手伝い
最後のホームルームも終わり、弟子共に挨拶もしてやった。てか、私冬休みも魔法教えに行くことになったんだけど。もう別の人に引き継いでもいいじゃん。剣の方は教えにはいかないけどたまに顔を見せることは約束した。
あと、ソルシーに試験の件はどうしたんだと言ったら、ティディにバレて怒られたらしく、話はなかったことでとのことだ。まあだろうなとは思った。
「長いような短いような、そんな日々だった」
「長期休みに入るだけですよ」
「そうだけどさ、こうして綺麗さっぱりになった部屋を見ているとね、なんだか込み上げてくるものがあるよ」
「それは、ヴィリアラ様が思っている以上に学園生活を満喫していた証拠ですよ」
「嫌なことや迷惑をかけられたこともあったけどね」
「人生なんてそういうものですよ。楽しいことや嬉しいことがあるから頑張れるのです」
「そうだね。それじゃあ帰ろう、ニーファ。私先に馬車に向かっているから、シスタの荷物持つの手伝ってあげて」
「承知しました」
ニーファはもう私が自分で荷物を持つことに何も言わなくなった。もう慣れたのだろう。
「さてと、我が家の馬車はどこにいる」
帰る日は皆同じせいで、馬車が密集しすぎてよく分からない。
「ヴィリアン様、お一人ですか?」
「リシア。大丈夫? ちゃんと部屋片付けられた?」
「大丈夫ですよ。頑張って少ししか散らかしませんでしたし」
リシアの少しは怖いな。
「それにしても重そうだね」
私みたいに前の日に家から荷物をある程度回収してくれる使用人もいないから、全部一人で持っている。流石に荷車は借りているようだけど。
「大丈夫ですよ。階段は少し大変でしたが」
「荷物、馬車に詰め込めそう?」
そもそも平民って馬車どうしているのだろうか?
「大丈夫です。来れたのですから、帰りも平気です」
「……手伝うよ。シスタもまだ来てないしね。馬車はどれ?」
「そんな! 悪いです」
「いいよ。我が家の馬車を探すついでもあるし」
少々無理を言ってリシアに馬車まで案内させた。
馬車は学園の物で、その中でも私達に用意する物より遥かに劣化している。よくこんなので事故を起こさないな。
「よし、積み終わった」
「すみません、ありがとうございます」
「いいよ、良い運動になったし」
それにしても、ここの馬車寒いな。我が家みたいにちゃんとドアとかついておらず、布で覆われているだけなのが原因だろう。ここにずっといたら風邪引くよ。リシアも平民だし、私ほど良い防寒着なんて持っていない。薄いコート一枚羽織ってるだけだ。そんな洋装では寒さを凌げるはずもなく、手は悴んでおり、多少の震えもある。
さてと、なんかあったかな。
「あ、あった。リシア、これあげる。いらないやつ。売れるかなと思って一応持っていたやつだから、遠慮しないで」
私はリシアにマフラーと手袋を渡した。どちらも私に作った物だが、訳あって身につけられなくなったものだ。マフラーは首を絞められる危険性があり、ニーファに止められてお蔵入り。手袋は厚く作りすぎて剣や杖を扱う時に支障が出てしまい、一度身につけただけ。
「ということはヴィリアン様のお手製ですか?」
「うん」
リシアは少し、いや、かなり嬉しそうにしている。
「いいのですか? 売るのですよね?」
「別にいいよ。売っても端金だし。そもそもお金には困ってないしね」
公爵家がお金に困ったらこの国終わりだし。
「そうですか。ありがとうございます、大切にします」
「うん。売られていたらショック受けるから」
「売りませんよ!」
「冗談だよ。それじゃあ、私は行くね。リシア、またね」
「はい。ヴィリアン様、学園では仲良くしていただきありがとうございます」
「こちらこそ。これからもよろしくね」
「よろしくお願いします」




