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誕生日パーティー

 ついに誕生日パーティーの日がやってきた。

 私は赤色のドレス。シスタは目立ちにくいようにか深緑のドレスを着ている。

 だけど、シスタの可愛さは世界一。そんなドレスごときでシスタの魅力を隠すことなど不可能!

 手入れされている庭の花すらシスタを引き立てるただの飾りにしかなっていない!


「シスタ、可愛いよ! すっごく可愛い! 私なんかよりも断然愛おしいよ! こっち向いて、もっと見せて!」

「お、お姉様、ちょっと恥ずかしいです」

「ヴィリア、今は良いですが、会場に到着なさったら落ち着いてください。淑女としてはしたないです」

「はーい。シスタ、向こうに着いたら私から離れないようにね」

「はい」


 王家の庭園に入った瞬間から周りの貴族はシスタに目を向けている。

 可愛すぎるからとかのような羨望の目ではなく、嫌悪や忌諱の目を。それだけでなく──


「あの気味の悪い子は一体どこの子かしら? どうしてこのようなおめでたい場に」

「隣にいる子は親族かしら。可哀想ね、あんな子が隣にいるなんて。私なら耐えられませんわ」


 などと、コソコソとシスタに対しての悪口も言われている。

 離れたところにいる両親ですら、こちらを伺いながら居心地悪そうにしている。特に母親は。

 そんな嫌な空気が流れていたが、クライン家の登場により、注目の的はシスタから外れた。

 その隙に父親が近づいてきた。


「ヴィリアラ、挨拶は父さん達に任せて、その子を連れて好きにしていなさい。挨拶を返すことは忘れずに、礼儀正しくしているように。もし足が痛んだりしたら、無理せず我が家の使用人の元へ行くように」


 今回ニーファは参加していない。

 万が一実家の人と顔を合わせてしまうと気まずいやらなんやらで、事前に断りを入れていた。

 一体何をされていたのかは想像したくない。


「分かっています。私達を誰だと思っているのですか。五歳といえど、ロジャー家の令嬢です。それくらいの心得はしっかりとあります」


 散々叩き込まれたしね。


「期待しているよ」


 父親達が挨拶回りに行ったのを確認し、私はシスタを連れて料理に向かう。

 パーティーといえど、最初は自分達の家の名を広めるために挨拶回りをするのが鉄則。つまり、料理は後回しとなる。


「シスタは何か食べたいのある?」

「そうですね」


 シスタが目をつけたのはマカロン。カラフルな見た目が気に入ったのだろう。

 そんな可愛いスイーツに目をつけるなんて、本当にシスタは芯から可愛い! 愛おしい! ここがパーティー会場とかじゃなければ食べさせられるのに!


「美味しいですお姉様!」

「シスタが喜んでくれて嬉しいよ。天気も良いからより美味しく感じるのかもね」


 私は太陽に照らされているシスタを見るだけで心が癒されていく。

 最初は外とか正気じゃないと思ってたけど、今のシスタを見ているとそんなのどうでも良い。

 それに、この人数を一つの会場に入れるとなると、どうしてもシスタに声が届いてしまうから、外で良かったよ。

 それにしてもよく食べるね。なんて愛らしいのだろうか。 おばあちゃんとかが孫にいっぱいご飯を食べさせる気持ちがよく分かるよ。だって、こんなに幸せに満ち溢れた気持ちになるんだもの。


「す、すみませんお姉様」


 シスタは食事の手を止めて申し訳なさそうにしている。


「どうしたの?」

「お、お手洗いに……」

「それじゃあ一緒に──」

「初めまして、私──」


 タイミング悪いな。偵察にでもきたのだろうか。

 挨拶は返さないと後が怖いし。でもシスタも割と我慢できなさそう。たぶん視線的にまだまだ続くよね。

 はあ、仕方ない。


「シスタ、使用人に言って付き添ってもらって。ここは私がなんとかするから」

「は、はい。分かりました」


 私がいなくても行けるとは思うものの、ニーファ以外の使用人は信用できないし、心配しかない。

 さっさと終わらせよう。

 でも、ここで公爵なんて名乗ったら、名を売りたい貴族の餌食になる。どうにかして受け流そう。


「初めまして、挨拶ありがとうございます。ですが申し訳ありません、まだ王子様に挨拶が済んでおらず、そちらを優先させたい為、また改めてお伺いしてもよろしいでしょうか?」


 年功序列ならぬ階級序列がある貴族であるからこそできる逃げ技。

 社会でも、社長がすぐそこにいるのに平社員への挨拶を優先する人はいないはず。たぶん。


「あら、それは出過ぎた真似をしてしまい申し訳ございません」

「いえ、こちらこそ申し訳ありません。失礼します」


 王子、というか王家にさっさと挨拶を済ますことができるのは王家に懇意にされている人や地位の高い貴族達。

 つまり、まだしていない私は地位の低い、気味の悪い子と付き合いのある貴族の令嬢とでも思われただろう。

 意外と貴族は周りに聞き耳を立てていたりするから、そんな貴族なんて関わりの価値無しと判断してくれただろう。というかしてくれないと困る。


「さてと、早いとこシスタを探さないと」


 トイレを探しに宮殿内に入ると、我が家の使用人が一人で歩いていた。


「シスタは?」

「既に手洗い場までご案内いたしました」

「そのまま一人にしたの!?」

「左様でございます。奥様、旦那様、ヴィリアラお嬢様に万が一があってはなりませんから」

「シスタのことはどうでもいい訳!?」

「優先順位というものがございますので」


 本当に、この世界の人間ときたら。


「もういい、さっさと持ち場に戻って」

「どちらに行かれるのですか?」

「シスタのところ! ついてこないでよ! 邪魔だから!」

キリが悪いので、本日もう一話投稿する予定です。

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