呆れ
リシアの言葉、正解ルートではあるのだが、実はただ攻略対象を味方につければいい訳じゃない。このゲームにはファン数というのがある。分かりやすく言えば味方だ。ご存知の通り、こいつらは性格が悪い。だから、ワーキャー言われてはいるが、実はファンは少なかったりする。特に、こいつらが恋愛をすると一気にファンは減る。ヴィリアラは悪役令嬢だけど、カリスマ性、それに、シスタやリシアを虐げることに賛同する者が多いことから、多くのファンが付いていた。悪役令嬢を断罪する時に、ヴィリアラのファン数より勝っていなければリシアと攻略対象が後ろ指を指されてしまい、バッドエンドとなる。
つまり、私達がシスタを助ける為にやらないといけないことは、各々の味方を増やすことだ。
「道のりは長いな……」
そもそも一学年を終えた時のパーティーが断罪の時。そう考えると、少なくとも一年は必要になるということだ。
てか、そもそもどうやってこいつらのファン数増やしてったっけ。もうストーリーなんて覚えてないよ。
「まあ、あとでノートに纏めよう。そこから色々と考えて……。いや、ここはリシアの力を借りた方が確実なんじゃないか……?」
「お前何さっきからぶつぶつ言ってるんだ?」
「……うん、よし! リシア、ちょ──」
いや、ちょっとではないな、ガッツリだな。
「付き合ってくれない?」
「……え⁉︎ つ、付き合うってその、あれですよね」
「うん。ちょっと話し合いたい事があって」
「そ、そうですよね、ヴィリアン様の事ですもんね、そうですよね……」
「今日の放課後お願いしたいんだけど、都合悪かったりする?」
「いえ、大丈夫です」
「良かった。じゃあわた──」
あ、まずい! 私の部屋シークレットシューズの変えとかヴィリアラ名義の物があるし、何より私物が女性物。うん、やめておこう。
「リシアの部屋でお願いしてもいいかな? できれば人が来ないところで話したいから」
リシアは少々引き攣った、申し訳なさそうな笑顔を浮かべた。
「すみません、私の部屋はちょっと。散らかっていますし、ヴィリアン様をもてなせる物がないので」
仕方ない、女子だもんね、旧知の仲ならともかく、急に来られるのは困るよね。
「別に私は気にしないけど、リシアが嫌なら大丈夫だよ。それじゃあ私の部屋でもいい? ちょっと片付けたいから、少し待たせちゃうけど」
「大丈夫ですよ。ヴィリアン様に手間を掛けさせることになってしまい申し訳ありません」
「リシアが謝る事ないよ。私が誘ったからね」
とりあえず、リシアとの相談はどうにかなりそう。シスタ、話し合った方がいいよね。でも、まだ整理がついていない状態で話してもあれだし、何より気まずい。リシアとの話し合いが終わった後で大丈夫だよね。
「ヴィル、お前下心無いんだよな?」
「は? 何言ってんの?」
「今ボス、リシアを部屋に誘って……」
「いや、何の話?」
「君も男なんだな。妹が怪我をしている間に女性を部屋に連れ込むとは」
……? なんの話? 女性を部屋に連れ込む? うん? …………あー!
「違う! 私はただリシアに相談したい事があるだけ! そんな発想ができるお前らとは違って、下心なんて一切ない!」
「おいおい、そんな断言しちゃ平民が可哀想だろ」
何ニヤニヤしてるんだこいつらは。くそー腹立つ。言ってやりたい、私は女だって言ってやりたい。
「皆さん、あんまりヴィリアン様を揶揄ってはダメですよ」
「リシアも全く興味を示されないのも嫌だよね」
男の下ネタに女を巻き込むなこの馬鹿チビ!
「いえ、私は別に……」
「ほう〜」
「な、何ですか」
「いーや。ヴィル、お前も男だろ? 流石に少しくらい興味あるだろ。今は妹もいねーし正直な気持ちを吐いてもいいんだぜ。ぶっちゃけ、付き合えるなら付き合いたいと思うだろ? お前婚約者いねーし、少しくらい遊んでもいいんだぜ」
本当にこいつはいつもいつも。こういう話題大好きなんだから。
「お前みたいに皆が皆女遊びしていると思うな。私は健全だ。リシアが嫌がる事なんて絶対しないし、シスタやニーファに引かれるようなこともしない」
そもそも女だろうが男だろうが相手を作ったら両親に酷いくらい怒られる。
「律儀だな〜。そんなんじゃいつまで経っても相手なんてできねーぞ」
「できなくて結構。ごめんねリシア、変な会話に巻き込んじゃって。もしあれならあとで殴ってもいいよ。私が許可する」
「大丈夫ですよ。いつものことですし」
そう、いつものことなのだ。本当に男共ときたら。




