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自重はお互い様

少し長めです。

 その後はお風呂入ったり、ご飯食べたりして、いつもと変わらない夜を過ごした。


「へー、マッサージもあるんだ」


 ニーファは明日の準備、リシアはお風呂と暇になったので、興味本位でルームサービスの内容を見ていた。

 マッサージはここにきてやってくれるのかな?


「気になりますか?」


 私の独り言が聞こえたのか、ニーファが話しかけてきた。


「まあ、ちょっとね。必要かと言われると微妙だけど」

「やりましょうか?」

「え、ニーファマッサージできるの?」

「多少の心得はあります」

「へー初耳。じゃあお願いしようかな」

「では、うつ伏せになってください」


 言われた通りにすると、ニーファが私の身体に跨った。


「では、少し力を入れますね」

「お願い」 


 マッサージが開始した。

 最初はこそばゆい感じがあったが、段々と気持ち良さが出てきた。

 マッサージ特有の刺激的な痛みが、快感を走らせている。

 これが効くってやつかとこの感覚を噛み締める。


「どうでしたか?」

「気持ち良かった。ありがとう。私もニーファにやろうか? なんとなく分かったし」

「え、しかし──」

「私もやってみたいし。試させてよ」

「……分かりました」

「痛かったら言ってね」

「はい」


 ニーファに跨り、まずは肩をほぐしていく。


「んっ……ふっ」

「ん、あっ、いい……」


 声はおそらく自覚はしていないのだろう。

 結構凝っている感じあるし、本当に気持ち良くて思わずなんだろう。

 でもなんか、手を動かすたびに声を出されて、イケナイことをしている気分になる。


「ニ、ニーファ、声ちょっと抑えてもらうことってできる?」

「え? あ、はい」


 はいアウトー! その顔アウトー!

 なんていうか、その、エッ! な顔しないで。

 本当に、ダメだから。


「……フッ──」


 声は我慢してくれているけど、なんか、これはこれでダメな気がしてきた。


「な、何をしているのですか?」

「え、あ、違っ! これはただマッサージをしていただけで!」


 私は急いでニーファから離れたが、余計怪しさが増しただけにしか感じられない。


「そうなんですね」


 リシアは私とニーファの服装を見て、一線は超えていないと判断してくれたのか、怪訝そうな表情は消えた。


「髪、乾かそうか?」

「大丈夫ですよ」

「いや、その、あの、言い訳の時間をください!」


 直球に理由を言うと、リシアは一瞬きょとんとしたが、その後はおかしそうに笑った。


「では、お願いします」


 私達は化粧台のある部屋に移動し、ドライヤーを手に取る。


「別に言い訳することなんてありませんよ。たしかに最初見た時は少し驚きましたが、ヴィリアン様が何をしようと私が文句を言う権利なんてありませんし」

「ほ、本当にマッサージしていただけだからね」

「分かっています。ヴィリアン様は嘘をつきませんから」


 ついているんだよね〜。男っていう嘘を出会った当初からずっとついているんだよね〜。


「私が嘘をついていたらどうする?」

「えっ、うーん。きっと、その嘘にも理由があるのだろうと考えます。ヴィリアン様は誰かの為に一生懸命になれる方ですから。私はそういうヴィリアン様のこと好きです」 


 なんか、たまにリシアって大胆になるよね。


「私も好きだけど、そう簡単に男性に好きって言ったらダメだよ。私ならともかく、ネイトみたいな馬鹿に言ったら本気にされるよ」

「安心してください。私も言う人は弁えています」

「なら良いけど。はい、髪乾いたよ。最後にオイル付けちゃうね」

「良いんですか?」

「うん」

「ありがとうございます」

「どういたしまして」


 寝室に戻ると、ニーファが一切動いていないので、ゆっくり近づいてみると、小さく寝息を立てて眠っていた。


「お疲れのようだね」


 私はニーファを起こさないように小さな声で語りかける。


「私達も寝ましょうか」

「そうだね。ちなみに、リシアもマッサージ受ける? ニーファを眠らせる程の腕だよ」

「それを聞くと少々興味が沸きます」

「どこかほぐしてほしいところとかない?」

「そうですね、うーん、肩ですかね」


 あーそうだよねー、そうですねー。いいなー、私も胸が重くて肩が痛いって言ってみたい。


「大きな物をお持ちですからね」

「ヴィリアン様ってやっぱりむっつりですよね」

「違うよ!」


 これまでに正ヒロインにむっつりスケベだと言われる男装悪役令嬢がいただろうか?

 私の記憶ではいない。

 

「……触りたいと思いませんか?」

「思いますん!」

「どっちですか?」


 リシアは呆れたようなおかしそうな微妙に笑っている表情をした。


「だってその、興味があるかないかと聞かれたらそりゃあるし。それは男も女も変わらないでしょう? リシアだって自分より大きい人が、触ってみたい? って聞いてきたら、正直触ってみたいでしょ?」

「ま、まあ、たしかに?」

「つまり、これは生理反応だよ」

「ん、んん? そうなんですかね?」

「そうなんです」

「そうなんですね」

「そうそう。つまり、私は決してむっつりではない。というかやっぱりってどういう意味?」

「いえその、ネイト様がヴィリアン様は絶対そういう人だと力説していたもので。私もその、そうなのかなと……」


 ネイトあいつ許すまじ! ふっざけんなよ! 私のどこがスケベだ! 


「あの馬鹿の言うことなんて間に受けちゃダメだよ。というか納得するということはリシアも心当たりがあるってこと?」


 リシアはギクリと肩を震わせ、目を逸らした。


「こうなったら聞こうではないか。その方が私も精神衛生上良い。それに、一緒に寝るんだし、その辺はっきりさせておこう」

「えっ、あーその、出会った当初の頃、わざとではないと分かっていますが、胸に触れましたし」


 うん、触れたね。本当に悪気はないよ。ただ想像以上に大きくて手元が狂っただけだよ。


「部屋で平然と二人きりになりますし。ヴィリアン様にとっては、シスタちゃんやニーファさんがいますので、女性と二人きりになることは普通なのだと思いますが」


 それは私に自覚がなかったことが原因で申し訳ないと思っている。


「さりげなく、その、え、エッチな話題振ってきますし」


 ……下ネタは信頼の証だよ。それに、ぶっちゃけ気になるし。


「ヴィリアン様が小さくなられた時、その、無意識だとは思いますが、私の胸にヴィリアン様、よく頭埋もらせていましたし。だからその、ヴィリアン様もお年頃なのかと思いまして」


 …………うん、うん。たしかにやらかしてるわ私。

 こうして言われると、私男として割と最低なことをしているよ。これはリシアが惚れるはずだよ。

 しかし、しかしだね。私だってそういうことならリシアに言いたいことはある。


「なるほど、よく分かった。たしかに勘違いされても仕方がないと思う。しかしだね、私だってリシアに言いたいことはある」


 リシアはまさか自分にも投げかけられるとは思っていなかったのか、面を食らっていた。


「リシア、恋バナだと割とノリノリだし」

「そ、それはその、気になりますし」

「エッチな話題を振ってくるとかいうけど、リシアだってそれを逆手に取って質問してくるし」

「はぐらかす方法がそれしかなくて……」

「私にキスしてくるし」

「あ、あれはその、その場のノリといいますか」

「ノリとか言うけどね、キスなんてノリでするものじゃないでしょう。今回一緒に寝るのだって、相手がネイトみたいな性欲馬鹿だったらやられてるよ。リシアは危機感が薄いんだよ」

「だ、だって」


 お、反論か? 言ってみなさい。私に通用すると思うのならね。


「シスタちゃんが、ヴィリアン様は昔、よく額や頬にキスをしていたと言っていましたし、今でもたまに一緒に寝たりするって言っていましたから、大丈夫だと思ったんですよ!」 


 シスター! 初めての友達で舞い上がっていたのかもしれないけど、リシアにあれこれ喋りすぎだよ!

 うう〜、きつい言い方になるかもしれないけど、言うしかないか。


「いや、その、シスタとは兄弟だしね。私とリシアは兄弟じゃないしね」

「そ、それはそうですけど。普通は兄弟でもキスなんてしませんし。ヴィリアン様にとっては仲の良い人にとっては普通のスキンシップなのかと思いまして。それならチャ──いえその、何と言いますか、仲の良いこ──友達になりたかったというか。と、とにかく、ヴィリアン様以外にはしませんから! ヴィリアン様だけですから!」


 今一瞬チャやらこって聞こえたけど? チャンスとか恋人って言おうとしたわけではないよね?


「私はリシアと仲の良い友達のつもりだよ。とにかく気をつけてね」

「ヴィリアン様こそ、安易に女性と接したらいけませんよ」

「うっ、それは頑張って自重します。じゃあもう寝ようか。リシアにも言われたし、マッサージも安易にしないようにするよ」

「え、いや、私は構いませんから!」


 必死だなと少し面白く感じてしまった。

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