十歩以上吹き飛ばされた。


骨が砕け、内臓に衝撃波が伝播するのを感じられた。勢いは行き場を求めてレエの体内を暴れ回り、レエは口からドス黒い血塊を吐き出した。


直接受け止めた左腕は、朝市へ並ぶ新鮮な果実のように肉が割れ、朱に染まった骨が覗いていた。


この時ばかりは目の見えないことを感謝するべきだったかもしれない。


異形はすでに、老練な料理人のように、獲物への次の一撃を思案しているようだった。

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