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正反対の二人

 例の決闘の日がやってきた。

 そして、なぜここに私が立っているのだろう。

 私はただ、いつものように走り込みをするつもりだったというのに、ネイトに連れられて立会人をする羽目になった。


「あなたのご友人が立会人とは、信用できませんね」

「仕方ねーだろ、まともに立会人できるのがヴィルだけなんだから」

「はぁ、歪みあっている暇があったら早くして」


 観衆が今か今かと目をキラキラさせているんだよ。


「お前、どっちが勝つと思うか?」

「そりゃネイト様に決まってるだろ! 何せ騎士団長の息子だからな!」

「俺は下級生も捨て難いと思うぜ。剣を持っているしな! 正直、いつもヴィリアン様に負けてて、ネイト様が勝っているところなんて見た事ないし」

「何だとてめー! 上がってこい!」

「ひっ!」


 新たな喧嘩を吹っ掛けないでよ。


「ネイト!」

「うっ、何だよ。あいつは俺の事を馬鹿にしたんだぞ!」

「いいから黙って準備する!」

「ちぇっ、わーたよ」


 本っ当にこの馬鹿は。持ち場でうだうだと文句を言うだけ言って、未だ剣すら準備していないとは情けない。

 一体誰の時間を無駄にさせていると思っているのやら。


「なぁ、どっちが勝つか賭けない?」

「良いぜ。じゃあ俺はネイト様に五万ゴルド」

「ねえ、私達も賭ける?」

「今月金欠だったし、良いかも。勝てば欲しかった服が買えるし」


 一人、また一人と賭けの人数が増えていく。

 今月の生活費の為にかける者、欲しい物の為にかける者、道楽でかける者、一発どかんと当てたい者。

 皆様々な理由で各々賭ける。ネイトがモタモタしているせいで、どんどんとシステムが堅固なものとなっていく。


「ねえ、まだ剣来ないの?」

「執事に言ったんだけどな、持ってこいって」

「いつ?」

「さっきちゃんと言ったぞ。俺の手に一番馴染む剣を持ってこいってな!」


 こいつはなんて馬鹿なのだろうか。


「そんなの知るか馬鹿! 今すぐにその辺にある剣を持ってこい!」

「んだよ、少しくらい待ってくれてもいいだろ。試合にはコンディションが大事だからな、下手な剣は握ってられねぇ。ヴィルもそれくらい分かるだろ」


 どれほど人様を待たせているのか分かっていないネイトの頭にげんこつをお見舞いしてやった。


「ごめんヴェントル君、あいつ馬鹿で」

「あ、いえ」

「坊っちゃま〜、持ってきましたぞ〜」


 ネイトの執事さんは息を切らしながら剣を五本抱えてやってきた。


「おっせーな。お前のせいでヴィルに殴られたじゃねーか。──いってー!」

「我儘を聞いて無理してくれた執事の方になんて態度取っているんだ。いいから早く位置につけ」

「へーへー」


 ネイトは剣を一振りずつして、一番馴染んだであろう剣を携えた。


「うっし! 始めるぞ!」

「仕切るな元凶!」


 挨拶やら確認やら済ませて、ようやく始めさせることができた。


 ヴェントル君、どういう立場の子かは分からないけれど、ネイトと十分張り合えている。

 まあ、ネイトと張り合えている時点で私の敵ではないけど、この世界では十分な力だ。

 ネイトの剣が荒々しいのに対し、ヴェントル君の剣は整理されている。型を凄く大切にしている。

 しかし、その剣でネイトに勝てることはない。そしてネイトもまた、ヴェントル君に勝てる事はない。

 基礎ができても応用ができなければいけないのと同じように、応用ができても基礎ができなければ必ず詰む。

 ヴェントル君は基礎は完璧だ。しかし、基礎しかできていない。基礎を繋いで剣を振っている。

 逆にネイトは応用のみだ。だから、予想外の攻撃に対応はできるが、全体的に粗がある。

 真反対の性質の剣は、二人にとってとても交わし難いものだろう。どちらも合わせることも、合わさせることもできないのだから。


 そして結果は、案の定引き分けだった。

 寮の時間と集まっている人数を考えて、解散させるほかなかった。


「お前、強いな」

「あなたこそ」


 ネイトとヴェントル君は熱い握手を交わした。

 剣を通して男の友情でも芽生えたのだろうか?

 何はともあれ、もう巻き込まれるのはごめんだ。

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