0話 はじまり
お久しぶりです
ずっと構想だけあったやつ、下書きはあったんで順次やってきます
タイトルは仮なんでいいの思いついたらやってきます
タイトルが一番苦手なんよね
『勇者』
人々を助け、悪を倒す、憧れであり希望の象徴。
ある時を境に英力と呼ばれる力に目覚め、その勇者固有の力「英法」と「英装」を手に入れることができる、憧れの存在。
その勇者へと僕は選ばれた。
地方領主の三男、特に大した芸も何も無く、ただ人望しかないとされた僕にだ。
......正確には人望すらなければ何もできないと、才能が無ければそうするすかないと。
村の人々に対しての接し方は常に考えてきた。
その為に色々努力した、と思う。その僕が14の誕生日にまさかの勇者へと覚醒した。
僕には二人の兄がいる。特に次男の体格は大男と呼ぶにふさわしく、姿に恥じない怪力と、卓越した剣技も併せ持つ。
もし勇者に選ばれればそれを活かし、武勇を上げたのだろう。しかし実際に選ばれたのは、剣技の技量は並、知識も並の至って平凡な僕が、選ばれた。
「面を上げ、教会に忠誠の証を」
「はっ!私、アルム・ヴィエスタは人々を助け、勇者として、教会の名の下に正義を為します!」
胸が躍った。
次の日には自身の力を把握する為に、兄と稽古をしてもらった。
驚く程、自分の身体じゃないみたいだった。
固有の英法に目覚め、その英法と力で怪力と技術の合わさった兄の一流剣技を二流、平凡な自分の剣が打ち倒す。
まるで夢物語のような現実を目の当たりにして、これが夢でなく現実なのだと教えてくれた。
「はは、勇者様にゃ敵わなねぇってことか.......」
次兄ヘイリムは寂しそうに、けれども嬉しそうに痺れ震える手を見ながら呟いた。
長兄セダーヤとは10、次兄ヘイリムとは8離れた兄弟。
......可愛がってもらえたと思う。
剣技を教えてくれと頼めば荒々しい、それでいて温かな笑顔で付き合ってくれたヘイリム兄。
勉強を教えてくれと頼めば分からないところを分かるまで、優しく付き添いながら教えてくれたセダーヤ兄。
一番下の守るべき弟が、いきなり守る側に行く、複雑な感情だろう。
「まさか、だな......」
セダーヤはそう呟き、これからの苦難の道を辿る僕の将来を憂いた。
勇者は必ずしも勝つ訳ではなく、死と常に隣合わせだ。
魔力に満ちた魔獣や魔王なんかと戦えば勿論死ぬことがある。
他にも色々な要因で勇者が死ぬということはある。
物語ではあるが、100年前程は勇者達が束になり、1年戦い通してようやく倒した魔王がいるという話もあるぐらいだ。
人類の希望であり進化の果てでも、やれないことはある。
勿論、今は平和で魔王が現れた等という話は産まれてから聞いたことがないし、勇者の数も増えていっている、という話らしい。
今の勇者の仕事は、魔王の残滓である魔力が満ちた土地に汚染された獣である魔獣を狩り、人々を守ること。
言ってしまえば討伐のお使いを国から受けてこなす。
勿論僕も例外じゃない。
勇者任命から7日後、ヴィエスタ領の最北にある村、そこで魔獣の目撃情報があり、それを討伐せよとの任命が下った。
初任務での死亡例は1割を切るという。
勿論、段階に合わせた任務を割り振られるというのもあるが、勇者はそれ程までに強い。
それに、僕は死ぬ気もないし、そんなことはないという確信があった。
「クホウト村、あそこには何回か視察したことがある。待ってろ、地図を取ってくる」
「勇者には英法と英装があると言っても、油断するなよ。ちょっとした加護の籠もった革鎧がある、それを着けていけ」
二人の兄からの厚い愛情を受け取って、僕は歩き出す。
期待に添えるようにと、僕の英雄譚はこれから始まる。