家庭教師は必要
今日は魔法の先生が来る日でもあるが、まだ時間があるのでシスタの部屋に入る。
「シースタ、お姉ちゃんだよ!」
「お姉様! ……お姉様、その格好は?」
「どう?」
「良いと思いますよ。かっこいいです!」
この格好になること、正直抵抗がなかったわけじゃない。
だから、シスタがそう言って笑顔を向けてくれただけで決意した甲斐があったよ。
「ありがとう! シスタは今日何をしていたの?」
「本を読んでいました」
「どんな本?」
「悪魔や呪いについての本です。お姉様が味方でいてくださることに甘えるのはよくないと思いまして」
私はシスタの頭を撫でた。少しでも前向きに進もうとしてくれているだけで嬉しいよ。
「そっか。何か分かったことはある?」
「私にはまだ全てを理解することはできません。ただ、あまりにも歴史が長いためやはりどうすることもできないということが分かったくらいでしょうか。もっと詳しく調べて、私のような人がいなかったか、その人たちがどのような人生を送ったのか分かる本や話があれば探してみたいと思います」
おそらく、あったとしても暗い話しかないだろう。乙女ゲームをやっていても、シスタが何か特別な力を持っていたなどの描写はなかった。
主人公はあくまでただの平民、シスタじゃない。
だから、主人公以上に目立ってしまう設定は作られていないのだろう。
「お姉様?」
「ん? あーいや、何でもないよ」
何となくシスタが読んでいた本をめくってみる。
「うーわ、これは」
難しい。文字は読めるけど何言ってるか分からない。なんか専門用語ばっかりだし。
私がこれじゃシスタはもっと分からないだろう。シスタの持つ知識は私が教えてきたことだけ。
これは、シスタにも家庭教師が必要だなぁ。
と、いうことで本日二度目の来訪をしてきました!
「お父様! シスタにも家庭教師が必要です!」
「それはそうなんだが、引き受けてくれる人がいないんだ」
「髪色と目の色が関係しているのですか?」
「その通りだ。こちらも強制はできないからな」
「スティーディアは?」
「彼女も忙しい人だ。ヴィリアラだけで手一杯だ」
「じゃあ……」
あと他に頭の良い、あの本の意味を理解することのできる、シスタに嫌悪感を抱かない人。……あ、一人いた。
「ニーファは?」
「彼女はヴィリアラのお付きに通常のメイド業務と忙しい」
「たしかにそうですが、私にはこれから二つの時間が増えます。魔法習得の為の時間に剣術の時間、それと家庭教師の時間はニーファは私に付いている必要はありません。いづれかの時間で良いです、その三つのどれかの時間をシスタに使ってもらえれば良いです。もしメイドが足りないというのなら私も空いている時間に働きます。それでどうでしょうか?」
父親は顎に手を当てて少し考え、廊下に出た。
「誰か、メイド長とメドーさんを呼んでくれ」
「お父様……!」
「本人次第だからな。あと、流石にヴィリアラが働くのは許さないからな」
「はい!」
父親って割と優しいな。すごい新鮮な感じがする。
なんでだろう、前世の父親は優しくなかったのかな? ま、そんなこと知る由もないけど。




