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ヤンデレ乙女ゲームのモブ令嬢は、最推し王子の誘惑を全力で拒否したい。  作者: 清澄 セイ


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本当に大切な家族と共に。

「マーガレット!」

 次に私の名前を呼んだのは弟のライオネルで、勢いよく飛びついてきた彼の体をどうにか受け止める。昔は私よりずっと小さかったのに、いつの間にかこんなに逞しくなってと、思わず感慨に耽ってしまった。

 ちなみにリリアンナは元気を取り戻し、高笑いしながらどこかへ去っていった。その凜とした後ろ姿が妙に腹立たしく感じて、鳥のフンでも頭に落ちますようにと呪いをかけておいた。

 まぁ、エドガーからなんとなくシャルロに向くよう誘導は出来たし、ここから先は二人が決めること。私の平穏をかき乱さなければ、後はご自由にといったところだ。

「ライオネル、この間は本当にご苦労様」

 広い背中を撫でながら、エドガーから聞いたボヤ騒ぎの件について、改めて彼に謝辞を述べる。あれについては、実はリリアンナではなく彼女の取り巻きが仕組んだことらしい。以前、魔法学の授業中に私に濡れ衣を着せてきた、火魔法が使える女生徒。リリアンナの横暴振りが気に食わず、今度は彼女を嵌めようと画策していたらしい。

 それを発見したのがシャルロで、彼はリリアンナがこれ以上私に対して罪を重ねないよう見張ると共に、動向の怪しい彼女の取り巻きにも目を光らせていたのだとか。意外や意外、観察眼の鋭い男だったというわけだ。これは本当に、有望株かもしれない。

「エドガー様は、何度も貴女を褒めていたわ」

「へへ、そっか。まぁ、マーガレットの役に立てたなら良かった」

 上目遣いに可愛らしく微笑んで、ライオネルはふと目を伏せる。

「エドガー殿下と仲直りしたんだね」

「えっ?」

「呼び方が昔に戻ってる」

 不満げに唇を尖らせてはいるものの、本気で拗ねているようには見えない。私より背が高いくせに、ライオネルはわざと上目遣いにこちらを見つめた。

「嬉しいけど、ちょっと複雑だなぁ」

「だけどライオネルは、私の相手は彼が良いって前に言っていたじゃない」

「本当にそうなったらなったで、寂しい」

 私の可愛い弟は、いくつになっても愛らしい。さらさらの髪を優しく撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めた。

「この先どうなるか分からないけれど、これだけははっきりしているわ。私は何があっても、貴方の味方だって」

「マーガレット……」

「これまでだって、何度もピンチを乗り越えてきたでしょう?こう見えて、私って先見の妙と運だけは持っているんだから」

 得意げに胸を張ると、ライオネルが小さく笑う。私の荒唐無稽な話を一度も疑わず、ずっと信じてくれた。ただの攻略対象キャラの一人ではなく、姉という家族として彼に関われたことを、私は生涯神様に感謝するだろう。

「そういえばあの火事の時も、僕達を助けてくれたのはエドガー様だったね」

「ええ、そうよ」

「マーガレットは、あの人から逃げられない運命なんだ」

 そんな言い方をされると、ライオネルの中にもヤンデレ要素が眠っているのかもしれないと心配になるから、やめてほしい。彼の発動条件はおそらく家族を亡くした辛さと孤独で、それはもう潰したのだから、きっと大丈夫。いや、絶対そうに違いない。

 アンドリッサともリリアンナとも恋愛相手として関わることなく、穏やかな人生を生きてほしいと思う姉心は、ちっともおかしくないはずだ。

「僕も、何があっても絶対に味方になるって違うよ」

「ありがとう、ライオネル」

「大好きだよ、姉さん」

 これまでずっと名前で呼ばれていたせいで、思わず驚いてライオネルの瞳を凝視してしまう。恥ずかしそうに頬を指でかいてみせるその仕草に、思わず首元にがばっと抱きついた。

「ああ、もう!どうしてそんなに可愛いの!」

「ちょ、ちょっと苦しいってば!」

「姉弟のスキンシップはこのくらいでちょうどいいのよ!」

 理不尽な理由を付けて、もっともっとと力を込める。最後には顔から血の気が失せてしまったライオネルを見て、慌てて腕を解いたのだった。

 前世を生きていた頃も、ヒロインとして転生を繰り返していた頃も、家族の温かさなんて知らなかった。それを教えてくれたライオネルや両親は、私の命の恩人。彼らが存在していなければ、私はきっとあの火事の日に死んでいた。家族と共にこの世界で生きていきたいと強く思えたからこそ、今こうして笑っていられる。

「本当に、ありがとう。愛してるわ」

 ぽつりと呟いた私のひとりごとは、必死に空気を取り入れようともがいているライオネルの耳には届いていないようだった。

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