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危機一髪

 落ちた時はまだそこまでだったが、時間が経つにつれ、段々と痛みが広がっていく。


「う、いったー!」


 小枝は刺さるわ、右足は縁石にぶつけるわで散々な目である。


「一体何が起こったんだ、使用人達が屋敷で大騒ぎだ……って、ヴィリアラ!」


 父親は私に近づくと顔を青ざめた。


「い、医者を! 今すぐ医者に見せるんだ! 担架を持ってこい!」


 私が窓枠に引っ付いていた時からこうなることを想定して準備をしていたのか、上の階から母親が降りてくる前に私は自分の部屋に戻された。


「ヴィリアラは大丈夫なのか? 命に別状はないか?」

「この子に傷でも残ってしまったらどうしましょう。あの時私が手を伸ばしていれば、ヴィリアはこんな目に合わなくて済んでいたのに」


 ほんと、私に対しては子思いの良い親だよね。


「命に別状はありません。傷も浅いですし、跡も残りませんのでご安心を。ただ、右足が折れています。比較的綺麗に折れていますので、安静にしていれば問題ありません。一、二ヶ月もすれば元に戻っていることでしょう」

「なら良かった」

「よくありません! 一月半後にはクライン家の御子息の誕生日パーティーがあるのですよ。ヴィリアと同じ歳ですから、参加させない訳にもいきませんし」


 誕生日パーティーの参加とか聞いてないよ! ……ん? クライン家? 聞いたことあるな。

 おそらく攻略対象かなんかだろうけど。

 クライン、クライン……。

 あ! あの世間知らずの王子か! それでいて悪役令嬢(ヴィリアラ)の婚約者。

 えーやだな、行きたくない。ここは多少強引でも断らせてもらおう。


「仕方ありません。この怪我では出席するのも困難ですし、失礼にあたります。残念ですが、今回は欠席ということで──」

「ヴィリアラの言う通りだ。余計な心配をかけ、クライン家の方々だけでなく、他の貴族の方々にも迷惑になってしまうかもしれない。大丈夫だ、クライン家は我が国を担う王族の方々。ヴィリアラの欠席も許してくれるさ」

「……そうですね。ですが、私達の娘があの悪魔だと勘違いされないか、そこが気がかりです」


 …………ん? 悪魔? あれ? もしかしてシスタも行くの? ならこうしてはいられない!


「あ、あーいや、やっぱり王族の方相手に欠席は失礼ですよね。せっかく顔を覚えてもらえるチャンスでもありますし、やっぱり参加します! 一月半もあれば治っているんですよね!」

「え、あ、は、はい。しかし、リハビリのことを考え──」

「ほら、治るって言ってます!」


 なんか都合の悪いことを言われそうだったから、無理にでも話を途切らさせてもらう。


「そ、そこまで言うならそうしよう。ヴィリアラはこんなに幼いというのに、我が家の立場のことまで気にかけてくれるなんて、父さんは嬉しくて涙が出てくるよ」


 そう言って本当に涙を流す成人男性を私は初めて見た。

 しかしまあ、勘違いしてくれたおかげで無事シスタに会えそうで良かったよ。

 一月半後にはシスタのドレス姿か。ああ、スマホが恋しいよ。せめて脳には焼き付けておかないと。

 今から楽しみで楽しみで、時間が進むのが死ぬほど遅いよ。

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