卑怯なアドバイスでごめんなさい。
勘違いだったら相当恥ずかしいけれど、ゲーム以外での恋愛偏差値マイナスくらいの経験値しかない私には、このくらいがちょうどいい。
「彼女を救えるのはこの世界にたった一人、シャルロ・ダンテスその人だけです!」
「そうか……、そうだよな!」
どうやら彼も、私と同じくらいの恋愛レベルらしい。
「くれぐれも正攻法で、正面からぶつかってください!」
「ああ、そうするさ!うじうじ悩んでいるのは、俺らしくないな!」
「そうですそうです!」
「そうだよなそうだよな!」
がっはっはと豪快に笑うシャルロの表情からは、いつの間にか仄暗い陰は綺麗さっぱり消え去っていた。ここまで単純だと彼の将来が心配だと思いつつ、妙などろどろの関係に足を突っ込まずに済んでほっと胸を撫で下ろす。元々は優しい善人だし、出来れば幸せになってほしいと思う気持ちは嘘じゃない。大切な友人だということも。
いつも通りに戻ったシャルロに向き合い、私はぴんと人差し指を上に立てる。
「いいですか、シャルロさん。ノチェスさんに愛を伝えることはもちろんですが、自分がいかに将来有望であるかを伝えることも大切ですよ」
「そうなのか?」
「彼女は、見えない未来に不安を抱いているのです。そこを安心させてあげれば、きっと昔のノチェスさんに戻ってくれるはず。明るくて優しくて、天使のように愛らしいリリアンナ・ノチェスに」
婚活パーティーだって、スペックの提示は大切だ。それだけで人は測れないけれど、人生において何に重きを置くかは人それぞれだ。特に今のリリアンナは、自身が愛人の子であるという劣等感を抱えているみたいだし、まずはそこをクリアにしてあげることが重要なのではないかと思う。
それに、以前話した時の雰囲気ではエドガー本人に惚れているというより、スペックで判断している風だった。王子を超えることは難しくても、そこはシャルロが幼馴染というアドバンテージを上手く使ってなんとかしてくれることを願うばかりだ。
「でもなんでお前が、昔のリリアンナを知っているんだ?」
シャルロにしては珍しく鋭い指摘に、ぎくん!と肩が跳ね上がる。私も大概、嘘や誤魔化しが下手くそなのだ。
「い、いえなんとなく!根は悪い人ではないかなと感じるというか!」
「そうか。お前は心が広いんだな」
それ以上追及されることもなかったので、もうさっさと話を終わらせようとぱん!と手を叩いた。
「頑張ってくださいね!私はお二人を応援していますから!」
「まぁ、なんだ。お前のおかげで、元気出た。少しな!本当少しだけだけどな!」
「それは良かったです」
この期に及んで強がる姿がなんだか可愛らしく思えて、ふふっと笑みが溢れる。そんな私を見るシャルロの瞳も、どこかふっきれたように輝いていた。
「はい、これ」
簡素な包み紙に包まれた、おいしいチョコレート。先日のパーティーで振る舞われたような見た目にも美しいチョコレートは、この国ではまだ難しい。
それを思うと、せっかくの機会を台無しにしたリリアンナに対する怒りが再燃してくるけれど、今はとりあえず落ち着くことにする。
「チョコレート、お好きでしょう?」
「……ああ、大好きだ」
「ふふっ、私もです」
以前までは餌付けだったこの行為が、今は友人のそれに感じられる気がして、嬉しくもあったり。すぐに包みを開いてぱくりと口に放り込み、幸せそうに咀嚼するシャルロの様子を見て、不覚にも少しきゅんとしてしまったのだった。




