学生手帳なんて普通読まない
お昼の時間も終わり、午後の実習の時間となる。
「えー、今日は予定を早めて魔法実技の試験結果を発表しま〜す! 一名ほど魔法を使うのが危ない生徒がいるので。他の先生のクラスはおそらくまだ発表されていないので、あまり騒ぎすぎないようにお願いします。私の一存で皆さんの魔法実技の成績が左右されるということをお忘れずに〜」
あの人本当に教師向いてないわ。生徒脅してるよ。
「あの教師よくクビにされないな」
おそらく初めて意見が合ったな、ネイト。
「あの人実力だけは最高峰だから。実力だけは」
「あとバックにボスの家がついているからね〜」
「教師がどう振る舞おうと、僕には関係のないことだ」
「私はかなり好きですよ。魔法のことでしたら親身に聞いてくれますし、アドバイスも的確なので」
魔法のことならね。
「ソルシー様はあのような感じの方ですので勘違いされやすいですが、人の事をよく見ていらっしゃいますし、気にかけてくださるので良い先生だと思いますよ」
いや別にあの人教えるのは問題ないんだよ。対大人数が合わないんだよ。
「はい、えーっと……。読み上げるの面倒ですね、自分で確認してください。順位に文句があったりなど、聞きたいことがあれば聞いてください。あ、ちなみに上位五十人しか張り出していないので、それ以下の人達は個人的に聞きにきてください。以上! 私の授業は終わりです!」
あの人本当に適当だな。
「行きましょうか、お兄様」
「うん」
よしよし、やっぱり私は一位……あれ⁉︎
「異議あり!」
「どうしましたかヴィリー様?」
「え、師匠⁉︎」
今は静かにしとけクソガキ共。
「何で満点じゃないの!」
「ヴィリー様には特別に他の生徒とはまた別の評価基準を追加しましたので。振りがまだまだ大きいですよ〜。振りが大きいと発動にも遅れが出ますから、実戦のことも考えてその評価です。いつも剣があると思ってちゃダメですよ。魔法だけでおじいちゃんを追い詰められるくらいにはならないと」
「納得いかない!」
「だって、他の人と同じ評価基準じゃ、ヴィリー様楽々満点じゃないですか。追加は誉れだと思って受け入れてください。というかここの学園はそういう制度ありますし。ヴィリー様、学生手帳読んでないでしょ」
私はシスタの方を振り返る。
「はい、ありますよ。実技の授業などですと、稀に満点では収まりきらない結果の生徒がいますので、別の評価項目を担当教師が追加して、満点以内に収めるというものです」
「その通りです。今回ヴィリー様達が行った試験は魔力の抑制ですよね。でも、ヴィリー様は魔法も発現したので、それも評価基準に組み込みました。分かりましたか?」
「……つまり、調子に乗って求められている以上のことをやると、満点を逃すぞという意味でしょ」
「そういうことです。でも、調子に乗ってもらった方が成績と教師からの評判自体は良いですよ」
変な仕組みだな本当に。もう満点で良いじゃん。
「ちなみに、逆もありますよ。今回でいえば魔力の抑制ができなかった人ですね。抑え込み具合ややり方など、そのような点を加味して、できていなかったとしても点数は与えています。ま、最初から諦めた人は採点すらできませんけど」
納得はいかないけど、制度としては分かった。理由もちゃんとあるみたいだし、受け入れるしかないか。
「ちなみに、振りはどれくらい縮めれば満点だったの?」
「え、これくらいです」
ソルシーは杖を出すと、どう見たって動いていない振りで魔法を発現させた。
「できるか!」
「そりゃ追加評価は私基準なんですから、満点取りたければ私と同じレベルになってもらいませんと〜。これでも甘くしたんですよ」
やっぱり碌な制度じゃないなこれ!




