家庭教師
ドアが閉められ、短髪のオレンジ色の髪に赤目のボーイッシュな家庭教師、スティーディアとニーファの三人にされた途端、私は抜け殻のように力が出なくなった。
「うぁ〜シスタ〜」
「ヴィリアラ様、先ほどお勉強頑張るとおっしゃっていたではありませんか」
「そーだけどー。やっぱいなくなっちゃうとやる気が……」
「では、やる気の出る言葉を私から。ヴィリアラ様が今後シスタ様と会えるかは、成績次第と奥様から言付けを承りました」
「嘘でしょ!」
「いえ、事実です」
「お母様め」
シスタを人質にするとは、なんという仕打ち! どうせシスタは私と会う時以外閉じ込めているだろうし。
シスタの為ならば仕方ない、少しは真面目にやるとしますか。
「ヴィリアラお嬢様、すごいですね。全て満点ですよ。聞いていないようでいつもちゃんと受けていたのですね」
いや、聞いてなくても子どもの問題くらい解けるんだけど。そんな風に目に涙を溜められると申し訳なくなる。
私だって人の心はあるし。
「ティ、ティディの教え方が良いからだよ」
私ができる最大限の詫びがこれしかない。
「ヴィリアラお嬢様からそのようなお言葉がもらえるとは!」
見た目ボーイッシュならそんな女々しい反応しないでくれる! 申し訳なくなる!
ギャップ萌え? ギャップ萌えを狙っているの⁉︎ 私はシスタ以外眼中にないから!
「では、次からはもう少し内容を難しくしましょう」
こうなるから真面目に答えるのは嫌だったんだよ!
「そ、そういうのは任せるから。今日はもう終わりだよね? 終わりだね! ニーファ、シスタに会いに行きたい!」
「残念ながら、シスタ様とお会いできる時間は決められています。また許可が出たらお会いできますから、しばらくは耐え忍んでください」
妹に会うのに許可が必要とか本当にありえない!
「尊いの摂取不足で死んじゃってもいいの⁉︎」
「そうなる前にシスタ様と会えますので、ご安心を」
「安心できないよ〜。はあ……。まあいいや。足が治るまでの辛抱だし」
「懲りていないのですね」
シスタのためなら足の一本や二本なんてことない! なんて言ったら流石に監視が厳しくなるな。
「それよりティディ、魔法教えられる?」
「魔法ですか?」
「そう。魔法史とかじゃなくて実践の方。シスタと会えないのなら、その時間を使って習得しようかと思って」
「うーん、私も魔法自体は使えますが、教えるとなると少々考えものですね。魔法というのは、使い方が統一されているのではなく、人それぞれの個性が表れます。属性なんかが良い例ですね。魔法を教える人はそういうのを見極められる人なのですが、そうですね。ニーファさん、私の紹介であれば屋敷内に出入りさせることは可能ですか?」
「私はただのメイドですので、その判断はしかねます」
「ニーファ〜」
「奥様と旦那様に一度お聞きしますので、紹介状だけ書いてもらうことは可能でしょうか? それでよろしいですか、ヴィリアラ様」
できることなら今から習得して、少しでも早くシスタに教えられるようにしたかったけど、こればかりは仕方ないか。
「良いよ、ありがとう。ティディもね」
「いいえ、力不足で申し訳ありません。では、今日のところはこれで。相手にも伝えた上で、また改めて紹介状を持ってきます」
「はい、よろしくお願いします」
「お願いします」
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