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最初の最終日

 色々とあったが、ようやく明日から長期休み。

王子はあれ以降良い方向に変わっていった。なんて、言えれば良かったのだが……。


「……おはよう」

「おはようございます」

「ああ」


たしかに挨拶を返せとしか言わなかったよ! でもさ、ああ。とは思わないでしょ! おはようで良いでしょ! 何こいつ、やっぱり感覚ズレてるわ! まあ、一応シスタのことは気にかけてくれているから今は何も言わないでおくけど。


「お三方とも、おはようございます。ヴィリアン様と王子様は平気だったのですね」

「何が?」

「明日から長期休みになりますので、ネイト様とアドラ様はたくさんの生徒に囲まれていましたので。お二方とも、女性だけでなく男性にも囲まれていましたよ」


だから教室人少ないのか。

それにしても、ネイトが男にもか。あいつ何気にちゃんと私の言いつけ守って男子に稽古つけていたし、その影響かな?


「まあ、あの二人はちゃんと交流の幅を広げていたからね」

「ヴィリアン様のことを探している方々もいらっしゃいましたよ。ヴィリアン様のことをよく師匠や大将と呼んでいらっしゃる方々です。ヴィリアン様のことを見つけたら、挨拶だけでもさせてほしいことを伝えるように仰られていました」

「ええ〜」

「お兄様は愛されていらっしゃいますね」

「シスタ様にも挨拶させてほしいとのことですよ」

「え、いいのかな? 私、妹ってだけなのに」


私の教育もあって、シスタへの敬意はたしかなものだから当然だろうね。


「それにしても、王子に別れの挨拶をしたいという物好きはいないようだね」

「僕は王家の人間だ。君らのように慣れ親しまれては迷惑極まりない」 

「すみません、私達も迷惑でしたか?」


シスタの心配そうな問いかけに、王子はため息をついた。シスタにため息とはふざけるな、今すぐ吐いた息を戻せ。


「迷惑な人間に構うほど、僕も暇ではない」


シスタはその返答にほっとしていた。


「ありがとうございます」

「シスタ、こんな奴にお礼しなくて良いんだよ。むしろ私達がこんな性格歪んだやつを相手してあげているのだから」

「またお兄様はそんなことを言って。王子様に失礼ですよ」

「そうだ、君は少し立場というものを弁えたまえ」


言い返したいのに、シスタの発言に続くという最悪な手法を取られて詰んでしまった。


「リシア、どうすれば良いと思う?」

「そのままで良いと思いますよ。王子様も、ヴィリアン様に畏まられてしまうと、それはそれで困ってしまうと思いますので」

「君はロジャーを無条件に庇いすぎだ。妹のように、少しは彼を正すようにするべきだ」

「何が正すだ。少なくとも王子より私の振る舞いの方が人として正しい」

「君は良い顔をしようとしているのだから当然だろう。僕は王子として振舞っている。ならば、貴族としてはどちらが正しいかは明白だろう」


本当に嫌な奴だな、こいつは。


「はぁ〜疲れた〜。いや〜人気者ってのは困るなー!」


 ネイト達がようやく解放されたようだ。永遠に捕まっておけば良いのに。


「女の子に囲まれて楽しそうにしていのは誰ですか」

「女はともかく野郎もいたからな。女も女で正直な。俺ああいうガツガツして気の強い女好きじゃないんだよ」

「どうして僕はともかくこんな人の周りに人が集まってくるの」


この世界のシステムという名の闇だよ。


「そりゃ俺は容姿、強さ、地位、そして性格、全てが揃っているからな!」


お前本当に鏡見てから言え。金持ちなんだから鏡くらいいくらでも買えるだろ。


「笑わせてくれるな」


王子の言う通り。


「誰にも声をかけられていない王子には言われたくないな」

「僕は王子だ、そう簡単に繋がりを持たれては困る」

「僻みだな」

「ふん、君は縛るものが無くて良いな」

「なんだと!」

「まあまあまあ」


 最近、王子とネイトの間にアドラが入るというのが定式化してきている。本当にアドラってこういう時頼りになるよ。


「王子様だけでなく、ネイトさんより優れているボスですら声をかけられていないのだから、そう興奮しないで」


おい、私を巻き込むな。


「あ? ヴィルのどこが俺より優れているんだ?」

「体格以外全部」

「ふざけるな! 強さと地位はまあ認めるが、顔と性格は俺のが良いだろう!」

「いやいやいや、顔は見ての通り。性格もまあ、良いとは言えないけれど、争いごとを起こさない分ボスの方が優れているよ」


何が良いとは言えないだ。君らダメンズと比べれば遥かに良い性格の持ち主だろ。


「納得いかねえ! 男ならこの中で一番顔が良いのは俺だろ!」


あ、性格は諦めたのか。……うん?


「それは僕よりも顔が良いと言っているのか?」

「そうだ!」

「君は目すら馬鹿になったのか? この中で一番優れた容姿を持つのは間違いなく僕だろう」

「待って、僕も入れられたらボスの味方していられないよ。たしかに、僕は身長が低いから容姿だとあまり戦えないけど、顔の良さなら絶対に負けないよ」


なんだこの自意識過剰集団は。本当にこいつらは鏡を見たほうが良い。


「本当はほっとくつもりだったけど、あまりにも君らが間違えた結果を口にするから、思わず参戦したよ。どう考えても一番顔が良いのは私」

「あ、お兄様まで」

「楽しそうですね」


女子は女子で二人楽しそうに見守っている。いや、私も女子だけどね!

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